【選挙の舞台裏】(上) 選挙は告示までに9割は結果が決まっている!?
OVO [オーヴォ] / 2017年6月30日 12時43分
政治家になるなら駅前などで普段から街頭活動をすることが大切。写真は千葉県議会議員の松戸たかまささん。
小池都政の信を問う格好となった東京都議会議員選挙が注目されている。当選するために候補者は選挙期間中、一生懸命活動しているが、宣伝カーに乗って手を振ったり、街頭でマイクを持って訴えている姿は、ほんの一部に過ぎない。実のところ、見えないところで候補者やスタッフは、それこそ涙ぐましい努力をしているのだ。そうした一般には“見えない”選挙の舞台裏の一部を、3回に分けて紹介してみよう。
選挙期間は、国政選挙や地方選挙などによって日数が異なる。都議会選挙の場合は9日間だ。となると、その短い間に、いかに有権者に訴えるかが最も重要となりそうだが、その道のプロに言わせれば「選挙は告示までに9割は結果が決まっている」という。衆議院選挙や参議院選挙の国政選挙の場合、その時に吹いている“風”によって結果が左右されるケースが多いが、小さな選挙になればなるほど、モノを言うのは普段の活動だ。
今回の都議選の場合、国政選挙に準じるとも言われ、“風”に乗った候補者が有利とされるが、本当の意味で“強い”候補者というのは、普段の活動を怠らない。普段から地元に密着して、選挙の時に投票用紙へ自分の名前を書いてもらうためだけに頑張っているのである。選挙で“現職が有利”というのは、単に新人候補に比べて知名度が高いだけではなく、普段の活動がその背景にあるため。「選挙は告示までに9割は結果が決まっている」というのは、そうしたことから来るのだろう。
地元の盆踊り大会や運動会、カラオケ大会などにもこまめに顔を出す必要が。
その活動だが、盆踊りや運動会など地域の行事に顔を出すのはもちろんだが、それだけでは足りない。確実に投票用紙に名前を書いてもらうためには、知名度を上げるだけではダメ。関東近県で4期務めた元県議は「自分の支援者をいかに囲い込むかが重要だ。自ら主催するイベントに支援者を招き、それらを通じて作成した名簿をきっちり管理。選挙期間中は、その名簿を使ってハガキを出すなど、いわば仕上げの期間に過ぎない」と話す。この元県議は現役時代、県政報告会と称するパーティー、カラオケ大会、盆踊り大会、ゴルフコンペにバス旅行を季節に応じて年1回開催していたという。
選挙のハガキというのは、候補者が自分をアピールするために、選挙期間中に差し出す“公選ハガキ”と呼ばれるもの。これも選挙の種類によって出せる枚数が決まっており、都議選の場合は8000枚まで送ることができる。ひと口に8000枚と言っても、何の準備もなく、それだけの枚数を出せるものではない。新人候補が、選挙期間中にぶち当たる壁の1つだ。にわか仕立てで、業界や自治会などの名簿をかき集めてハガキを出しても、自分に入れてくれるかどうかわからない。確実性を高めるには、名簿を作成するだけではダメで、普段の“ケア”が重要になる。
さらに一歩進んで、それだけでは足りないという声もある。中規模の都道府県議会選挙では、こうした“絶対的な”支援者を作るだけでは当選がおぼつかない。対立候補に“風”が吹いて浮動票が集中すれば、固定票を積み上げても当選ラインに届かなくなる恐れが生じるからだ。
「選挙の前、いかに名前を知ってもらえるかが大切。立候補者が何人もいると、当然のことながら、名前が知られている候補者が有利になるだろう。もともとの有名人なら必要ないかもしれないが、普段から名前が売れるように努力している」と語るのは、現職の千葉県議会議員である松戸たかまささんだ。
松戸さんは平日は毎朝、選挙区の松戸市内にある駅に立ち(これを政治関係者の間では「朝立ち」と呼んでいる)、有権者に訴える活動を続けている。そうすることによって、通勤客や通学客に自分の名前が浸透、普段の活動で積み上げた“固定票”に加え、上がった知名度から“浮動票”も獲得しやすくなるのだ。実際に、松戸さんのように実践している政治家は少なくない。有名なところでは、野田元首相や菅官房長官などは朝の街頭活動を毎日行い、“選挙に強い”政治家となった。
選挙では“2期目のジンクス”というのがあるが、実際、最初の選挙に“風”や“見栄え”、華々しい“経歴”などで当選しても、普段の活動を怠ると2回目の選挙で落選、そのまま消えてしまう政治家は少なくない。そう考えると、いつ解散で選挙になるかわからず“常在戦場”と言われる衆議院議員ならずとも、およそ議員というのは皆、365日毎日が選挙期間といえそうである。
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