いよいよリーガ開幕が近づいてきた…/原ゆみこのマドリッド
超ワールドサッカー / 2024年8月12日 22時0分
「これでもう、サッカーに集中できるわね」そんな風に私が呟いていたのは日曜日、7月末に始まったパリ五輪の閉会式を流し見していた時のことでした。いやあ、奇しくもこの大会中、マドリッドは連日38、39℃に達する猛暑となり、お昼過ぎの外出が命がけの冒険に。よって、冷房をガンガンかけて、自宅に引きこもっているしかなかったんですが、そんな時、助けになったのはオリンピックの独占放映権を持つTVE(スペイン国営放送)。
オープンチャンネル3局、そしてネットアプリを駆使して、常に何がしかの中継をしていたおかげで、いえまあ、スペイン人選手の出場する競技に偏りがちという欠点はあったんですけどね。サッカーの試合がない日でも、早くはテニスから、体操、自転車ロードレース、飛び込み、アーティスティックスイミング、陸上、新体操、ブレイキンなどなど、自分が普段は目にすることのないスポーツを見て、時間を潰すことができたのは有難かったかと。
そのオリンピックが終わるのに合わせるように、今週の予報ではとうとう気温が下がりだし、ええ、30℃代前半なら、私も外を歩けますからね。一時はこの引きこもり状態が8月いっぱい続くのかと、絶望的になっていたメンタルもやや改善。おまけにスペイン男子サッカー代表チームが、32年ぶりとなるオリンピック金メダルを持ち帰ったことを報告できるとなれば…。
そう、男女両方の代表が出場したサッカーでのスペイン最後の試合があったのは金曜のことで、いえ、準決勝で守備が崩壊。ブラジルに4-2で負け、その日の前の時間帯にリヨンでドイツとの3位決定戦をプレーした女子チームの方は、中2日では立て直しができなかったんですけどね。0-0だった後半17分、ブラジル戦でも序盤にゴールキックミスで先制点を献上したGKカタ・コル(バルサ)がハイボールをクリアしようとして、グウィン(バイエルン)を倒し、PKを与えてしまうんですから、困ったもんじゃないですか。
PKをグウィン自身が決めて、ドイツにリードされてしまった後、一応、カタ・コルもシュラー(バイレルン)の1対1シュートをparadon(パラドン/スーパーセーブ)して、被害を最小限には留めてくれたんですけどね。まさか後半ロスタイム7分、ルシア・ガルシア(モントレイ)がミンゲ(ボルフスブルク)に潰され、土壇場にPKを勝ち取りながら、2度のバロンドール受賞女子、アレクシア・プテジャス(バルサ)がGKバーガー(チェルシー)に弾かれてしまうとは!結局、延長戦にも入れず、そのまま0-1で負けた彼女たちは銅メダルのお土産なしで、すごすご帰国。W杯に続き、ネーションズリーグ・ファイナルフォーに優勝した昨年の勢いを生かせず、モンセ・トメ監督以下、すでに出場権を手にしているユーロ2025に向けて、チームの再生を図ることに。
それとは真逆の目が出たのが男子で、いえ、パリのパルク・デ・プランスで行われた決勝は、スタンドがモロッコ人ファン一色となったマルセイユでの準決勝同様、ホスト国フランスのサポーターで満員という逆境下での試合だったんですけどね。更に開始11分にはアレックス・バエナ(ビジャレアル)のクリアしたボールがミロ(シュツットガルト)に渡り、そのシュートで先制されてしまうというハンデを負ったんですが、大丈夫。17分、今度はバエナが同じユーロ梯子組のフェルミン(バルサ)に正しくパスを送り、この大会で当たりまくっている彼が同点ゴールを決めてくれたから、助かったの何のって。
それどころか、「Estábamos muy preparados para la presión, ya la vivimos el otro día/エスタバモス・ムイ・プレパラードース・パラ・ラ・プレシオン、ジャー・ラ・ビビモス・エル・オトロ・ディア(ボクらはプレッシャーに対する準備がよくできていた。もう他の日にも経験したからね)」というフェルミンの勢いは止まらず、25分にもアベル・ルイス(ブラガからジローナに移籍)のシュートがGKレスト(トゥールーズ)に弾かれて、ボールがこぼれたところに脱兎のごとく駆けつけ、勝ち越しゴールをゲット。おまけにその3分後にはバエナが見事な直接FKを決めて、とうとう1-3になったとなれば、決勝の応援に来たA代表のデ・ラ・フエンテ監督も2人をユーロでほとんど使わず、オリンピックに備えて温存した自身の決断が正しかったと確信できたかと。
