【2025年をどう占いますか?】答える人 アサヒグループホールディングス会長・小路明善
財界オンライン / 2025年1月16日 7時0分
分断・分裂の時代、国同士をつなぐのは経済外交
─ 喜㔟さんからは壮大なまちづくりの構想が語られましたが、25年は米国・トランプ政権誕生で分断・対立が加速すると言われます。そういう不透明な時代にあって、アサヒグループホールディングス会長の小路明善さん、アサヒグループとしてはどのように対応していきますか。
小路 これから「自国ファースト」ということが、世界各国でより鮮明になってくる時代になっていくと思います。西側諸国、先進国、中東、グローバルサウスという四極の分断の世界というところで、トランプ氏の就任により「自国ファースト」という思いを抱えた強い国がだんだん出てきて、世界が多極化というところに向かっていくのではないのかなと。
その中でわれわれビジネスの世界では、国際ルールというものを何らかの形で作っていかないと成立しません。ですから、国同士の政治的問題とは別に、われわれが経済の交流を作り、企業人による経済外交をしていくということが大事になってくると思います。
日本がエネルギー、食料、医薬等々の、生活に欠かせない物資の自給率が相変わらず低いということは非常に危惧しています。
─ 多くの物資を海外輸入に頼っている現実をどうしていくかが大きな課題ですね。
小路 ええ。エネルギーは20%以下、食料自給率はこの30年間約40%で止まっています。医薬に至っては、いわゆる抗生剤みたいなものは、ほとんど中国に頼っている状態。ですから、自給率をいかに高めるかというところに、経済外交の力を発揮していかなければいけないと思いますね。
─ そういう意味で経済人の役割は今後ますます重要になっていくと。
小路 そうですね。例えばわれわれも中国に「スーパードライ」を展開して、非常にうまくいっています。こういった形で民間企業の経済活動によって、国と国の関係の強化に結び付ける、そういう経済外交にしていかなければいけない。結果的にそれが日本の国民生活や国益にプラスになり、国力を強めることにつながっていく。
これをやっていくに当たっての原点・源流にあるのは、やはり「人」であります。特に物的資源のない日本というのは、無形資産である知財、国際特許、人材をやはり強めていかなければいけません。
それからもう1つは、最先端技術。それも世界の中で「最先端」であらねばならないと。それを生み出す人材の高度化を考える際に、やはり人が学び続ける生涯学習が必須です。それだけでなく、それが人生の喜びとなるような日本の文化にしていかなければいけないのではと思います。
そういう意味で、わたしは「全世代型教育システム」ということを提唱しているのです。ビジネスでも行き詰まると、どこかに正解があると検索しがちですが、正解はどこにもありません。適切な対応・対策というのは自ら考え、未来は自分たちで作り出していく。そういう人材づくりが必須だと思います。
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