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東急「グレーター渋谷2.0」のキーワードは「遊び心」 なぜ渋谷は人々を惹きつける街に変身できたのか?

財界オンライン / 2024年12月28日 7時0分

駅を中心に大規模な開発が続く渋谷

渋谷再開発の休息期間


「渋谷に住む人や訪れる人たちが持つ〝遊び心〟を表現できる舞台を整えることが我々の役割だ」ー。東急都市開発本部渋谷開発事業部開発計画グループ課長の篠田なつき氏は強調する。

 2012年の「渋谷ヒカリエ」の開業から約12年。1日の平均乗降客数が約330万人に上る渋谷駅を中心に、周辺では立て続けに東急グループによる大規模な複合高層施設が立ち並ぶ。24年も7月に「渋谷アクシュ」が開業した。渋谷ヒカリエ側と青山側に2つの広場が整備され、豊かな植栽やパブリックアート、ベンチなどが設置されるなど、行き交う人々が休息できる空間が生まれている。

 そんな東急グループのお膝元でもある渋谷の再開発は、実は25年以降は"休息期間"に当たる。次の大型再開発は「渋谷スクランブルスクエア(中央棟・西棟)」や「渋谷アッパー・ウエスト・プロジェクト」(東急百貨店本店跡地の再開発)が開業・竣工するまで待たなければならない。

 一方、東京都心ではJR東日本による「高輪ゲートウェイシティ」のまちびらきをはじめ、新宿や池袋などでも大規模な再開発計画が動き続けている。そのため、何もせず、手をこまねいていれば「渋谷という街が、あっという間に見放される」と同氏は危機感を抱く。それを見据えて既に東急では12年のヒカリエ開業以降、エリアマネジメントに注力。つまり、街の運営に力を注いでいるのだ。

「100年に一度」と言われる渋谷の再開発は東急東横線と東京メトロ副都心線との相互直通運転(02年決定、13年開始)によって、地上にあった東横線が地下化することが契機になって始まった。加えて、渋谷駅周辺地域が05年に都市再生緊急整備地域に指定され、渋谷の活力強化に向けた駅・まち一体の整備や、駅周辺の動線の改良、防災機能強化などの指針が示された。

 東急は行政・地域・他の事業者と連携し、新たなビルを完成させる度に、ハード面での整備を実施。街を上下に移動するための縦軸の移動空間「アーバン・コア」をエレベーターやエスカレーターの設置などで整備し、線路や道路によって東西南北に分断されていた街を複数レベルで「歩行者デッキ」によりつないだ。これらの取組みによりストレスない移動を可能とした。

 また、駅東口の地下には雨水貯留施設を設置し、集中豪雨の際の浸水対策として雨水を貯水できる機能を付加。各ビルにも帰宅困難者を受け入れるスペースも設けている。これらの取り組みは東急会長の野本弘文氏がかねてより強調していた「まちは行き止まりではいけない。オープンであるべきで、つながることが大事だ」といった方針を貫くものでもある。

 この方針は建物などのハード面だけでなく、運営というソフトの面でも共通している。ヒカリエ開業の翌年、官民でまちづくりに関するルールをつくる「渋谷駅前エリアマネジメント協議会」を組成。その後、まちづくり活動の実行部隊である「一般社団法人渋谷駅前エリアマネジメント」も組成。東急も参画した。



道路上空に広告スペース


 篠田氏は「渋谷の特徴の1つが多様性。我々だけでは決して思いつかないようなアイデアが渋谷を取り巻く人々から発案される」と語る。今夏開催された「渋谷まちびらき2024」イベントにおける、街中でのストリートライブや渋谷の街をアーティストに開放し、Tシャツをキャンバスにしたアート展などは、渋谷の多様性を具現化した代表的な事例になる。

 ただ運営する場合には、それなりの活動資金が必要になる。そこで前出の2つの組織が区などと調整し、屋外広告物のルールを策定したことで「道路や川の上でも広告を掲示することが可能となった」(同)。これにより渋谷界隈の企業からの広告出稿が増え、「運営に当てる活動費を捻出できた」と同氏は語る。

 国道246号線の上空に架かるデッキや渋谷川の直上に当たる「渋谷ストリーム」前の広場も公共空間であるが、行政との連携やエリアマネジメントの活動を通して、活用が進められている。

 1980年代以降の渋谷と言えば、「チーマー族」や「コギャル」といった独自の若者文化が発展し、2000年前後にはIT企業が集積する「ビットバレー」として盛り上がった。その後、東急グループの新たなビルの誕生で、大人の女性や働く人が増え、都内を訪れる訪日インバウンドの訪問先で2年連続1位を獲得。

 一方で街の魅力を高めるためには「渋谷の人々が主体的に動く仕掛けづくりが欠かせない」と篠田氏。東急グループでは渋谷駅を中心とした半径2.5キロ圏内を「グレーター渋谷」と定め、都市開発と魅力を向上させる取り組みを行っていたが、今は「グレーター渋谷2.0」を銘打ち、働く・遊ぶ・暮らすが融合した「渋谷型都市ライフ」の創造に向けて動いている。

 前述の通り、今後は品川をはじめ、六本木、虎ノ門、新宿など大規模な複合施設が各所で続々と誕生してくる。その中で渋谷がどう生き残るのか。汐留などでは車両基地跡地が再開発されてオフィスビルなどが立ち並んだが、エリアマネジメントの効果が薄く、「働く場」としてだけの側面で終わったエリアもある。それだけに東急と渋谷に関わる人々の結束力が試される。

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