特集2018年3月16日更新

「座れる通勤列車」の面も進化 新型ロマンスカー

3月17日から小田急の新型特急ロマンスカー「GSE」の運行が開始されます。GSEの特徴や記念イベントなどを紹介するとともに、ロマンスカーと同じように現在、私鉄各社が力を入れている「座れる通勤列車」についてもまとめてみました。

目次

新型ロマンスカー「GSE」はここが新しい!

新型特急ロマンスカーの車両形式は「70000形」で、愛称は「GSE」となっています。

小田急電鉄では、新型特急ロマンスカー「70000形」の車体がいよいよ完成し、愛称を「GSE」に決定。これは、開発コンセプトである「箱根につづく時間(とき)を 優雅に走るロマンスカー」をもとに、優雅さをあらわす「Graceful」を用い、『Graceful Super Express』を略したものである。

小田急電鉄・星野社長「列車に乗っている間ずっとワクワクしてもらえる」

「新宿から箱根まで、列車に乗っている間ずっとワクワクしてもらえる」。GSEによる箱根への旅を、星野社長はそのように表現する。

車両デザインのこだわり「過剰さの排除」「インターナショナルな心地よさ」

デザインは建築家の岡部憲明氏が担当

デザインを担当したのは、関西国際空港旅客ターミナルや在東京ベルギー大使館、ロマンスカーではVSE(50000形)、MSE(60000形)、EXEα(30000形リニューアル)を手掛けてきた岡部憲明氏。

ほかの観光列車はいすや壁などの材料に地元産の木材や布地を使ったり、民芸品を陳列するコーナーを設けたりするなど地域性を強調するが、GSEの車内にそうした要素はいっさいない。「過剰なデザイン性は排除した」と岡部氏は説明する。
逆に岡部氏が追求したのは「インターナショナルな心地よさ」。つまり、あらゆる国の人、あらゆる世代の人が、繰り返し乗車しても、つねに「快適だ」と言わせるだけのクオリティである。
GSEでは観光と通勤という異なるニーズを同時に満たすため、シンプルなデザインに徹して、居住空間のような心地よさを追求した。

「GSE」のカラーリング

車体を「薔薇」の色を基調とした「ローズバーミリオン」、屋根部を深い赤色の「ルージュボルドー」とし、側面にはロマンスカーの伝統カラーである「バーミリオンオレンジ」の帯をあしらっています。

「GSE」車両の特徴

展望席は景色に吸い込まれそうな視界

展望席は大型の一枚ガラスを採用し、ガラスの取り付け角度と座席の位置、ガラスの両側にある支柱の位置と形状を工夫することにより、前方の眺望を格段に向上させた。また、先頭車両は荷棚を無くすことで空間を創出し車内全体をより開放的にしている。
さらに、車両側面窓はVSEやMSEよりも30cm高い100cmとしたうえで、窓の繋ぎ目を極力少なくした連続窓とすることにより、流れ行く沿線の四季折々の風景を存分に楽しめるようになっている。

バリアフリーに対応した車両も

バリアフリーにも配慮し、4号車において改良型ハンドル形電動車いすでの乗車に対応した設備(ゆったりトイレ・乗車スペース)を導入。身障者対応座席は着脱式とし、座席を取り外すことで車いす3台まで乗車可能とした。トイレはすべて「ウォシュレット」付きの洋式トイレに。授乳時や体調不良時に利用できる多目的室も設置している。

2種類の無料Wi-Fiサービス

「Romancecar Link」はGSE専用のコンテンツを利用できるネットワーク。「Odakyu Free Wi-Fi」は2014年12月1日から始まった無料インターネット接続サービスで、小田急線の駅やロマンスカー、おもな観光施設などにアクセスポイントが設けられている。「Romancecar Link」はインターネット接続機能がないため、コンテンツの利用中、同時にインターネット接続はできない。たとえば展望映像のスクリーンショットを保存してSNSに送信したい場合、「Romancecar Link」をいったん終了し、「Odakyu Free Wi-Fi」につなぎ直す必要がある。

運行開始は3月17日 特急「スーパーはこね5号」でデビュー

今回公開された3月の運行予定表にて、初日の3月17日は新宿駅9時0分発の下り「スーパーはこね5号」から運行開始することが明らかに。この列車は新宿~小田原間を59分で結ぶ。その後は箱根湯本発の上り「はこね82・20・26・70号」、新宿発の下り「はこね17・31号」および「ホームウェイ7号」でGSEが使用される予定となっている。

