特集2017年9月19日更新

この夏、多発した食中毒事故 その原因と対策は

先月から腸管出血性大腸菌O157による食中毒が相次いでいて、関東地方で発生している事案では死亡者も出る騒ぎになっています。その事案の経緯をまとめつつ、食中毒の予防法も紹介します。

最新ニュース

[図表]これまでの「今年の漢字」一覧

2017年は「北」 過去23回の今年の漢字を振り返る

THE PAGE / 2017年12月12日 14時15分

 その年の世相を表す漢字一字を選ぶ「今年の漢字」(日本漢字能力検定協会主催)。京都・清水寺で12日、発表され、今年は「北」でした。 [全文を読む]

目次

8月から目立つ「O157」による食中毒

今年のO157による食中毒事例

初発日 場所 原因施設 患者数
5月9日 滋賀県 しのび 7人
7月21日 埼玉県さいたま市 クオンズ 浦和店 2人
8月3日 神奈川県横浜市 安楽亭 あざみ野店 2人
8月11日 埼玉県 でりしゃす 籠原店・熊谷店 13人
8月11日 岡山県 カルビ屋八戒 津山店・美作店 7人
8月13日 群馬県前橋市 でりしゃす 六供店 11人
8月13日 埼玉県川越市 ナポリの食卓 パスタとピッツァ 川越店 7人
8月13日 滋賀県 本陣 樋口山 3人
8月16日 埼玉県 焼肉 肉匠もりやす 7人
8月21日 長野県 焼肉 幸 4人
8月24日 愛知県岡崎市 焼肉 三八 12人

厚生労働省のまとめによると、今年発生した腸管出血性大腸菌O157による食中毒の事例は上記の11事例(9月14日時点)。表を見ればひと目で分かるとおり、8月に入ってから急増しています。
中でも、埼玉県と群馬県の総菜店「でりしゃす」系列店で購入した総菜を食べた人が相次いでO157に感染し、20人を超える患者を出したことが大きなニュースとなりました。

「でりしゃす」の食中毒では死亡者も

沈静化するとみられていた矢先に死者が判明

埼玉、群馬両県の総菜店「でりしゃす」系列店で購入したポテトサラダなどを食べた人が腸管出血性大腸菌O157に感染した集団食中毒で、前橋市内の系列店で販売された総菜を食べた子供1人が死亡したことが13日、市への取材で分かった。子供からはO157が検出された。一連の食中毒で死者が出たのは初めて。

「でりしゃす」で購入した惣菜が原因とされている一連の食中毒が最初に報じられたのは先月21日。一時は意識不明の重体に陥った患者もいることが伝えられていましたが、のちに快方に向かい、また、同24日から系列店全17店舗で営業を自粛していた「でりしゃす」も今月7日から営業を再開していたこともあり、感染源の特定には至っていないながらも、事態は沈静化していくように思われていました。
しかし今月13日、上の記事のように3歳の女の子が死亡したことが明らかになり、再び騒動がクローズアップされると同時に、食中毒の恐ろしさを再認識させられることになりました。

感染源、感染経路ともに特定できず

--新たに分かった2人のうち、亡くなった方は何を食べたのか

「主に炒め物が中心。タケノコの炒め物、エビの炒め物。女児が食べたのは、加熱調理した物だ。主に2次汚染が原因と考えている。喫食者11人は女児の家族も含めた一つのグループとして11日昼に会食し、うち2人が感染した」

13日に死亡者が明らかになる前は、ポテトサラダが感染源ではないかといわれていましたが(埼玉県は感染源をポテトサラダと断定)、死亡した女児が食べていた食品は「でりしゃす六供店」のタケノコやエビの炒め物だったと前橋市が発表。ポテトサラダは食べていないということで驚きが広がりました。
またそれ以前に、ポテトサラダに絞って食品加工工場などを検査した結果、菌が検出されておらず、感染源、感染経路ともに特定できていないという事態に陥っています。

ポテトサラダを製造した群馬県高崎市の食品加工工場や各地の店舗については、自治体の調査を受けたが、菌が混入した経路は分かっていない。

「二次汚染」説にも疑問点が…

「前回(8月30日)は感染源が特定できず、みんなサラダ類を食べていたが、炒め物も食べていた。サラダは加熱するものでないので(可能性として)前回に示した。事実だけを申し上げると、加熱調理後の2次汚染の可能性も強くなってきた」
--店舗内での2次汚染に触れたが、炒めるなど加熱したものでO157に感染するのはどういうことか