ただ、後半はホスト国の意地もあったか、趨勢が変わり、コネ(メンヘングラッドバッハ)のシュートがゴールバーに当たったり、GKアルナウ・テナス(PSG)の好セーブで救われたりと、ヒヤリとさせられるシーンがあったスペインだったんですけどね。サンティ・デニア監督は予定通り、まずは27分にプビル(アルメリア)とフェルミンをファンル(セビージャ)とベルナベ(パルマ)に交代。33分にオリーズ(クリスタル・パレスからバイエルンに移籍)のFKから、アクリウシュ(モナコ)にゴールを決められ、1点差に迫られた後の38分にもバエナとアベル・ルイスを引っ込め、スリエンテス(レアル・ソシエダ)とカメージョ(ラージョ)に代えたんですが…まさかロスタイムまであと僅かと迫ってから、振り返りVAR(ビデオ審判)モニターチェックで、CKの時にトゥリエンテスがカリムエンド(レンヌ)を押し倒していたことが発覚してしまうとは!
結果、フランスにPKが与えられ、マテテ(クリスタル・パレス)が決めて、3-3の同点にされてしまった際には、その試合には1人もレアル・マドリー勢がいなかったにも関わらず、私も根性のremontada(レモンターダ/逆転劇)パターンが頭をよぎったんですけどね。だってえ、トゥリエンテスのリベンジシュートもゴールバーに阻まれ、延長戦入りしたスペインにはもう、フェルミンもバエナもいないんですよ。加えて、アイマール・オロス(オサスナ)もパチェコ(レアル・ソシエダ)に代わっており、CBが3人いる守備固め体制に入っていたため、唯一の希望はPK戦かとまで覚悟したところ…。
いやもう、延長戦前半8分、その日、「Tenía un tema médico, no puedo decir nada más/テニア・ウン・テーマ・メディコ、ノー・プエド・デシール・マス(医学的な問題があった。それ以上は言えない)」(サンティ・デミア監督)という謎の理由で、サム(アトレティコ、昨季はアラベスにレンタル)に代わり、ベンチに入っていたリザーブメンバーのカメージョがいきなり爆発しちゃったんですよ。そう、彼はラージョFW陣全員が陥ったゴール日照りの呪いのせいで、昨季はたったの3得点でしたからね。その憂さを晴らすかのように、ベルナベが送ったスルーパスに反応して、飛び出して来たGKレストの頭を越えるvaselina(バセリーナ/ループシュート)を決めてしまったから、ビックリしたの何のって。
おまけに後半終盤にも彼は、再びリードを奪われて、猪突猛進して来たフランスの背後を取り、GKアルナウ・テナスのゴールスローを追って、敵ゴールに爆走。またしてもループシュートで5点目を挙げてしまったとなれば、誰もスペインの勝利に文句はつけられませんって(最終結果3-5)。いやあ、想定外のヒーローとなったカメージョは、「自分はリザーブメンバーで行ったけど、el míster me lo dijo que iba a ser yo el goleador en la final/エル・ミステル・メ・ロ・ディホ・ケ・イバ・ア・セル・ジョ・エル・ゴレアドール・エン・ラ・フィナル(監督はボクが決勝でゴールを挙げると言ってくれた)」と告白していたんですけどね。
おかげでアトレティコがギャラガー獲得のために払う4000万ユーロ(約65億円)を賄うため、チェルシー行きが内定しているサムも負傷のリスクを犯さずに済みましたし、翌日には最後のプレシーズンマッチでウォルバーハンプトンにイシにゴールで0-1と勝利。6試合目でとうとう白星を掴んだとはいえ、やっぱりFW陣はエヌテカが1点取っただけという、ラージョのイニゴ・ペレス監督もカメージョのチーム合流を揉み手しながら、待っているはずかと。セルロート(ビジャレアルから移籍)に続き、日曜にはフリアン・アルバレス(マンチェスター・シティ)が入団手続きのためにマドリッド入りしたアトレティコにはもう、カンテラーノ(下部組織出身の選手)のカメージョが戻る余地はないため、今季は弟分チームのエースとして、彼が輝いてくれることを私も期待しています。
