特集2017年2月24日更新

どう変わる?どう楽しむ?プレミアムフライデー

2月24日から、毎月月末の金曜日は午後3時の退社を推奨する「プレミアムフライデー」が始まります。経済産業省が経団連などとともに官民で進める、消費増による経済活性化を目的とした取り組みです。さっそく一部の企業は午後3時退社への対応を、販売業や外食産業、旅行業界などは販促のイベントを企画していますが、いっぽうで賃金が増えないことには消費も増えないなどの意見も出ています。果たして日本社会に浸透していくのでしょうか。

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2月24日から「プレミアムフライデー」

プレミアムフライデーとは?

経済産業省が経団連などとともに官民で進める取り組み。
毎月月末の金曜日は従業員の退社時間を午後3時とし、買い物や外食、旅行などプライベートの時間を有意義に過ごしてもらうことで、個人の生活の充実度の向上や消費増による経済の活性化を目的としています。

プレミアムフライデー導入の経緯と目的

プレミアムフライデーを導入する目的とは一体何でしょうか。経緯を踏まえてプレミアムフライデーの目的や見込まれるメリット、予想されるデメリットについても取り上げてみます。

プレミアムフライデー導入の経緯

そもそもは政府による、個人消費を300兆円から360兆円に拡大させるための施策として、2016年2月に行なわれた経済財政諮問会議で発せられた意見が発端となっています。

会議の要旨を読むと、国内消費を伸ばすために、米国のブラックフライデーやサイバーマンデーといった小売りの一斉セールを日本でも春節やシルバーウィークの時期に全国規模のセールを展開し、地域企業の活性化につなげよう、という日本総合研究所の高橋進理事長の意見があった。その意見に東京大学の伊藤元重名誉教授が、バレンタインデーのチョコレートや正月の福袋といった社会全体で消費をする流れをつくることも手段としてはよいのでは、という言葉で受けたところが出発点となっている。

プレミアムフライデー導入の目的

プレミアムフライデーの主たる目的は仕事を終わらせてプレイベートの時間を増やし消費を促すことと、もうひとつは長時間労働の解消など働き方を変えていくことなどが挙げられます。経済産業省のサイトには以下のように記載されています。

個人が幸せや楽しさを感じられる体験(買物や家族との外食、観光等)や、そのための時間の創出を促すことで、
(1) 充実感・満足感を実感できる生活スタイルの変革への機会になる
(2) 地域等のコミュニティ機能強化や一体感の醸成につながる
(3)(単なる安売りではなく)デフレ的傾向を変えていくきっかけとなる
といった効果につなげていく取組です。

期待できるメリット

具体的にメリットを挙げていくと、まず土日とつながったプライベートの時間ができることで買い物や外食、旅行などに時間を費やすことができるようになります。アメリカのブラックフライデーが爆発的に消費が伸びるように、経済効果を生む契機になることが期待されています。また早く帰った金曜日のうちに家事や通院などしておくことで、土日についても有意義に時間を活用することができます。
また、労働者の長時間労働や過労の問題が取り沙汰されている中、実施する企業側にとっても業務の効率化を図る良いきっかけになります。共働きの家庭などは子どもの送り迎えや、家族と過ごす時間に充てることもできますね。

労働者にしてみれば、土日休日に連続する自分の自由になる時間ができ、その分プライベートを充実させることができるといったメリットが考えられます。
事業者や国の立場からみれば、思惑通りになることが前提ですが、労働者が自由になれば消費が増え景気拡大につながる、さらにはデフレ脱却につながる、事業者や国民の間に一体感が生まれるといったメリットが考えられます。

予想されるデメリット

予想されるデメリットとしては、もともと月末の金曜日は多忙という企業も多いことから、結局、別の曜日や一部の人にしわ寄せが来てしまったり、家に仕事を持ち帰るケースもありそうです。
業種によっても差が生じており、学校や医療・介護職などのように金曜日に早く帰ること自体ができない職場環境には無関係となっており、飲食業界やサービス業などに関しては逆に忙しくなるのではないでしょうか。
また、時給で働く人は単純に労働時間が減って、お給料も減ってしまうのではないかという懸念も出ています。

