日本では140年振りの現象、「限りなく皆既に近い部分月食」に注目
ウェザーニュース / 2021年11月19日 12時45分
19日(金)の夕方から20時前にかけて、日本国内の広い範囲で月の一部が欠けて見える部分月食が起こります。今回は部分月食とはいえ月の直径の98%が隠れるため、「ほぼ月全体が隠れる皆既月食に近い」状態といいます。
今回と同じように、「限りなく皆既に近い部分月食」が日本全国で見られたのは、140年前(1881年12月6日)までさかのぼります。
今回の部分月食の注目点や観察のポイントなどについて、天文関連プロダクツを展開する株式会社アストロアーツの大熊正美さん(代表取締役社長)に解説して頂きました。
今回は月の98%が欠ける
月食とはどのような現象なのでしょうか。
「太陽に照らされた地球の影(本影)が月の表面に落ちて、月の軌道が影の部分を通過する間、隠れてしまう現象です。
月食は太陽-地球-月が一直線に並ぶ満月の際に起き、部分月食は1年間に2~5回、ほとんどの年は3回以下のタイミングでしか起こりません。月が欠けて見える比率を『食分』といいますが、11月19日の部分月食は『0.98』、つまり全体の98%にあたる極めて皆既月食に近い状態です。
皆既月食は21世紀の100年間で85回起こります。日本での直近は今年の5月26日、“スーパームーンの皆既月食”でした。また、本影の外側には半影と呼ばれる一回り大きな薄い影が広がっていて、その中を月が通過する状態を半影食(はんえいしょく)といいます。2020年は半影食しか起こらなかった年でした」(大熊さん)
赤みを帯びた、わずかに一部だけが白い満月
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今回の部分月食では、どのような様子の月が観察できるのでしょうか?
「11月19日の部分月食は16時19分に月が地球の本影に入って欠け始めますので、福島・山形両県より南側の地域では、東の地平線から昇ってきたときの満月は、『月出帯食(げっしゅつたいしょく)』と呼ばれるすでに欠けた状態になっています。
全国で観察が可能ですが、北海道などでも月の出の直後なので、欠け始めから終わりまでのすべてを見ることは難しいと思います。
月の位置が高くなっていくにつれ、欠けた部分の割合も徐々に大きくなっていきます。
食の始まりからおよそ1時間45分後、18時2〜3分に欠けた割合が最も大きくなる『食の最大』を迎え、このとき98%という満月のほぼ全体が本影に隠れた状態になります。
皆既月食と同じように全体的に赤みを帯びながら、わずかな一部分だけが白く光る満月が見られるでしょう。部分月食が終わるのは『食の最大』からさらに約1時間45分後の19時47分です」(大熊さん)
なぜ影に隠れる月は真っ暗にならず、赤く見えるのでしょうか?
「太陽光が地球の大気中を通過する際に屈折してわずかながらに月を照らすためです。
光の成分のうち、波長の短い青い光は大気に散乱させられるため、ほとんど月まで届きません。一方、赤い光は散乱されにくいので、月まで届いて月面を照らします。これが、月食のときに月が真っ暗でなくほんのり赤みを帯びて見える理由です。
月食では大気中の塵(ちり)や水蒸気の量によって、月面の赤みが濃く見えたり濃い茶色に見えたりもします。場合によっては明るいオレンジ色に見えることもあります」(大熊さん)
見逃さないポイントは東の空の見通し具合
観察する際のポイントも教えてもらいました。
「今回の部分月食の継続時間は、208.4分(約3時間28秒)にわたり、皆既食が起こらない本影食としては1901~2200年で最長という特徴があります。
月食は月が見える場所であれば全国どこでも、日本以外でも同じタイミングで始まり、終わります。日食のように見る場所によって時刻が変わることはありません。ただし、観察時刻が同じでも、月が見える方位や高度は場所によって異なります。
国内では今回、月の位置が低く『食の最大』時でも高度は約15度、部分月食終了時点でも30~35度程度です。ビルなどに視界がさえぎられる可能性も高いので、東側の空の見通し具合や建物の位置関係などは事前によく確認しておいてください。
月食時に限らず、低い位置の月は大気の影響で赤っぽく見えます。また、薄明かりが残るなど夜空の明るさによっても月の色は刻々変化して見えます。月食全体を通じて満月の色がどのように変化していくのかに、ぜひ注目してみてください」(大熊さん)
月だけでなく、その他にも注目の星があるといいます。
「11月19日の月はおうし座にあって、プレアデス星団(すばる)と並び、赤い一等星のアルデバランも近くにあります。月が欠け、夕闇が深くなるにつれてよく見えてくるようになる星々との“共演”も楽しみましょう。
もし双眼鏡をお持ちなら、ぜひ双眼鏡をむけてみてください。月の色や模様のようすやプレアデス星団の星々の輝きを、肉眼で見る以上に楽しめます。
なお、観察時には周囲の車の行き来や足元の状態なども確かめ、子どもだけの観察や少人数で暗い場所に滞在したり無断で私有地に立ち入ったりもしないよう、心がけてください」(大熊さん)
継続時間が“この300年間で最長レベル”という、ほぼ皆既月食の部分月食。11月19日の夕方から宵にかけては、新型コロナウイルス感染症予防のソーシャルディスタンスにも配慮しつつ、赤い月と合わせて秋の星々の観察も楽しみましょう。
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