特集2017年6月5日更新

ゆるさと自由さが魅力 今、地方テレビ局が熱い!

「テレビ離れ」がささやかれる昨今ですが、一方で「地方局」に注目が集まっているといいます。地方局と聞くと、ローカルネタやローカルニュースを扱うという地味なイメージが浮かぶかもしれませんが、キー局にはない独特の「ゆるさ」や「自由さ」で思いもよらない人気番組が飛び出す要素を秘めているというのです。そういった地方局の人気番組や人気キャラクターを紹介していきましょう!

低予算でも独自の「ゆるさ」「自由さ」を持つ地方局

制作費はキー局の100分の1程度

日本には地上波のテレビ局がおよそ130局あり、NHKと在京キー局(民放系列の中心となる局。日本テレビ、テレビ朝日、TBS、テレビ東京、フジテレビ)を除いたテレビ局は地方局(ローカル局)として扱われています。
地方局はキー局に比べて大幅に予算が少ないといわれていて、テレビ局の命ともいえる番組制作費も同様です。「東洋経済オンライン」の記事では、地方局のひとつ、千葉テレビの現状を以下のように伝えています。

日本テレビ放送網は979億円、TBSテレビは981億円――。
これはキー局(地方の系列局とともに全国ネットを形成する)がかけている年間の番組制作費(2016年度の実績)だ。
(中略)
そんな中、わずか10億円の制作費と69人の社員で独自路線を突き進む局がある。それが独立ローカル局のひとつ、千葉テレビ放送だ。

この傾向はほかの地方局も同じようで、制作費は概ねキー局の100分の1程度である模様です。

「放送局格差はそれぞれの制作費を知れば簡単にわかります。制作費は出演者やスタッフのギャラ、美術費や技術費なども捻出するお金ですから、一目瞭然なんです。そして、それぞれの局の制作費ですが、地方局のそれを1とした場合、大阪や名古屋などの準キー局は5程度で、東京のキー局が100という割合になります」(キー局関係者)

タレントのギャラも格安 ダウンタウンも10万円!?

もはや大御所と呼べるお笑いコンビ・ダウンタウンの二人は近年、在阪テレビ局の番組にも出演していることが話題となっています。現在も浜ちゃんが「ごぶごぶ」(MBS)、松ちゃんが「松本家の休日」(ABC)に出演していますが、「ギャラは安い」という噂です。

「たとえばダウンタウンは、東京ではどちらかひとりだけでも300~500万円の出演料がかかります。しかし、大阪なら現在も1本10~20万円ほどといわれています。地元への恩返しという意味で引き受けているのでしょうが、東京の数字からすればあり得ないレベルですから、大きな格差があることがわかります」(芸能プロ関係者)

先に挙げた千葉テレビの番組「白黒アンジャッシュ」に出演するお笑いコンビ・アンジャッシュのギャラも、二人の人気が今より低かった番組開始当初から変わっていないといいます。

驚くことに、出演料は番組が始まった2004年からいっさい変わっていない。渡部さんが佐々木希さんとの結婚を発表するなど、コンビに一層注目が集まる中、アンジャッシュは低いギャラの白黒へいつまで出演し続けるのか。それは2人の「千葉テレビ愛」次第なのかもしれない。

低予算だからこそ「エッジの効いた面白いものができる」

近年、「若者のテレビ離れ」がささやかれていますが、その原因のひとつに、キー局のバラエティ番組の画一化があるといわれています。
「予算も人材も豊富なのに、なぜ似たような番組しか作れなくなったの?」という疑問に対し、ある放送作家は「キー局は視聴率が絶対。だから、面白い企画を考えても保険として『視聴率が取れる要素』、例えば大家族とか料理の映像を無理やりねじ込む」といい、テレビに出ている面々がいつも似たようなメンバーで、やっていることが同じなのは、ここに原因があるといいます。