「家庭では加熱=殺菌だが、客に提供するものは1回加熱し無菌になっても、低温になれば無菌ではなくなる。汚染した靴で歩き回ってエアコンの空気で運ばれたりする」

このように、「六供店」では大皿などに盛られた総菜を客が自分で取って購入する形式が採用されていて、トングの使い回しなどにより店内で菌が付着する「二次汚染」が起きた可能性も前橋市の会見で指摘されました。しかし、別の「でりしゃす」系列店でもO157が相次いで検出されていて、「客による二次感染」と考えるには不自然な点も残ると指摘する記事もあります。

例年より多いO157の感染者数

上のグラフは、国立感染症研究所が公表している腸管出血性大腸菌の感染症発生動向調査から、ここ3年の速報データをまとめたもの。今年は7月の最終週から急増して以降、過去2年より多めで推移しています。

厚生労働省は9月1日付の通知において、平成29年8月の感染症発生動向調査における腸管出血性大腸菌O157の患者数は例年より多く、特に関東地方を中心にO157VT2が、直近5年間でもっとも流行した年のピーク時を超える水準となっていることを報告。また、国立感染症研究所における検査の結果、同一遺伝子型のO157が多くの患者から広域・散発的に検出されていることが判明している。

夏に増える腸管出血性大腸菌感染者

感染者数は例年、冬場から5月頃まで低水準で推移し、6月から9月にかけて急増する傾向があり、そのことは上のグラフからも読み取れると思います。
夏場にO157などの腸管出血性大腸菌による食中毒が増加するのは、気温が高くて菌が繁殖しやすいからです。

「O157」とは?

ここまで、今年発生したO157による食中毒や感染者数についてすでに随分と語っておいてなんですが、今さらながら「O157」や「腸管出血性大腸菌」といったキーワードについて触れておきましょう。

「腸管出血性大腸菌」の一種

O157は「腸管出血性大腸菌」の一種で、さらに腸管出血性大腸菌は「病原性大腸菌」の一種です。

大腸菌は、家畜やヒトの腸内にも存在し、そのほとんどは害がありません。
しかし、中にはヒトに下痢などの症状を引き起こす大腸菌があり、病原性大腸菌と呼ばれます。病原性大腸菌は約170種類ありますが、そのうちベロ毒素を産生し、出血を伴う腸炎や溶血性尿毒症症候群(HUS)を起こすものは‘腸管出血性大腸菌’と呼ばれ、代表的なものはO(オー)157、O26、O111などです。重症化するものの多くはO157です。

感染力が強い上に重症化する危険な大腸菌

上の解説のように、腸管出血性大腸菌の代表的なものにはO157のほかに、O26やO111があり、上でまとめた感染症報告数もこの3つを合わせた数値です。
ただ、O157は「感染力が強い」「重症化する」といった特徴があり、昨年も10人の死者を出すなど、数年に一度大きなニュースになって「O157」というワードをよく耳にすることになるわけです。

O157は感染力が強く、通常の細菌性食中毒では細菌を100万個単位で摂取しないと感染しないのに対し、わずか100個程度の菌数の摂取で発症するといわれています。
堺市で平成8年、学校給食などで9千人以上が感染したO157集団食中毒では、小学生3人が死亡し、後に後遺症で1人が死亡した。昨年、厚労省に報告があったO157の食中毒14件でも、患者252人のうち10人が死亡している。

O157に感染してHUSを発症した患者の致死率は1~5%とされ、特に抵抗力が弱い乳幼児や高齢者は重症化しやすいので注意が必要といわれています。

O157をはじめとした食中毒の予防法

9月13日、厚労省が注意喚起

関東地方を中心に発生している同一遺伝子型のO157食中毒事案に関連して1人が死亡したことを受け、厚生労働省は13日、都道府県などを通じて、感染や食中毒について食品業者への注意喚起の通知を出しました。

この注意喚起は、かなり大げさに言えば、国が食中毒に対して“非常事態宣言”を出しているようなものなので、これを機に私たちも食中毒対策を心がけたいところです。
そこで、ここからは食中毒予防法を紹介していきましょう。

食中毒予防の3原則

厚労省はかねてより、O157に限らず、食中毒を防ぐ「3原則」の告知を行っています。
それは…
・菌をつけない(調理前には必ず手洗い)
・増やさない(生鮮食品はすぐに冷蔵庫へ)
・やっつける(食材は中心までよく加熱)
この3つが食中毒予防の大原則となります。

(1)菌を付けない
 手に付いた菌の拡散を防ぐため、十分な手洗いを行う。食器・調理器具の十分な洗浄・消毒・乾燥を徹底する。
(2)菌を増やさない
 食材に付着した菌の増殖を抑えるには、低温で保存することが重要である。冷蔵庫は10度以下、冷凍庫はマイナス15度以下を維持する。
(3)菌を退治する
 O-157は熱に弱く、75度で1分以上の加熱をすれば死滅する。また、消毒用エタノール、次亜塩素酸ナトリウム、ポビドンヨード、逆性石けん液(ベンザルコニウム塩化物液)などの消毒剤が有効である。