「GSE」デビューを記念したイベントや関連グッズ

「ENJOY NEW ODAKYU ~新しい小田急で過ごす 楽しいひととき~」

同社沿線で運営する7つのショッピングセンターにおいて、合同キャンペーン「ENJOY NEW ODAKYU ~新しい小田急で過ごす 楽しいひととき~」を実施する。
各施設では、「抽選会」(「新宿ミロード」3月9日~4月1日、「成城コルティ」3月31日~4月1日、「相模大野ステーションスクエア」3月21日~4月1日)のほか、GSEグッズがもらえる「リアル宝探し」(「経堂コルティ」3月17日~18日、「成城コルティ」3月17日~18日)や、駅長の新制服を着用しての撮影会(「経堂コルティ」3月25日)も実施する。
そのほか、館内ロマンスカーのスタンプラリー(「新百合ヶ丘エルミロード」3月17日~18日)、「ミニ鉄道展」(「ビナウォーク」3月17日~18日)、「ICカードタッチキャンペーン」(「本厚木ミロード」3月12日~31日)などのコンテンツも用意する。

「ROMANCECAR GSE cafe @新宿Q's cafe」

2月19日から新宿駅西口構内に新型特急ロマンスカー・GSEをテーマとした「ROMANCECAR GSE cafe @新宿Q's cafe」(愛称「GSEカフェ」)を期間限定で開設。ひと足先にGSEを疑似体験できる展望席体験コーナーや、VRゴーグルを活用したGSEの車内と箱根のバーチャル体験コーナーも店内に設ける。
ロマンスカー車内販売メニューのうち、春のスイーツや「ロマンスカー・GSE弁当」など一部メニューは「GSEカフェ」でも期間・数量限定で販売される。GSEのロゴ入りボールペンやオリジナルペーパーコースターをノベルティーとして用意し、メニュー注文者に先着順でプレゼントする。

小田急百貨店新宿店でも複数のイベントを実施

3月17日(土)~27日(火)の期間、抽選で「ダイヤモンドネックレス」が当たるお買い物キャンペーンを行うほか、3月17日(土)、18日(日)に、複数のアイテムを詰め合わせた「フクフク袋」など特別ご提供品を販売。また、3月24日(土)、25日(日)に、ロマンスカー・GSEをモチーフにした遊具の設置やワークショップなどの屋上イベントを開催します。

箱根小涌園ユネッサン「ロマンスカー・GSE風呂」

ロマンスカー・GSE運行開始日となる3月17日(土)からは、ロマンスカー・GSEの車内でまるで入浴しているような気分が味わえる「ロマンスカー・GSE風呂」が期間限定で箱根小涌園ユネッサンに登場
箱根小涌園ユネッサンの水着エリアに、「ロマンスカー・GSE風呂」が登場!
ロマンスカー・GSEのボディカラー「ローズバーミリオン」をイメージした入浴料を使用したオレンジの湯面と、車両の側面をイメージした浴槽にもご注目ください。

サッポロビール「小田急ロマンスカー・GSE就役記念缶」

サッポロビール(株)は、サッポロ生ビール黒ラベル「小田急ロマンスカー・GSE就役記念缶」を、3月27日に数量限定で発売します。
この商品は小田急電鉄(株)の新型特急ロマンスカー・GSE(70000形)就役を記念して発売するもので、缶体には、車体の薔薇の色を基調とした「ローズバーミリオン」と、屋根部の深い赤色の「ルージュボルドー」のカラーリングを表現した、車両イラストをデザインしました。

「ロマンスカー・GSEグッズ」全16品も展開

小田急電鉄は3月17日より、ロマンスカー・GSEグッズを小田急グッズショップ「TRAINS(トレインズ)」2店舗およびオンラインショップ、海老名ビナウォーク「ミニ鉄道展」特設会場、新宿駅西口地上改札外の特設会場にて発売する。
販売するのは、新型特急ロマンスカー・GSEのデビューを記念にGSEをデザインした初のオリジナルグッズ全16品。親子で楽しめる組み立て式の「ダンボール電車」(税込1,620円)や「名刺入れ」(各税込1,944円)、「ランチボックス」(税込1,296円)のほか、お箸やキーホルダー、パスケースやマフラータオルなどを取りそろえる。

