<Wコラム>芸能界にも存在する「兵役のがれ」の実態
Wow!Korea / 2016年5月9日 19時38分
仮に深刻な持病を抱えているために兵役免除になったとしても、その人は「意図的に兵役をのがれたのではないか」という疑いを持たれることは少なくない。兵務庁が申告センターを設けたように、国民の誰もが軍隊に行っていない人に対する監視の役割を果たしてしまっている。
その場合、弱者に向けられる目がさらに厳しくならないだろうか。
現実的に身体の問題や家庭環境に関して、兵役免除を受ける人が毎年5%前後生じている。彼らは、「本来なら立派に兵役の義務を果たしたい」と思っていても、現実的にそれができない事情を抱えているために兵役免除になっている。
そういう人たちに対して「意図的な兵役のがれ」という懐疑心を少しでも抱くことがあれば、国民の間で不信感が募るという結果になるのではないか。
確かに意図的な兵役のがれが多いというのも事実だ。富裕層や特権階級の間で息子の兵役免除率が高いし、情実社会とも言える韓国では、様々なコネを使って兵役問題を有利に進めるケースも存在する。
そうだとしても、本人が「立派に兵役を果たしたい」と思っていてもできない事情をくんであげなければならないのではないだろうか。
兵務庁が申告センターを設けて兵役のがれを徹底的に究明する姿勢によって、結果として兵役免除になった人たちが社会的弱者として差別されることがあってはならない。
■人間の尊厳の問題
最近は、徴兵検査で精神鑑定が重要視されている。軍隊の中で自殺や乱射事件などが発生するため、入隊前に精神に問題がある人を排除しようということから、精神判定が強化されているのだ。
仮に徴兵検査で精神的な問題が見つかって兵役免除になった場合、そうした事実が公になることで、当人が精神的苦痛を受けてしまうのは想像にかたくない。
徴兵検査というのは、戦争で働いてくれる屈強な人間を選抜するようなもので、ある意味では人間に優劣をつける側面がある。つまり、徴兵検査自体が社会的弱者を次々と生んでしまうのは否めないし、監視によって兵役逃れを摘発しようという風潮は、かえって社会をぎこちなくさせる。
同時に、芸能界でも兵役に対する取り組みによって、その人の愛国心を測ろうという風潮が強くなっている。
愛国心は、個人個人が自分の信条として心に秘めておくものであるはずなのに、それが芸能界において意思表示を強制される場合もある。
確かに韓国の芸能界では、愛国心がないと見られたら致命傷になるが、だからと言って誰もが人気絶頂のときに軍隊に行きたくないのは当然であり、そのことを非難される必要はない。
なんといっても軍隊は戦争の当事者になる組織であり、敵を滅ぼす手段を教えられる場所である。良心によってそれを「NO」と言いたい人もいるはずだし、「そういう心情を無視してみんな軍隊に入れてしまえ」というのは乱暴な意見に違いない。
兵役というのは日本からまったく窺い知れないが、人間の尊厳の問題を含んでいる。それだけに、社会的弱者を生んでしまうという事実と、そういう人たちに対する配慮を忘れてはならない。
文=康熙奉(カンヒボン)
(ロコレ提供)
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