食中毒予防の6つのポイント

厚労省は、上で紹介した3原則から派生した「家庭でできる食中毒予防の6つのポイント」もホームページに掲載しています。
これは家庭での調理や食事に関して「食品の購入」「家庭での保存」「下準備」「調理」「食事」「残った食品」という6つのポイントに分け、それぞれの段階での注意点を紹介しているものです。

「食品の購入」「家庭での保存」では…

・生鮮食品は新鮮なものを選び、購入したらできるだけはやく持ち帰りましょう!
・買ってきた食品はすぐに冷蔵庫に入れましょう。冷蔵庫や冷凍庫に食品を詰め込みすぎず、7割程度におさえることも保存状態を保つポイントになります。

「下準備」「調理」では…

・肉や魚を切ったまな板は、次の食材を切る前に必ず洗ってくださいね。まな板や包丁、スポンジ、ふきんなどは使い終わったらすぐに洗いましょう。
・冷凍と解凍を繰り返したり、室温で解凍したりすると細菌が増殖しやすいので要注意!
・調理は十分に過熱しましょう。

「食事」「残った食品」では…

・食事は常温で長時間放置しないようにしましょう。O157は室温に15~20分放置すると2倍に増えるそうですよ。
・時間が経ちすぎたり、少しでも怪しいと思ったりしたものは口に入れないようにしましょう。残ったものを再度食べる場合は、十分に再加熱しましょう。

上で引用した内容は厚労省のページで伝えてるものの一部で、実際にはある程度のボリュームがあるので、ぜひ全部を読んでおくことをオススメします。比較的簡潔にまとめられているパンフレットを見るのもいいですし、YouTubeの動画でチェックしてみるのもいいと思います。

個人としてできる食中毒予防法は、ここまでに紹介した「3原則」と「6つのポイント」でほぼ網羅されていて、「さすがは国の機関!」といった感じです。
そこで、続いてはInfoseekニュースに配信されてきている記事や公的機関が公開している情報などで気になったものを補足として紹介しておきます。内容的に「3原則」や「6つのポイント」とカブる点もありますが、あくまで補足というところでご了承願えればと。

適切な手洗い方法

まずは、食中毒対策の「基本中の基本」と言える手洗いについて。
下に紹介する動画は厚労省が公開しているもの。どうやら食品関連の業者向けの動画だと思われますが、10分を超える“大作”になっていて、家庭などで行う手洗いにも役立つ知識や情報が満載です。

「10分も見てられない!」という人には次の動画がオススメ。こちらは東京都の多摩小平保健所が制作した動画で、手洗いのポイントが2分にまとめられています。

O157で注意したい食べ物

肉から野菜までさまざま

下の記事では、O157の感染源として日本で報告されている15例を紹介しています。

・井戸水
・牛肉
・牛レバー刺し
・ハンバーグ
・牛の角切りステーキ
・牛タタキ
・ローストビーフ
・シカ肉
・サラダ
・カイワレ大根
・キャベツ
・メロン
・白菜漬け
・日本そば
・シーフードソース

これを見ると、生肉だけでなく野菜もあって「防ぎようがない」といった感じですが、まずはしっかりと洗浄して、加熱できるものはできるだけ加熱調理するようにしたほうがいいでしょう。

「75℃で1分間以上加熱」でO157は死滅

厚労省の「腸管出血性大腸菌Q&A」によると、腸管出血性大腸菌は75℃で1分間以上加熱すると死滅するといい、野菜の腸管出血性大腸菌を除菌するには、湯がき(100℃の湯で5秒間程度)が有効であるとされています。
このほか、野菜についての注意点は以下のとおりです。

(1) 野菜は新鮮なものを購入し、冷蔵庫で保管するなど保存に気をつける。
(2) ブロッコリーやカリフラワーなどの形が複雑なものは、熱湯で湯がく。
(3) レタスなどの葉菜類は、一枚ずつはがして流水で十分に洗う。
(4) きゅうりやトマト、りんごなどの果実もよく洗い、皮をむいて食べる。
(5) 食品用の洗浄剤や次亜塩素酸ナトリウムなどの殺菌剤を使ったり、加熱することにより殺菌効果はより高まります。