小田急ロマンスカーの歴史

「SE」の初代は1957年に登場した3000形

今につながる小田急のロマンスカーの歴史は、1957年にデビューした初代3000形「SE(Super Express)」に始まる。
小田急電鉄は、戦後すぐの1948年には特急列車の運転を始め、1951年には本格的な特急用電車1700形を投入していた。しかし1700形は従来の電車の域を出ず、さらなる高速化を目論んで、小田急と鉄道技術研究所が共同で開発したのが3000形であった。
3000形はそれまでの特急用電車の概念を一変させる車両であったため、直訳すると「超特急」。つまり、特急を超えた存在という愛称が与えられた。

「SE」がロマンスカーの代名詞に

小田急ロマンスカーが特筆すべき存在である理由は、3000形のデビューから60年間、「SE」を守り抜いていることだ。
SEを冠した車両は、3000形に続き、3100形「NSE(New Super Express)」、さらには7000形「LSE」、10000形「HiSE」、20000形「RSE」、50000形「VSE」、60000形「MSE」と送り出されてきた。頭の1文字は、「Graceful」のようにその車両を表すのにふさわしい単語が選ばれ、頭文字がつけられている。

一線を画する車両「EXE」「EXEα」

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1996年に登場した30000形「EXE(Excellent Express)」は、SEを冠していない特急用電車だ。箱根への観光客輸送ではなく、町田など中間駅への通勤客輸送を重視した設計になったがゆえ、一連のSEとは一線を画したのであった。

ロマンスカー7000形「LSE」引退

小田急電鉄ロマンスカー7000形「LSE(Luxury Super Express)」の引退が決まった。最新型ロマンスカー70000形「GSE(Graceful Super Express)」と交替で、2018年度第1四半期の早いうちに消えるという。
しかし、この引退は仕方ない。なにしろ7000形LSEは製造から37年も経過している。高速で走るから同じ世代の通勤電車より走行距離も長い。有料特急の第一線で30年以上も走り続けたことは奇蹟的だ。

2006年施行の「バリアフリー新法」の影響で歴代ロマンスカー最長稼働

2005年に展望室付きロマンスカーの新車として50000形「VSE(Vault Super Express)」が登場する。ここで本来は老朽化した7000形と置き換えるはずだった。しかし、10000形をリフォームして車いすに対応するには大がかりな改造が必要だ。そこで、10000形HiSEを先に廃車し、7000形LSEを延命させたほうが安上がりという判断となったようだ。こうして7000形LSEは歴代ロマンスカー車両のうちでもっとも長寿な車両となった。

2編成のうち「7003×11編成」を6月ごろに解体

小田急電鉄は15日、特急ロマンスカー・LSE(7000形)の「7003×11編成」を6月頃に解体予定と発表した。残る「7004×11編成」は営業運転を継続するが、新型特急ロマンスカー・GSE(70000形)の2編成目の導入後、2018年度中の引退を予定しているという。

GSEの運行とともに変わる小田急

小田急は、複々線化工事完了に伴い、3月に実施する大幅なダイヤ改正でも注目を集めている。運行本数を大幅に増やし、朝ラッシュ時の輸送力を4割強化することで、混雑率は現行の192%から150%程度まで下がる見通しだ。始発列車やロマンスカーも増発するため、座って通勤できる可能性も増えるという(「混雑ワースト3脱却、『小田急新ダイヤ』の威力」)。

ロマンスカーは観光列車と「座れる通勤列車」の両面を強化

来年3月中旬から営業運転が始まるGSEは、朝夕の通勤時間帯は通勤特急としての役割を担いつつ、展望席というロマンスカーの伝統を引き継いだ。小田急によれば、VSEはGSEと対になる二枚看板という位置づけだ。

私鉄各社で増える「座れる通勤列車」

京王電鉄

「京王ライナー」

夕夜間に京王八王子と橋本に下り毎時1本ずつ、平日は20~24時台、休日は17~21時台に運行する。座席指定料金は400円で、府中および京王永山以西から乗車する場合、座席指定券は必要ない。
今回は夕夜間の通勤ライナーとしての活用だが、「お客様の利用状況を分析し、朝の運行や高尾山口方面への運行も検討する」(同)と将来に向けて含みを持たせた。また、座席は「京王パスポートカード会員」となると、前日からの予約も可能で、ポイントもたまる

