創業113年の老舗・貝印社長が語る「『伝統の技術』を核に清潔なソリ味を」
財界オンライン / 2021年9月11日 7時0分
「環境変化はあるが、会社を変えるチャンスと捉えていく」。2021年5月、貝印は32年ぶりに社長を交代した。遠藤浩彰氏は現会長兼CEO(最高経営責任者)である宏治氏の長男で創業家4代目にあたる。
後継者として育てられた宏治氏とは対称的に、浩彰氏は一言も「会社を継げ」とは言われなかったという。ただ、海外に事業を広げる宏治氏の「スケールの大きい仕事を生き生きと、楽しそうにしている姿を見て、学生時代に意志は固まった」。
貝印は創業113年の歴史を持つ。いかに伝統を守りながら革新を進めるか。「先人の功績、歴史への感謝を決して忘れてはいけない。その上で、現状維持は衰退につながる。過去のいいものは守りつつ、いかに新しいものを積み重ねていくかが大事」
創業110周年の18年、浩彰氏は新たな付加価値を生むための大きな方針として「ブルーオーシャンウェーブ」を発表した。貝印は代々、「カミソリ」で新たな道を切り開いてきたが、浩彰氏が社内有志と共に世に送り出したのが「紙カミソリ™」。
通常プラスチックが使われる持ち手部分に厚手の紙を使用。水場で使用されることが多いカミソリだけに、どんな紙を使えばいいか、100回以上のテストを行うなど試行錯誤の末に完成させた。当初はカミソリの革新を目指したものだったが結果、SDGs、ESGの潮流を捉えた製品となった。
「新鮮で快適、清潔なソリ味を味わっていただくことがお客様の価値につながると考えた製品だが、ここまで大きな反響は想定していなかった」と驚く。今後の新たな製品開発のヒントにもなりそうだ。
伝統の技術をどう継承していくかも課題だが「技術を持つ人が安定的に働くことができる環境を提供することが第一」として各世代の職人を教育し、”暗黙知”を伝承することを目指す。
「我々は『刃物』をコアに事業を展開する世界的にもユニークな存在だと思う。『刃物と言えば日本のKAI』だと、世界の方々にさらに認めていただけるようになりたい」と意気込む。
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