そして、キー局の番組が面白くなくなる原因としてスタッフの人数の多さを指摘して、人数が少ないほうが「エッジの効いた面白いものができるんです」といいます。その点、地方局はスタッフの数も少ないのでエッジの効いた番組を作ることができ、また低予算であるからこその工夫やアイディアが如実に反映されて、面白い番組ができるという側面があるようです。
さらに、下に紹介する「水曜どうでしょう」のディレクター、藤村忠寿氏と嬉野雅道氏が「地方局はヒット番組を出すことが死活問題じゃない」「番組自体がつぶれてもいい」と語るように、地方局はキー局ほどスポンサーのプレッシャーを受けないようで、「ゆるさ」や「自由さ」にあふれる番組作りが可能だといわれています。
そこで今回は、「ゆるさ」「自由さ」「地方との密着ぶり」など地方局ならでは特徴で話題となった番組や名物キャラ(タレントなど)を紹介していきます。

地方局発で全国的に有名となった番組

水曜どうでしょう

地方局ブームの先駆け

地方局ブームの草分けになったのは俳優、大泉洋の出世作となった北海道文化放送の「水曜どうでしょう」(96~02年放映)の大ヒットだ。KBS京都の伊藤義行氏は、こう振り返る。
「6局の制作費を集約することで単独ではできないレベルの番組が制作できる。個人的には大泉さんの番組が先駆けだと思う。低予算でもおもしろい番組が作れるという可能性を示してくれた」

当時無名だった大泉洋を抜擢

〈出演者の1人には、藤村さんがディレクターだった深夜バラエティー番組『モザイクな夜V3』に出演していた大泉洋(43才)を抜擢した。当時の彼は、まだ無名の大学生だった〉
嬉野さん:(藤村さんは)大泉洋と番組を作りたかったんです。最初からあの男に代わる男はいなかったんじゃないですか?
藤村さん:ちょっと面白い人というんじゃなくて、彼を日本一面白いなと思っていましたからね。

番組DVDの累計販売数は500万枚?

『水曜どうでしょう』のレギュラー放送は北海道のみで96年10月から02年9月まででした。ところがネットやクチコミで評判を呼び、テレビ朝日系列局を中心に全国へと広まり、現在でも再放送している地方局がとても多く、番組DVDの累計販売数は500万枚と言われています。

国内も国外も「撮影許可は取らない」制作方針

藤村さん:今でも許可は取りません。そういうのをやっていて、「何かお互いにとっていいことあるの?」という気がすごくしているんです。今まで一回も注意されたことはありませんし、駅や店の片隅でカメラを回すことの何がいけないんだろうと思います。

4年ぶりの新作撮影へ

方言彼女。

「方言女子」ブームの火付け役

「方言彼女。」は美少女×方言をフィーチャーしたバラエティー番組。2010年にテレビ埼玉などで放送され、たちまち人気となり、全国で放送されることになりました。続編や関連企画などにも発展し、昨今話題の「方言女子」ブームの火付け役ともいわれています。

テレビ埼玉を中心に2010年10月~12月と2011年4月~6月にローカル各局で放送された「方言彼女。」は、各地の美少女が方言で告白したり、遅刻に怒ったり、遅刻して謝ったり……と、“方言萌え”派にはたまらないプログラムだろう。

地方局独特のユニークな番組

アグレッシブですけど、何か?

「日本一のローカル番組」を目指した番組

2007年から2015年まで広島ホームテレビ放送されていた番組。
「日本一のローカル番組を目指す」を合言葉に、MCのギャラを「視聴率変動制」(視聴率1%で1万1111円)にしたり、番組制作費を増やすためにギャンブルで一点賭けをしたりと、アグレッシブな企画に挑み、「日本で一番攻めている」とまでいわれた「ロマン追求型エンタテインメントローカルバラエティ番組」です。
人気を受けてどんどん放送エリアを増やし、全国12局までネット局を広げました。

白黒アンジャッシュ

アンジャッシュ唯一の冠番組

人気お笑いコンビのアンジャッシュ(児嶋一哉・渡部建)にとって初であり、唯一の冠番組だ。キー局の番組の出演時とは異なる2人の掛け合いが特徴で、ゲストにブレーク間近のお笑い芸人を呼んでトークすることも多い。

「開局以来初」明石家さんまも出演 ギャラ5000円!?

