温暖化により世界中で熱帯夜が急増 快眠を促す3つの方法
ウェザーニュース / 2024年9月11日 5時10分
9月に入っても昼間の最高気温が35℃以上の猛暑日と、夜間でも25℃を下回らない熱帯夜が続いています。
“寝苦しい夜が増えた”と実感している人も多いかと思いますが、このほどアメリカの気候研究機関がその科学的な裏付けとして「地球温暖化の影響で熱帯夜が世界各地で急増している」との報告を発表しました。
まず、報告を基に熱帯夜が急増している実態についてみてみましょう。
温暖化で熱帯夜の日数が世界的に急増
地球温暖化による熱帯夜の急増を報告したのは、アメリカの気候研究機関「クライメート・セントラル(Climate Central)」です。
クライメート・セントラルは、2023年11月に「2022年11月~23年10月が観測史上最も暑い1年。地球が過去12万5000年間で経験した最も高い気温だった」との報告を発表したことでも、注目を集めています。
クライメート・セントラルが今回行った分析では、地球を約30km四方の網目状に区切り、それぞれの地点で2014~23年の実際の気温と、「温暖化が起きなかった場合の仮想気温」を比較。それを基に、「温暖化によって熱帯夜が年間で何日間増えたか」についての算出を行いました。
その結果、熱帯夜が年間14日(2週間)以上増えた地域に住む人の数は約24億人、30日以上の区域では約10億人とされました。増加日数の最多はインドのグワハティ(Guwahati)で89.5日、インドネシアのチラチャプ(Cilacap)の85.4日が続きました。
「約30km四方の網目」には、もちろん日本の各都市も含まれています。都市別で最も熱帯夜が増えたとされたのは大阪の35.8日で、浜松が33.1日、神戸が31.9日などと続き、東京が26.7日、京都が17.4日となりました。
日本全体での増加日数は7.7日とされ、これまでほとんど熱帯夜が記録されていなかった札幌市でも0.2日、仙台市でも4.1日の増加がみられたと発表しています。
熱帯夜日数の増加が特に近年は顕著
日本の気象庁も、「大都市における熱帯夜数の長期変化傾向」を発表しています。
観測を開始した1879年以降、熱帯夜がなかった札幌で、初めて観測されたのは1981年に1日、1985年に1日のみでした。
ところが、温暖化による気候変動が懸念されるようになった21世紀に入ると、2019年に3日、21年に4日、23年には過去最多となる7日の熱帯夜が、観測されるようになりました。
仙台でも熱帯夜の観測は1940年代に1日、60年代に計2日、70年代に1日などと極めて少なかったのですが、2010年に初めて2ケタの10日を観測。以降16年を除いて毎年熱帯夜が観測されるようになり、23年にはついに36日を観測するようになったのです。
東京でも23年には57日と、過去最多を更新しました。
気象庁は、「熱帯夜、真夏日、猛暑日の年間日数は、札幌を除いて増加している」としたうえで、「各都市における長期変化傾向には、地球温暖化に加えて、都市化による気温上昇の影響が現れていると考えられる」との認識を示しています。
世界的な調査を行ったクライメート・セントラルも、「温暖化の影響は昼より夜が激しく、特にビル群が風を遮るヒートアイランド現象の起きやすい都市部で顕著に現れている」としています。
熱帯夜でも快眠を促す3つの方法
暑く寝苦しい熱帯夜が続くと身体に負担がかかり、眠りが妨げられることは心身に悪影響を及ぼします。そこで、「熱帯夜でも眠れる3つの方法」を、睡眠コンサルタントの友野なお先生に教えて頂きました。
(1)エアコンはつけたままで
就寝中のエアコンは体に悪いと思われがちで、タイマーを使用している方も多いと思います。しかし、熱帯夜が続く近年は熱中症へのリスクが高くなっているため、エアコンの積極的な使用は必須です。温度は27℃、風量は弱や微など弱めに設定し、風を直接体に当たらないようにしてください。
就寝の30分程度前からエアコンのスイッチを入れておくと、あらかじめ快適な空間がつくられて、さらに眠りやすくなるのでおすすめです。
(2)部屋全体を快適な温度に
熱い空気は上、冷たい空気は下に溜まりやすい傾向があります。空気を循環させて寝室全体を快適な温度に保つため、エアコンと併せて扇風機やサーキュレーターを活用するのがおすすめです。
あくまで空気をかき混ぜることがポイントですから、扇風機などは体でなく、エアコンの送風口や天井などに向けてください。
(3)背中のムレを防ぐ
布団の中の湿度は、夏には背中で80%以上に達することがあるといわれ、これが原因で眠れなくなる人も多いようです。大きな寝返りがない状態が20~30分以上続くことで、深い眠りに達するのですが、背中がムレていると寝返りが増え、睡眠が妨げられてしまうことがあります。
ムレを防ぐには、熱伝導に優れて吸放湿性に富む麻のシーツや、通気性のある立体メッシュ、吸湿性のあるいぐさのシーツなどがおすすめです。
抱きまくらも背中が空いて、わきや膝の間にも隙間ができるので体感が涼しく、安心感も得られるので一石二鳥です。
「熟睡は、健康の基本です。自分の睡眠の質を確かめて問題があれば3つの方法で解決し、熱帯夜が続く寝苦しい夏を乗り切ってください」(友野先生)
かつて北日本では「お盆を過ぎると夜は急に涼しくなり、布団を掛けないで寝ると風邪をひく」と言われていました。ところが気象庁は3ヵ月予報(8~10月)で、北海道・東北を含む全国的に「暖かい空気に覆われやすいため、向こう3ヵ月の気温は高いでしょう」としています。
まだまだ続きそうな温暖化による熱帯夜の増加に対し、「3つの方法」を実践して、快適な眠りを確保していきましょう。
温暖化の影響は私たちの生活にも大きな変化をもたらす可能性があるものです。ウェザーニュースでは、気象情報会社の立場から地球温暖化対策に取り組むとともに、さまざまな情報をわかりやすく解説し、みなさんと一緒に地球の未来を考えていきます。まずは気候変動について知るところから、一緒に取り組んでいきましょう。
参考資料
CLIMATE CENTRAL「Analysis: Climate change is increasing dangerous nighttime temperatures across the globe」、気象庁「大都市における熱帯夜日数の長期変化傾向」
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