O157以外の菌における留意点

カンピロバクター

不十分な加熱の鶏肉に注意。東京都健康安全研究センターの研究では、菌自体は65℃まで加熱すれば30秒以内に死滅する。

ボツリヌス菌

ビン詰めや密閉パックに注意。80℃30分、もしくは100℃数分の加熱で毒素は失活するので食べる直前に十分な加熱を。レトルト(容器包装詰加圧加熱殺菌)に似たパッケージの市販品でも、冷蔵表示のあるものは冷蔵保存した上で賞味期限を守る。

黄色ブドウ球菌

直接手でつくるおむすびなど。手指に傷や湿疹などがある人は、食品に直接触れないこと。手指の洗浄、消毒を十分に行い、食品は10℃以下で保存すること。

ウエルシュ菌

煮込み料理に注意。前日調理は避け、加熱調理したものはなるべく早く食べる。やむを得ず保管するときには、菌の発育しやすい温度を早く通過するよう、小分けにして急速に冷却する。

「寝かせたカレー」に注意!

ウエルシュ菌が増殖した食べ物は危険

上でも少し触れた「ウエルシュ菌」による食中毒といえば、「寝かせたカレー」がよく引き合いに出されます。
ウエルシュ菌は野菜や肉、魚といった普段口にする食材には当たり前のように存在するものの、菌数が増えすぎると食中毒が発生しやすくなるといいます。

菌が増殖しやすい条件が45度前後、さらにその時の分裂時間10分と短いため、カレーを作って常温で放置しているあの時間はウエルッシュ菌にとっては絶好の増殖期なのです。さらに厄介と思われるポイントが、加熱しても死滅しない、ということです。

「常温で放置」はNG

上の記事にもあるように、ウエルシュ菌は「100℃で6時間熱しても死滅しない」という非常に厄介な菌です。
気を付けるポイントは…

・加熱調理した食品の冷却は速やかに
・室温で長時間放置しない
・早めに食べる
この3つを心がけることが大事です。
決して常温で放置せず、面倒でも小分けにして冷蔵庫へ。温め直して食べるときは、電子レンジではなく、煮込み直してしっかりと加熱を。ウェルシュ菌は酸素を嫌うため、加熱の際はよくかき混ぜて空気に触れさせるのもポイントです。

外食時の店選びのポイント

ここまで紹介してきたのは、主に「家庭で」できる予防法です。外食する時や、総菜や弁当などの調理済み食品を外で購入して自宅で食べる“中食”をする際には、ほとんど効果がありません。
そこで、飲食店や惣菜店の店内か従業員を見て衛生管理状況を判断して自己防衛するしかありませんが、そのポイントとは…

○従業員の制服が汚れていないか
○卓上の調味料入れにホコリが溜まっていないか
○メニューの扱いがぞんざいで、汚れていないか
○客用トイレが清潔か
○食器の扱いが雑で、ヒビが入っていないか
この中で1点でも該当する店は、決してオススメできない。

食中毒にかかったと思われる場合の対処法

下痢止め薬を自分の判断で服用しない!

最後に、食中毒にかかったと思われる場合の対処法について。
食中毒の典型的な症状としては腹痛や下痢、嘔吐などがありますが、その腹痛や下痢を抑えるために市販の下痢止めなどを服用するのはNGだとか。速やかに医師の診断を受けるのがベストだといいます。

いつもの腹痛とは違うと感じるような症状や水様性下痢、血便などが見られた場合は、速やかに医療機関を受診するべきであることはいうまでもないが、もしすぐに受診ができない場合でも、下痢止めを使用することは避けたほうがいい。O-157が腸内に存在する状態で下痢止めを使用すると、かえって菌が腸内にとどまる時間が長くなり増殖する。その結果、多くのベロ毒素がつくり出され、重篤な症状を引き起こすことになる。

食中毒の原因を確認するためにも医師の診断を受けるべき

食中毒の原因が何なのか、あるいは、そもそも激しい腹痛や下痢の原因が食中毒なのかを確認するためにも、医師の診断を受けることは大事になります。
万が一、O157などの危険な菌が原因だった場合は、家庭内の消毒や周囲の接触者への診断といった二次感染予防も必要となりますので、激しい下痢や嘔吐などの症状がある場合は医師の診断を受けましょう。


最近ではすっかり季節も秋めいてきて、気温が高い夏場に猛威を振るうO157といった細菌性の食中毒は収束していくと思われますが、気温が下がり空気が乾燥してくる冬に向かってはノロウイルスなどのウイルス性の食中毒が増えていくので注意が必要です(ノロウイルスの感染予防は3分以上の入念な手洗い!)。
…といった具合に、食中毒は年間を通して起こりますので、今回紹介した予防法を常に意識して安全な食生活を送ってください。

関連ニュース