アンジャッシュ児島と明石家さんまが麻雀をしていた際に、冗談交じりに「千葉テレビの僕らの番組に出て下さい」とお願いしたところ、「ええよ」と即答。
(中略)
30分番組なのに2時間話しっぱなしで、その回の収録を4回に分けて使ったという。ギャラもその場で払ったそうだが封筒の中に入っていたのは5000円だった。

もっこすキッチン

「肥後もっこす」の魂あふれる料理番組

「熊本の野菜をもっと美味しく」をテーマに料理初心者でも楽しく作れるレシピを紹介するこの番組。シェフと進行するのは地元芸人のもっこすファイヤーだ。
(中略)
 とにかくキッチンには頑固で一本気な地元気質「肥後もっこす」の魂があふれる。今冬も「山椒を効かせた鶏肉と熊本ごぼうの照り煮」「鮮魚と熊本野菜のアクアパッツァ」など美味しそうなメニューが並ぶ。その料理とともに、他県じゃ絶対できない番組名。ナイス!

ヤンごとなき!

「エロいジジイ」が新潟のサブカルに迫る

新潟テレビ21(UX)で木曜深夜に放送されているバラエティー番組。
新潟出身のローカルタレント・ヤンがMCを務め、「ちょっと興味のあることにヤンわり迫ってみる」というコンセプトのもと、新潟のサブカルチャーを掘り下げようという番組です。2015年までは同じく新潟出身で暴走族、AV女優、お笑い芸人などさまざまな経歴を持つ西脇理恵もMCも努めていて、彼女のブログによると「予算がなくて出演費は交通費のみ」からスタートした番組だといいます。

元就。

アンガールズが出演する広島再発掘番組

中国放送(RCC)で放送されている「ふるさと再発掘・街ブラバラエティー」番組。
広島県とゆかりが深い毛利元就(の人形)の命を受けて、「家臣団」と呼ばれる出演者たちが広島の街を訪れて地域の魅力を再発掘するという内容。家臣団には、広島出身のお笑いコンビ・アンガールズやRCCのアナウンサーがいて、実質アンガールズの街歩き番組となっています。

「広島のローカル局では『元就。』というバラエティ番組が人気です。サンフレッチェ広島のチーム名の由来も『三本の矢』ですし、毛利元就は永遠のヒーロー」

ずくだせテレビ

「すぐだせ」じゃなくて「ずくだせ」

『ずくだせテレビ』(月曜~金曜13時55分~)。てっきり「すぐだせ」かと思ったら、「ずく」とは信州の方言で「やる気、意欲、根気」といった意味だという。ラジオ番組の兄弟番組で、中継場所をラジオの中で募集したりとテレビとラジオの連携もアリ。日替わりコーナーも多く、中で気になるのは、信州の町や村をぶらぶらしながら地域や人の魅力を伝える金曜日の『見なきゃ町村』。

地方局の名物キャラ

JAGUAR(ジャガーさん)

「ジャガー星」生まれの“千葉の英雄”

マツコ・デラックスが司会を務める深夜番組「月曜から夜ふかし」で紹介されて全国的に知られる存在となった千葉県のローカルロックミュージシャン、JAGUAR。彼は「ジャガーさん」の呼び名で千葉県民に親しまれています。

ジャガーさんは、宇宙のかなたにある「ジャガー星」から、宇宙船「ジャガー号」で地球にやってきたミュージシャン。1985年から千葉テレビ(チバテレ)のミニ番組「ハロー・ジャガー」に出演しており、2016年4月にはチバテレ開局45周年の「応援団長」に就任して県民に親しまれている。