まずは強制力がなく「プレミアムフライデー」を実施してもらえるかどうかは労働者を雇っている企業次第だということです。
労働者にしてみても、金曜日に早く帰宅できたとしても、仕事量が変わるわけではありませんから、他の日にしわ寄せがあるだけです。

プレミアムフライデー導入企業

企業の積極的な取り組みを推奨

経済産業省は企業向けにロゴマークを提供し、各企業のプレミアムフライデーの積極的な取り組みを推奨しています。ソフトバンクや日産自動車など実際に2月24日からプレミアムフライデーを実施する企業もあり、その実施内容も様々です。プレミアムフライデーの取り組みに賛同し、ロゴマークの使用を申請した企業は以下のページから確認できます。

プレミアムフライデー ロゴマーク

柔軟性のある勤務体制を敷く企業

日産自動車や住友商事などのように、“月末の金曜日15時の退社”だけに限定せず、業種や個人それぞれに合わせ、フレックスタイム制や全休・午後半休取得を活用して柔軟に対応させる企業もあります。

日産自動車株式会社

当日午後3時以降は会議をできるだけ計画しないように社内に呼びかけ、時差のある海外の拠点や提携している仏ルノーなどにも配慮を求める。ただ、早帰りで減った労働時間は別の日に働いて埋め合わせる必要があり、所定の総労働時間(1日当たり8時間)は維持する。生産活動に直接従事する約8000人は対象外となる。

住友商事株式会社

同社では、プレミアムフライデー当日(毎月末の金曜日)が全休・午後半休取得奨励日に。有給休暇取得が難しい場合は、フレックスタイム制度を活用しコアタイム終了時刻(15時)の退社を奨励するという。

“金曜日”に限定しない企業

大和リース株式会社

大和リース株式会社は独自の制度として「プレミアム・アフター3」を2017年4月より導入。早く仕事を終えられる日を金曜日に限定せず、他の曜日での時間有給の取得も可能にする方針です。

当社従業員の職種による働き方の違いや、個人の事情を踏まえ、従業員がより活用しやすいよう、実施日を月末の金曜日に限定せず、午後3時からの時間有休(※1)取得による、「毎月1回の午後3時終業」を推奨する制度です。

先行して動き出していた企業も

すでに2016年3月からプレミアムフライデーを意識した「ハッピーライフフライデー」として、毎週金曜日の16時退社を実施してきた企業も。上述の「期待されるメリット」として挙げられた効果の他にも、具体的なメリットがアンケート結果として得られたようです。

アストラゼネカ株式会社

その他の影響として、「ワークライフバランスをより意識するようになった」、「新しいことにチャレンジしたいと思えるようになった」など、自身の生活に対する意識変化や、「帰りの電車がすいていて帰宅がラク」「週末に余裕が出て充実する」、「特別何もしなくても気分が大きく違う」、「I can enjoy sunshine (日が昇っている時間を楽しめる)」など気持ちにゆとりが生まれたり、「子どもに“おかえり!”といえて子どもが喜んでいる」、「妻が自分の仕事や趣味に集中できると喜んでいる」など家族にも好影響があった様子がわかりました。

社員向けに特典を付ける企業も

ただ早く帰れるだけでなく、初回限定特別企画として、従業員それぞれに商品券や支援金を支給する企業も。

株式会社ipoca

初回限定特別企画として、全従業員に一人当たり5,000円の商品券を支給いたします。この取り組みにより従業員一人ひとりが買い物を楽しむことと、地域の商業へ少しでも貢献することを目的としております。

サニーサイドアップ

さらに、「プレミアムフライデー」初回となる2月24日には、非正規雇用社員を含む全社員に「プレミアムフライデー支援金」3,200円が支給される。

プレミアムフライデー導入への懸念は?