そんなスペイン五輪男子代表は翌日早朝にはもうマドリッドに帰還。土曜の午前中にはラス・ロサス(マドリッド近郊)のサッカー協会本部で祝賀イベントが行われたため、私もまだ涼しい方の時間だったこともあって、見てきたんですが、いやあ。先日、シベレス広場に何万人ものファンを集めて祝った大人の代表のユーロ優勝祝いとの落差には愕然とするばかり。だってえ、会場のルイス・アラゴネスサロンにいたのはマスコミだけで、完全に内輪だけのお祝いだったんですよお。聞けば、祝賀パレードもなく、サルスエラ宮殿のスペイン国王フェリペ6世やモンクロア宮殿のペドロ・サンチェス首相への表敬訪問もなく、41日間の合宿中に友情を培った選手たちはその場で解散なのだとか。
もちろん、「Tengo ganas de volver a casa, que han sido 70 días sin estar en casa/テンゴ・ガナス・デ・ボルベル・ア・カサ、ケ・アン・シドー・セテンタ・ディアス・シン・エスタル・エン・カサ(家に帰りたいね。だってもう、70日間も帰ってないんだから)」というバエナのようなケースもあるため、その方が選手たちのためになったかもしれないんですけどね。ただ、梯子組の2人を除き、残り20人の選手たちはオリンピックに向けた7月1日からの合宿前の6月中にバケーションを取っているため、即各クラブのプレシーズン練習に合流。ええ、クバルシとエリック・ガルシア(昨季はジローナにレンタル)など、日曜にはバルサの練習場で汗を流していたんですが、もしやサムはチェルシー入団のためのメディカルチェックを受けに、そのままロンドンに行った?
その一方でバリオス(アトレティコ)など、マハダオンダ(マドリッド近郊)での練習が水曜までお休みになりましたからね。というのも丁度、その日の夕方、チームは最後のプレシーズンマッチのため、イエーデボリに移動。日曜のユベントス戦では、うーん、ここ最近の補強祭りのせいで、選手たちも気分が上がっていたんでしょうか。ル・ノルマン(レアル・ソシエダから移籍)がデビューし、練習開始が遅かったグリーズマンとデ・パウルも先発入りした前半こそ、0-0だったんですが、4人が代わった後半3分には先制点が入ります。そう、レイニウドからのパスをサムエル・リノがエリア内左奥で折り返し、コレアがスルーした後、移籍先を探しているジョアン・フェリックスが決めたんですが、これも6000万ユーロ(約97億円)のオファーをゲットするためのアピールになる?
更に40分にはアルゼンチン代表で五輪参加してきたシメオネ監督の三男、ジュリアーノがカバルにエリア内で倒されてPKをゲット。コレアが2点目を決めて、見事に2-0と勝利し、プレシーズンマッチ4試合全勝としたんですから、立派じゃないですか。その脇では同日の午前中、練習場のミニスタジアムでサモラ(RFEF1部/実質3部)とアトレティコB(同)が対戦した親善試合で何故か、留守番組になったヒメネス、モリーナ、レマル、ハビ・ガラン、フェアメーレン、カルロス・マルティンス(昨季は2部のミランデスにレンタル)らが出場。相手にしてみれば、いい迷惑だったかもしれませんが、3-0勝利のゴールは全てカンテラーノが挙げているため、ここは大目に見てほしいかと。
まあ、アトレティコはリーガ開幕戦が19日(月)のビジャレアル戦ということもあって、今週は入団プレゼンラッシュになるんじゃないかと思うんですが、先週末はマドリッドの弟分チームたちも次々と最後のプレシーズンマッチをプレー。ええ、金曜土曜とテレア・エレーラ杯(デポルティボ主催の夏の親善大会)に初参加したレガネスは準決勝でオビエドをブラサナツとミゲール・デ・ラ・フエンテのゴールで2-1と破り、決勝でも1部再昇格組の貫禄を見せて、2部に戻ってきたばかりのデポルティボをディエゴ・ガルシアのPKとアビレスの2発で1-3と粉砕しています。おかげで大きなトロフィーももらえたことですし、これなら気分良く、17日(土)の開幕オサスナ戦を迎えられるのでは?
