ホンダと日産の経営統合に求められる"らしさ"の追求 次世代のクルマでどう消費者を惹きつけるか?
財界オンライン / 2025年1月30日 18時0分
立ちはだかるハードル
「新興勢力も含め、戦う力を2030年頃には持っていないと勝負にならない」(ホンダ社長の三部敏宏氏)、「どんな大企業であっても、常識にとらわれていては未来を切り開けない」(日産自動車社長の内田誠氏)
ホンダと日産自動車が26年8月の持ち株会社設立による経営統合に向けて動き出したが、実現に向けたハードルは高い。目の前の課題は日産の再建だ。三部氏も「(日産の再建が進まなければ)経営統合が成就しない可能性もある」と語るだけに、まずは内田氏が20%の生産能力の削減などで、年間350万台の販売でも安定した収益を得られる体質に変えられるかどうかにかかっている。
次に経営統合が実現しても、肝心なのは、消費者を惹き付けるクルマができるかどうかだ。従来まではクルマを売るだけでビジネスは成り立っていたが、次世代のクルマはガソリン車から電気自動車(EV)に変わり、スマートフォンのようにソフトウエアを更新することで運転制御やエンターテインメントなどの機能を追加できるようになる。
クルマの形状はそのままでも、ソフトの更新で収益を上げるというモデルだ。ある調査会社では34年にはこの世界市場が46兆円に拡大すると見込まれている。
しかし、フォルクスワーゲンが自前の開発で失敗したように専門性が高い上に、トヨタ自動車も自前の車載OSの開発に1兆円規模を投じるなど、ソフトの開発には「4桁億円ぐらいの開発費がかかる」(三部氏)。
日産のスポーツカーにホンダのエンジンを積む……。両社のファンの夢は膨らむが、最大の課題は現場レベルの危機感の共有だ。両社と取引のある部品会社のエンジニアは「コストに厳しく、お上体質の日産と工場で一緒に研究開発に勤しむが、コスト意識の薄いホンダのエンジニアは、まさに対照的」と話す。
トップがどんなに危機感を共有できていても、現場レベルで危機感を共有し、互いの技術や知恵を融合させなければ世界トップのトヨタやEV大手のテスラ、BYDのみならず、IT大手のファーウェイや百度、スマホ大手のシャオミといった異業種からの参入組とも「渡り合うことはできない」(アナリスト)。
しかも、今は電動化の過渡期。EV需要が後退したことで、ガソリンを搭載するハイブリッド車などにも投資しなければならないという二重投資の局面にある。
次世代のクルマづくりと両社の名車に代表される"らしさ"の追求との併存が求められてくる。
【新しい成長を遂げる!巳年生まれの企業トップたち】東海旅客鉄道(JR東海)社長 丹羽俊介さん
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