チャン・ドンゴン&ホ・ジノ監督 「子への愛は万国共通」映画「満ち足りた家族」作品への思い語る
よろず~ニュース / 2025年1月15日 12時0分
映画「満ち足りた家族」ポスターとともに笑顔を見せるチャン・ドンゴン(左)とホ・ジノ監督(撮影:棚橋慶太)
映画「八月のクリスマス」や「危険な関係」で知られる、名匠ホ・ジノ監督(以下、ホ監督)の最新作「満ち足りた家族」が、いよいよ1月17日より公開される。日本公開を記念して、昨年11月20日にジャパンプレミアが開催され、ホ監督と主演のチャン・ドンゴンが来日、日本の映画ファンから熱い声援を受けた。その翌日、2人はよろず~ニュースのインタビューに応じた。
ホ監督とチャン・ドンゴンは、2012年に公開された韓・中合作映画「危険な関係」以来、本作で約12年ぶりのタッグとなった。チャン・ドンゴンは、開口一番「ホ監督は童顔だからか、12年前から印象が全く変わっておらず、自分だけが老けてしまったのかと思った」と冗談めかした。そして「映画の世界も、システムも変化していく中で、ホ監督は最近のシステムにもとても適応されているなと思いました。でも、ホ監督のカラーはちゃんとキープされていて、演出も監督の良さもそのまま。今のやり方に柔軟に対応しながら、進化されていました」と、ホ監督へ尊敬のまなざしを向けた。
一方のホ監督も「久しぶりに会えて、まずはうれしかったです」と笑顔。“俳優・チャン・ドンゴン”については「これまで、さまざまなところで“韓国史上一番のイケメン”など、その容姿に触れられてきて、韓国内外で“そういう(イケメン)人”として知られている俳優でした。『危険な関係』も、非日常的な役も手伝って、演技よりも顔の良さが際立ちました。翻って今作は“チャン・ドンゴンの演技を見る”という、私自身も新鮮な体験をして、その結果、韓国では“チャン・ドンゴン再発見”と評価されたんです。とてもすばらしい演技をしてくれました」と絶賛した。この言葉を受けたチャン・ドンゴンは、少し照れ臭かったのか「今作では、(アクションや暴力的シーンがないから)僕の顔に、久々に血がべったりついていない役だからじゃないですか」と笑わせた。
チャン・ドンゴンは、2018年公開の「王宮の夜鬼」以降、スクリーンから遠ざかっており、「満ち足りた家族」が約5年ぶりの映画出演となった。本作の出演オファーを引き受けようと思った決め手は、どこにあったのだろうか。「シナリオを読んで、(自身が演じた)ジェギュへの理解と共感がありました。それにジェギュは、今まで僕が演じてこなかったタイプのキャラクターだと思ったんです。単純な線で描ける人物ではなく、複合的な心理描写・表現ができる人。そんな人物を、ホ・ジノ監督が演出してくださるのなら、監督から大きなサポートが得られるだろうと、楽しみな気持ちを持って引き受けました」。
そんな「満ち足りた家族」は過去、3回映像化されているため、ホ監督は再び映画化することに「勇気が必要だった」と明かす。「4度目に映像化するということは、それをする理由が必要です。私はこの物語について、韓国社会の問題、教育や階層意識や道徳的なことが盛り込める物語だと思いました。そして私は、普段から人間の二面性に関心を持っていて、この作品でならそれができると判断し、(作品化への)勇気を出すことができました。ソル・ギョングさんには冷徹さが、チャン・ドンゴンさんには善の姿が出せると思いましたし、逆の姿も、きっと魅力的だと思いました」。
物語では、ソル・ギョング演じる兄のジェワンと、チャン・ドンゴン演じる弟のジェギュに“親”としての判断が迫られるシーンが登場する。実生活で子を持つホ監督とチャン・ドンゴンは、劇中の出来事について、どう感じているのかを尋ねてみた。まず、チャン・ドンゴンは「それについては映画の撮影中、俳優同士でたくさん話しをしました。『本当に2人のような立場になったら、どうするか?』と。みんな正解は分かっているし、どうすべきかも分かっている。でも果たして、それを実行に移せるのかと聞かれると、自信がない。それが大半の意見でした。純粋に、子どものためのことを考えて判断したと思った事が、本当に子どものことだけを考えて出した結論なのか、自分の事情や考えは入り込んでいないか…。心の中の基準を、クリアに定めるのは難しいと思いました」と、神妙な表情だ。ホ監督にも同じ質問をぶつけてみたが、「うーん…とても難しい質問ですね」と苦笑い。そして「ジェワンとジェギュの夫婦が、そろって食事をするシーンが3回出てくるんですが、3回目のシーンでは、4人の立場がはっきりしています。私も誰に一番近い立場・意見か、ジェワンとジェギュの考え方を見ながら、子どもの未来のため、幸せのためにどういう選択をしたらよいか、本当によく考えました。きっと皆さんもご自身の立場によって、感じ方は全く違ってくると思います」と伝えた。
最後に日本の映画ファンへ、ホ監督は「『満ち足りた家族』が韓国で上映された時は、4人の演技が『クレイジーだ』と高評価を受けました。日本の皆さんもぜひ楽しんで、俳優の演技を観ていただきたいです」とメッセージ。チャン・ドンゴンは「この映画は、『トロント映画祭』で初お披露目されました。その時は文化的な違いなどもあるため、共感を得たり楽しんでもらえたりするか、とても心配でした。でも、人の感情の揺らぎはどの国も同じであり、特に子どもへの愛情や気持ちは、万国共通であると実感しました。日本の皆さんは、果たしてどのように観てくださるのか、とても楽しみで、わくわくしています。たくさんの応援をよろしくお願いします」とメッセージを贈った。
◆ホ・ジノ(ほ・じの)1963年8月8日生まれ。大学卒業後、会社員生活を経てポン・ジュノ監督らを輩出した韓国映画アカデミーで映画を学ぶ。1998年に、ハン・ソッキュ&シム・ウナ主演作「八月のクリスマス」で長編監督デビュー。「カンヌ映画祭」批評家週間に入選したほか、「青龍映画賞」最優秀作品賞に輝くなど、韓国新世代監督の最注目株へと躍り出た。2021年にはチョン・ドヨンを主演に迎え、初のシリーズドラマ監督作「LOST 人間失格」を手がけた。
◆チャン・ドンゴン(ちゃん・どんごん)1972年3月7日生まれ。テレビ界での活躍を経て、1997年に「敗者復活戦」で映画俳優デビュー。その後「友へ チング」(01)、「ブラザーフッド」(04)など、韓国映画興行史上に残る記録的ヒット作への出演で知られる人気スターとなった。「王宮の夜鬼」(18)以降、映画出演から遠ざかっていたが、「満ち足りた家族」で約5年ぶりとなるスクリーン復帰を果たした。
「満ち足りた家族」
2025年1月17日(金)より全国ロードショー
監督:ホ・ジノ
出演:ソル・ギョング、チャン・ドンゴン、キム・ヒエ、クローディア・キム
2024年/韓国/109分/シネスコサイズ/5.1ch/字幕翻訳:福留友子
原題:보통의 가족(普通の家族)/英題:A NORMAL FAMILY/PG12
提供:KDDI 配給:日活/KDDI
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(よろず~ニュース・椎 美雪)
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