伊東純也が半年ぶりにサムライブルーに復帰/六川亨の日本サッカー見聞録
超ワールドサッカー / 2024年8月30日 10時30分
9月5日のW杯アジア最終予選の中国戦と、11日にアウェーで対戦するバーレーン戦に臨む日本代表27名が8月29日に発表された。1月のアジアカップは負傷の影響で満足にプレーできなかった三笘薫と、同じくアジアカップ中に性的暴行疑惑でチームを離脱した伊東純也の復帰はほぼ予想通り。2人とも7月のプレシーズンマッチでは健在ぶりをアピールしていたからだ。
負傷から癒えた三笘と違い、伊東は8月に不起訴が決定。山本昌邦NTD(ナショナルチーム・ダイレクター)は「監督が選んだということと、起訴、不起訴が理由ではない」と言ったものの、JFA(日本サッカー協会)としてはスポンサーの意向も含め「不起訴」になったことが「大義名分」として大きかったのではないだろうか。
山本TD自身「メンバーを決めるのは監督の専権事項」と言ったのだから、その後に「起訴、不起訴が理由ではない」とわざわざ付け加える必要はなかったと思う。「監督が決めました。以上です」で終わらせておけば、“痛くもない腹”を探られる理由もなかっただろう。
そして森保一監督は伊東の復帰について、これまで一貫した姿勢を貫いてきた。それを改めて次のように説明した。
「これまで招集するしないについて、招集できたが招集しなかったのは、彼を守るためと言ってきた。チーム全体で落ち着いて活動できるか疑問に感じていた。今回大きなポイントとしてランスがジャパンツアーで来て、多くのサポーターが温かく見守ってくれる環境にあった。多くのサポーターが環境作りをしてくれた。これからも温かく見守って欲しい」
2月にチームから離脱した伊東を3月のW杯アジア2次予選に招集すれば、サッカーを専門に取材するマスコミ以外にもテレビのワイドショーなど多くのメディアが練習会場に押しかけるだろう。伊東以外の選手も練習に集中できる環境を保てるかどうか疑問である。伊東自身はもちろん、チームを守る意味でも森保監督の決断は正解だった。
アジアカップは不完全燃焼に終わり、その後のW杯予選でも無失点こそ保ったが、攻撃陣に関しては不満の残る出来だった。しかし中国戦とバーレーン戦は、やっと“両翼の齣”が揃った。中国戦は“海外組”がチームに合流して3日間(初日はランニングなど軽めの調整だと正味2日間)の練習だけ(戦術の確認とコンディショニング調整)という“ぶっつけ本番”に近い試合になる。
過去2大会、アジア最終予選の初戦となる9月上旬の試合はUAEとオマーンに敗れて黒星発進だっただけに不安がないわけではない。しかし前回を経験している森保監督だけに、同じ轍を踏まないことを期待したい。
彼ら以外では、高井幸大と望月ヘンリー海輝が初の代表入りを果たした。高井に関しては、最年少で臨んだパリ五輪でも物怖じしない堂々たるプレーでベスト8進出に貢献しただけに、フル代表入りも時間の問題と思っていた。“海外組”のコンディション次第では、意外に早く代表デビューを果たすかもしれない。
望月ヘンリー海輝に関しては、今シーズンのJリーグで最大の発見だと思っていた。リーグ戦序盤は出番に恵まれなかったものの、徐々に出場機会を増やして攻撃の活性化を黒田剛監督から期待された。192センチの長身SBで、長いストライドを生かしたスピードと空中戦の強さはルーキーとは思えないほど。近い将来、代表入りするだろうとは思っていたものの、こんなに早くサムライブルーに選出されるとは想定外だった。
守備はもちろんのこと、劣勢な試合の終盤にはパワープレー要員として前線で起用されることも多いだけに、「闘莉王2世」となる可能性を秘めている。
高井、望月ともサプライズでの選出だったが、それ以上にサプライズだったのは長谷部誠のコーチ就任ではないだろうか。今年4月に現役を引退すると、すでにブンデスリーガの“B+”のライセンスを取得していたためフランクフルトU-21のアシスタントコーチとして指導者の道に入っている。彼の代表としてのキャリアとキャプテンシー、さらにはブンデスリーガでの実績などから、もしもS級ライセンスをブンデスリーガかUEFAで取得すれば、近い将来は日本代表の有力な監督候補になるだろう。
【文・六川亨】
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