導入企業は増えるのか?

導入企業について上述しましたが、認知度は高いものの、実際のところ開始当初はまだまだ導入されていない企業の方が多いのが現状です。

認知度は高い

知っている 74%
知らない 26%
A Yes 74% 認知率は74%。普及への関心は高いよう
経済産業省による推進協議会設置が昨年12月12日。今年1月末時点では74%の人が「プレミアムフライデー」を知っていると回答。「クールビズ」の場合、認知率90%になるまで10年かかった(出典「平成26年度クールビズについて」環境省)というから、注目度の高さがうかがえる。

実施有無の割合

Q.2月24日は初回のプレミアムフライデー実施日です。あなたの職場ではプレミアムフライデーが実施されますか?

はい 2.6%
いいえ 97.4%

果たして本当に消費は増えるのか?

家でゆっくり過ごしたい人も多い

余暇が増えたとしても即、消費につながるかどうかは未知な部分も多く、ITmedia ビジネスオンラインの記事によると、「プレミアムフライデーをどのように過ごすか」のアンケートでは「家でゆっくり過ごす」が全体の58.5%でトップという結果になっています。

流通業界などが「プレミアムフライデーの中心対象」と期待するのは、やはり、お金がある40~50代の男性。だが、この世代は非常に「疲れている」との調査結果もある。博報堂行動デザイン研究所が2016年10月に行ったアンケート(20~50代の男女800人対象)では、プレミアムフライデーは「自宅でのんびり過ごす」が30.3%に上り、トップの「旅行」(31.5%)にほぼ並ぶが、40~50代の男性では「自宅でのんびり」が約4割も占めた。

所得が増えないことには消費も増えない

個人の所得が増えない限りは、プレミアムフライデー向けの企画をいくら立てても、そこにお金を費やせる消費者は限定されているという声も。

冷静に考えれば、年収600万円では余裕のある暮らしとはならないことは明らかだ。政府が笛吹けど、人々が消費に踊ることはない。
アベノミクスは、企業の業績が向上すれば事後的に家計が良くなるという考えに基づいているが、安倍政権が強調してきた波及効果が起きてこなかったことが失敗要因と指摘する声が多い。本来、順番は逆でなければならない。高度成長期がそうであったように、まず家計が富み、それが企業に波及していくコースに戻さない限り、消費は上向かないだろう。
ちょい飲みしたり、デパートなどで買い物をしたりしたくても、先立つものがない。新生銀行の「2016年サラリーマンのお小遣い調査」によれば、お小遣いの平均月額は男性会社員が3万7873円、女性会社員が3万3502円で、この10年以上、ほとんど増えていないのである。

早く帰れる体制作りができるか?

そもそも月末の金曜日の午後3時に仕事を終えて退社できる人が、どのくらいいるかについても未知数なところです。他の日に残業が増えたり、他社とのやりとりに支障が出ないよう、営業窓口も調整が必要になってきます。その他、時給で労働している人に対しての勤務時間についても各企業の対応が気になるところです。

結局のところ、経済効果のみを考えれば有意義かもしれないプレミアムフライデーですが、働く人の立場で考えれば、プレミアムフライデーで帰れる人と帰れない人が二極化するだけというのがオチではないでしょうか。

どう過ごす?プレミアムフライデー

プレミアムフライデー向けのイベント

消費者向けに、プレミアムフライデー向けの企画が続々と打ち出されています。今後も増えていくと見込まれますが、2月24日から早速登場している企画をピックアップしてご紹介します。

ゴーゴーカレー

カレーチェーンの「ゴーゴーカレー」は毎月最終金曜日に食べ放題を実施。15時55分から「プレミアムフライデー55ナイト!」という1,550円でトッピングも全て対象の90分食べ放題という企画を実施します。