個人で千葉テレビを応援し続ける「伝説のスポンサー」

そんなジャガーさんは、個人で千葉テレビを応援し続ける「伝説のスポンサー」だそうです。

千葉テレビとの付き合いは30年以上に及ぶ。ジャガーさんはかつて、5分間の番組枠を自費で買い取り、自作の歌とトークを披露する「HELLO JAGUAR」を1985年から約10年間放送していた。その後も2005年と2010年、2016年にレギュラー放送を行っている。
現在も千葉テレビと協力し、3分間の「おやすみJAGUAR天気予報」を毎日、1日の最後の番組として放送。出演、演出、編集はジャガーさんが1人で手掛けている。

今年4月、千葉テレビの終身名誉応援団長に就任

千葉のローカルタレントでロックミュージシャンのJAGUARが、チバテレの終身名誉応援団長に就任した。
3月29日に行われた「チバテレ2017春の陣記者発表会~NEXT Challenge~」に登壇したJAGUARは、「どういうわけか終身応援団長になりまして(笑)。何か知らない間に決まっていました」と暴露。

上杉周大

「ブギウギ専務」出演でブレイク

昨年末に活動を休止したロックバンド「THE TON-UP MOTORS」のボーカルで、北海道の深夜バラエティー番組「ブギウギ専務」への出演がきっかけで人気に。

「ブギウギ専務」への出演がきっかけとなり、上杉は「北海道を歩いていると、声を掛けられるようになった」と話し、この8月からは全国で放送されるということで、「(放送開始から8年)やっと、という思いが強い。北海道(の視聴者)からも全国に行けという声をひしひしと感じていたので、こうやって全国放送が決まって本当に嬉しい」と喜んでいた。

平畠啓史

最高視聴率22.5%を叩き出す大人気番組のMC

2006年に事実上の解散状態となったお笑いコンビ・DonDokoDonのツッコミ担当。現在では静岡県でスターに。

平畠のほうは現在、主に静岡のローカルテレビ番組で活躍。MCを務める『くさデカ』(テレビ静岡)が、最高視聴率22.5%を叩き出す大人気番組となり、平畠本人も静岡では絶大な人気を誇っている。

山本華世

愛する人、できました。生後2日目、癒されたぁ。ありがとう。

九州 福岡 博多の姐さん?山本華世さん(@yamamotokayo092)がシェアした投稿 -

福岡で知名度90%超えの「かよねぇ」

福岡県を中心に九州地方で1989年から放送されている人気長寿番組「ドォーモ」に出演するなど、福岡で高い知名度を誇るローカルタレント。「ドォーモ」の企画で自身の出産ドキュメンタリーを自分で手掛け、出産シーンを無修正で放送したことで話題となりました。

川満聡

沖縄お笑い界の重鎮「川満しぇんしぇー」

宮古なまりで人気者になり、「川満しぇんしぇー」の愛称で親しまれています。沖縄お笑い界の重鎮として沖縄県出身の芸能人がリスペクトしているとか。生活改善で15キロのダイエットに成功し、最近では健康関連イベントへの出演も増えているといいます。


地方局の人気番組を調べていて驚いたのは、全国区で活躍する人気タレントが地方の番組に数多く出演していることです。ギャラは安いといいますが、地方局独特の“ゆる~いノリ”でやれることや、ファンもタレントの素顔に近い一面が見られることで得した気分になれるのが人気の秘密なのでしょうね。
今回紹介したのは、ごくごく一部。ほかにも地元愛を「これでもか」と押し出した作りの番組など、地方局ならではの面白い番組が数多くあります。基本的にその地方でしか見ることができないのは残念ですが、自分の故郷に里帰りした際や、旅行先で宿に泊まった際などにチェックしてみてはいかがでしょうか?