ヘタフェも土曜には6試合目のプレシーズンマッチをザンプトンとスコアレスドローで終えたんですが、まあ、この日も前線コンビをアレニャとウチェのMF2人が務めているようでは、これが最善の結果だったかと。少なくとも先日、リーガ1のサン・テティエンヌには勝てたことを励みに、ボルダラス監督もリーガ開幕の先陣を切る15日(木)のアスレティック戦前にアンヘル・トーレス会長が奇跡を起こして、CFを連れて来てくれるのを祈るばかりでしょうが、何故か、補強候補で聞こえてくるのはDFやサイドアタッカーの名前ばかりなんですよね。
そしてこの夏もポッキリ、アメリカツアーの3試合だけ。それも1勝2敗とあまりいい成績ではなかったものの、先週はずっと、バルデベバス(バラハス空港の近く)の練習場で来週水曜のUEFAスーパーカップに備えて、猛暑の中、トレーニングを続けてきたマドリーはというと。いやあ、実はシカゴのミラン戦でカンテラーノのパラシオスがヒザの靭帯断裂の重傷を負った後、この金曜にもセッション中にエンドリック(パルメイラスから移籍)との接触プレーで変な着地をしたジョアン・ミランデスも同じケガをしてしまってねえ。何せ、こちらはまだリハビリが終わっていないアラバが11月に復帰するまでのベンチ要員として、期待されていた16才のCBでしたからね。
ナチョ(アル・カーディシーヤへ移籍)が抜けた後、その穴埋め補強はしない決断をしたマドリーだけにショックだったと思いますが、それでも昨季、シーズン開幕直前にGKクルトワ、初戦でミリトンが靭帯断裂したのとは雲泥の差。今のところはリュディガーとミリトンで賄えるため、アンチェロッティ監督もアタランタ戦に向けて、まったく心配はしていないはずですが、現在、世間が注目しているのは、ツアーから戻って来たチームに先週から合流したエムバペ(PSGから移籍)がスタメン出場するかどうか。いえ、このスーパーカップは昨季のCL優勝の延長として、決勝に出た選手がプレーするのが妥当とアンチェロッティ監督は言っているんですが、今回はナチョと引退したクロースの席が空いていますからね。
ただクロースはMF、エムバペはFWのため、入れるとすると、ベリンガムの位置を下げるなり、システムを変更するなり、ちょっと工夫が必要なんですが、どうやら最終合流組もバケーション最後の15日間にやるように言われた宿題トレをきっちりコンプリート。アラバ以外、全員が出場可能なのはいいニュースかと。おまけに相手のアタランタはDFスカルビーニに続き、FWスカマッカも負傷。MFコープマイネウスも移籍希望で練習参加を拒否しているとあって、EL決勝でレバークーゼンを破る波乱を起こした昨季より、かなりチーム力が落ちているようですからね。とりあえず、水曜午後9時(日本時間翌午前4時)からのワルシャワでの一戦では、あっさりマドリーが勝つような気がしますが…勝負は蓋を開けてみるまではわかりませんよね。
【マドリッド通信員】 原ゆみこ
南米旅行に行きたくてスペイン語を始めたが、語学留学以来スペインにはまって渡西を繰り返す。遊学4回目ながらサッカーに目覚めたのは2002年のW杯からという新米ファン。ワイン、生ハム、チーズが大好きで近所のタパス・バルの常連。今はスペイン人親父とバルでレアル・マドリーを応援している。
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