ミスタードーナツ

ミスタードーナツは2月24日に「プレミアムフライデー ドーナツ5個セット」を販売。129円(税込)以下の好きなドーナツ5個を組み合わせて、セットで500円(税込)の割引販売をします。

当日は129円以下のドーナツ5個を自由に選び、まとめて500円で購入可能。同社は3月以降のプレミアムフライデーにおいても、「ドーナツを通じて楽しい時間を過ごしていただける企画」を順次導入するとしています。

楽天市場

楽天市場では「PREMIUM FRIDAY」キャンペーンを開催。2月17日から1週間に渡って開催され、2月24日にはプレミアムフライデー当日限定のタイムセールが実施されます。早く仕事を終えて、じっくりとネットショッピングを楽しむのも良いですね。

本キャンペーンでは、「+αのプレミア感」をテーマに特集ページを開設し、「自分磨き」「おうちで楽しむ」「お出掛けする」といった3つの切り口で、コスメやファッションアイテム、パーティーグッズ、トラベルグッズなど、さまざまな商品を提案します。期間中は、毎日30名様に1,000ポイントが当たるくじやポイントアップ、クーポンの配布なども行い、ユーザーはお得にお買い物をすることができます。また、24日には当日限定のタイムセールを実施します。

ローソン

ローソンはプレミアムフライデーに合わせて限定商品を提供。ちょっとリッチなパスタやシュークリームなど家で過ごす方も豊かな時間を過ごすことができます。

吉野家

吉野家は牛丼、豚丼を半分(120g)ずつ盛り付けた「牛豚 半丼」450円(税込)を販売する。11時から22時までの限定販売。

西武園ゆうえんち

西武園ゆうえんちはアミューズメント、食事、宿泊などがパックになったプランを提供。交通に関しても西武新宿発で、西武遊園地行の急行「プレミアムフライデー号」も臨時運転する徹底ぶりです。

西武園ゆうえんち(埼玉県所沢市)はプレミアムフライデー初日にあわせ、星空観賞や中国割烹旅館「掬水亭」の日帰り入浴などがセットになった特別プラン「スターパーティ&イルミージュ絶景満喫プラン」を先着50名で募集している。 料金は3,000円。望遠鏡や双眼鏡などを使って星空解説を聞きながら、空いっぱいに広がる満天の星が満喫できる。当日は西武新宿発で西武遊園地行の急行「プレミアムフライデー号」も臨時運転する予定。

イトーヨーカドー

イトーヨーカドーは全国の店舗で15時から「プレミアム夕市」などを実施したり、まさに15時に仕事を終えるプレミアムフライデーだからこそ参加できる日帰りバスツアーを実施します。

イトーヨーカドーは、全国の店舗で15時から「プレミアム夕市」などを実施し、プレミアムな体験と商品を提供する。また、初日の2月24日には、セブンパークアリオ柏(千葉県柏市)から出発し、台場公園、晴海大橋などベイフロントの人気夜景スポットを巡る日帰りバスツアー「Parking&Trip アリオ発 スグ旅 夜景撮影バスツアー」を企画。こちらはすでに抽選が実施されており、招待者が決まっている。

医療法人社団 あんしん会 四谷メディカルキューブ

人間ドックの早割りプランが提供されるなど、医療の分野においてもプレミアムフライデーに対応したサービスが広まっています。

「プレミアムフライデー」を利用してがん検診の最先端である「PET/CT検査」を約16%引で受けられる新プラン「PFPP(PREMIUM FRIDAY Pair Plan)」の提供を2017年2月24日(金)より実施いたします。

賃金が上がらないと購買意欲に繋がらない、仕事のしわ寄せが他の日に来るなど、まだまだ懸念されることが多くあるプレミアムフライデー。しかし後半にご紹介したようなプレミアムフライデー向けのサービスが少しずつ拡大、品質向上していけば、将来的にアメリカのブラックフライデーのように消費が増加する日として定着するのではないでしょうか。

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