テスラは業績悪化で、株価も急降下 逆境を迎えているEV、EVしか売るものがないテスラはどんな道を選ぶ?
財経新聞 / 2024年4月27日 17時3分
テスラの経営戦略を巡る思惑が錯綜している。
大きなきっかけは、24年1~3月期の世界販売台数が、対前年同期比で9%の減少と発表されたことだ。公式に発表される前から、株式市場はテスラの変調を織り込み済みだった。
24年になってわずか数カ月で、テスラの株価は40%値下がりした。自動車メーカーでは、時価総額で長らく世界トップだったトヨタを追い抜いたテスラは、現在約71兆円となり、約60兆円までに回復したトヨタが再びトップの座を奪い返す日が現実味を帯びて語られ始めている。
世界の自動車が間も無くEV(電気自動車)に切り替わるという幻想が拡大していた時期には、EV一辺倒がテスラ最大の強みだった。
経営者に求められる資質で大きなウエイトを占めるのが、先見性だ。資金的にも人材にも余裕のない創業期に、経営資源を一点に集中して大きく成長させられる経営者は多くない。イーロン・マスク氏はその夢を実現しつつあると考えられたから、EVへの大きな潮流にも乗って高い評価を集めていた。
「一辺倒」の最大の弱みは”流れ”が変わった時に、より大きなマイナスの影響を受けることだ。23年後半に失速したEVは、今もその後遺症に悩まされている。
地球環境に多大なアドバンテージがあるとしてブームになっていたEVは、充電時間が長い上に充電ポイントが少なくて不便と貶された。原材料の希少性が車両価格を引き上げているとしかめっ面で語られ、中古市場では叩かれると嘆かれ、寒さに弱いと腐されるなど、マイナス面がクローズアップされる逆風に晒されている。
そんな状況を踏まえてロイター通信は、「テスラが中国勢との低価格競争を嫌っている」というテーマで始まる観測記事を流した。大まかに言うと、低価格開発プロジェクトからの撤退を検討しているが、自動運転タクシー(ロボタクシー)の開発は進めるという内容だ。
やや先走り気味の報道が、5日の米株式市場で対前日終値との比較で6%安に繋がったと感じたマスク氏は、「ロイターは嘘をついている」とXで反論している。
23日の決算会見でマスク氏は、「手頃な価格帯を含む新モデルの生産を加速する」と、ロイターの報道を否定する発言で溜飲を下げた。鬱憤は晴らしたようだが、価格帯には一切触れていないところにマスク氏の戦略があるのだろう。
「テスラから付与された8兆円を超える報酬パッケージは無効」と、裁判所に判断されたマスク氏の金銭感覚で口にする「手頃な価格帯」と、EV購入希望者が期待している価格がリンクしているとは限らない。
品揃えを抑えて効率的な販売を続けることは物品販売業の醍醐味だろうが、選択肢の少なさが顧客を遠ざけるリスクもある。マスク氏がどんなカードを繰り出すのか、駆け引きは始まったばかりだ。
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