寒くなるとトイレが近くなる? 冬に弱まる腎臓にオススメの食材と生活習慣
ウェザーニュース / 2023年11月26日 5時10分
二十四節気の小雪(しょうせつ)を過ぎ、ぐっと冷え込む日が多くなってきました。寒い時期にはトイレが近くなるという悩みがあります。実はこの悩みには、冬の臓器である「腎(じん)」が深く関わっているといいます。
『おうち薬膳養生12ヶ月』(PHP研究所)の著者で源保堂鍼灸院(東京都渋谷区)の瀬戸佳子先生(国際中医薬膳師)に、寒さとの関わりや対策について教えていただきましょう。
寒いとトイレが近くなる!?
寒くなるとトイレの回数が増えてしまうのは当たり前のことなのでしょうか。
「寒い時期は、ある程度トイレが近くなるのは自然なことです。暖かい時期と比べ汗で発散される水分が減り、また体温が奪われないように末梢血管が収縮することで、体の中心の血液量が増え、腎臓で作られる尿の量が増えるからです。
ただ、朝起きてから就寝までの排尿回数が8回以上など、トイレに行く機会が多いと感じるようなら『頻尿(ひんにょう)』かもしれません。夜中に何度もトイレで目が覚めるケースもありますね。
東洋医学では、頻尿の原因の多くは冷えと腎の弱りにあると考えます。対策として腎の働きを労る養生をします」(瀬戸先生)
腎に良くない疲労と冷え
腎の弱りとは、どのような状態なのでしょうか。
「東洋医学の腎とは、腎臓だけでなく膀胱や生殖器なども含みます。腎はエネルギーのもとともいえる臓器で、成長や生殖、ホルモンバランス、老化に関係し、骨や脳、髪、耳、足腰などに影響が現れます。
腎の弱りは生命力が衰えて老化するイメージがわかりやすく、体力低下や抜け毛、白髪、足腰の弱り、骨粗鬆症、耳鳴り、物忘れなどの症状として現れます。頻尿も腎の弱りからくる不調の1つです。特に夜間尿は腎の疲れから起きることが多いです」(瀬戸先生)
腎が弱ってしまうのは、どのような時なのでしょうか
「腎は、過労や睡眠不足、激しい運動などにより疲労します。頭の使い過ぎや精神的ストレスを抱えながら仕事するのもよくありません。
もう1つ悪影響なのが体を冷やすことです。腎は寒さに弱く、体が冷えることで腎も冷え、弱ってしまうのです。
東洋医学で腎は冬の臓器とされています。晩秋から冬に起きやすい不調は、腎が弱っていることから起きるものが多いです。頻尿対策で腎をケアすることは、冬の養生にもなります」(瀬戸先生)
腎を労わる食材と生活習慣
腎の働きを守るための食養生を教えていただきましょう。
「腎を補う食材を積極的に食事に取り入れましょう。腎を補う食材は、山芋、豚肉、くるみ、栗、ぎんなん、カシューナッツ、ブロッコリーのほか、黒い食材の黒ごまや黒米、黒豆、黒きくらげ、黒砂糖、海産物の牡蠣やえび、うなぎ、はまち、かつおなどです。
特にぎんなんは、『縮尿(しゅくにょう)』と言って、頻尿や夜間尿によいとされる食材です。長ねぎやしそ、にら、鮪、適度な香辛料などの体を温める食材もおすすめです。
逆に、体を冷やす生ものや冷たいもの、甘いもの、夏野菜などを避けます。ビールも飲んだ直後は温まる感覚がありますが、体を冷やしてしまいます。ほかに、コーヒーや緑茶など利尿作用のある飲み物を飲み過ぎていないか、生活を見直してみるのも効果があります」(瀬戸先生)
生活のなかで心がけたいこともあります。
「秋冬でも、寒さから体をしっかり守りましょう。寒いと血管が収縮して血流が悪くなるように、腎を弱らせ頻尿や冷え性、こりなどにつながります。体が冷えないように、防寒具や暖房を適切に使用しましょう。特に、お腹周りや腰、下半身を冷やさないようにします。タイツやカイロなど活用するのもいいでしょう。
また、疲労もよくないので、働き過ぎや睡眠不足などは避けましょう。年末にかけて忙しくなるかと思いますが、自分の体と相談することが大切です」(瀬戸先生)
瀬戸先生は、今の時期の過ごし方が冬の健康にもつながると言います。
「本来、11月は寒さに対応できる体づくりをする期間に当たります。今年は季節の進みが遅かったのに急に寒くなったので、冬の準備ができていない人も多いでしょう。
12月には本格的に冬の気候となります。頻尿をはじめとする不調も出やすくなるので、腎を充実させることが大切なのです」(瀬戸先生)
これからますます寒さは厳しくなり、年末にかけて忙しさも増してきます。体のことをおざなりにしないよう気をつけて過ごしましょう。
※ぎんなんは食べ過ぎてもよくないので、成人で1日6〜7粒程度までにしましょう。
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