西武鉄道

「拝島ライナー」

「拝島ライナー」は着席ニーズに対応した有料座席指定列車として、3月10日から新宿線・拝島線で運行開始。40000系のロング・クロスシート転換車両を使用し、平日・土休日18~22時台に西武新宿発拝島行を毎時1本ずつ、計5本運行する。西武新宿駅・高田馬場駅から乗車する際、乗車券の他に指定券が必要で、小平~拝島間各駅までの指定料金は大人300円・小児150円。小平駅以降の停車駅では乗車券のみで利用できる。
40000系は2016年度に2編成、2017年度に4編成導入される。ロング・クロスシート転換車両(コンセント付き)であることに加え、10号車に設置された「パートナーゾーン」、長距離区間の運行に対応した4号車の車いす対応トイレなども特徴。第1・2編成では通路上に広告用デジタルサイネージを設置

「S-TRAIN」

S-TRAINは、平日、土休日ともに運行されており、いずれも、全席指定(着席保証)で、複数の会社線を直通運転するのは変わりないが、運行区間が全く異なる。平日は、所沢駅から、東京メトロ有楽町線の豊洲駅までを結んでおり、西武線沿線から着席して通勤したいビジネスパーソンを主なターゲットとしている。
とりわけネットユーザーにとって嬉しいのは、全席に電源が完備され、車内に「SEIBU FREE Wi-Fi」が飛んでいること。
また、客室内の中づり広告がなく、17インチディスプレイを2面横のデジタルサイネージ「Smileビジョン」になっているのも特徴的。さらに、車いすやベビーカー、大きな荷物のある乗客向けの「パートナーゾーン」を設け、新世代のバリアフリーを実現。
このほか、通勤用車両には珍しいトイレを4号車に設置、各車両にシャープ製プラズマクラスターを完備

「特急レッドアロー号」

西武鉄道では池袋~西武秩父や西武新宿~本川越を結ぶ「特急レッドアロー号」を運行。

東武鉄道

「特急リバティ」

浅草~館林間・浅草~会津田島(福島県)間を結ぶ「特急リバティ」
「特急リバティ」には車いす対応のトイレがついており、高級感漂う内装となっている。

「TJライナー」

池袋~小川町を結ぶ「TJライナー」
トイレのついていない「TJライナー」では、普通運賃のほか310~410円の「着席整理料金」が必要となる。

京成電鉄

「スカイライナー」

「イブニングライナー」と「モーニングライナー」を運行している。車両は「スカイライナー」と同じで、上野から成田空港までを結ぶ。出勤時と帰宅時にそれぞれ運行する、全席指定の「座れる通勤列車」だ。洗面所やトイレもついており、新幹線さながらの内装で、運賃は普通運賃に特急料金410円(以下、値段はいずれも大人料金)を加えた値段となっている。

京急電鉄

「モーニング・ウィング号」「ウィング号」

ネット上で「赤い彗星」との異名を持つ京浜急行電鉄では、出勤時の「モーニング・ウィング号」と帰宅時の「ウィング号」を運行。平日2本運行しており、神奈川県の三浦海岸から品川・泉岳寺を結ぶ。上大岡から品川はノンストップで運行している。乗車には普通運賃と、1ヶ月有効な「Wing Pass」(5500円)が必要だ。

南海電鉄・泉北高速鉄道

「泉北ライナー」

南海鉄道では泉北高速鉄道とともに「泉北ライナー」という、和泉中央から難波間を29分で結ぶ列車を運行している。普通運賃のほか、別途特急料金の510円が必要となっている。加えて、南海鉄道単体で「特急サザン12000系」も運行しており、なんばから和歌山港を結んでいる。座席指定料金として510円が必要だ。

京阪電鉄

「プレミアムカー」

京阪電鉄でも「プレミアムカー」を運行している。8000系特急車両の京都側から6両目に設けられている特別車両だ。区間は淀屋橋~出町柳間で、普通運賃にプレミアムカー利用料金として400~500円が徴収される。
主に特急で活躍する8000系車両の6号車(京都側から6両目)に「プレミアムカー」が連結され、早朝・深夜や朝ラッシュ時の一部を除くほぼ終日で利用できる。
座席はリクライニング可能な大型シートを2+1の3列でゆったり配置。大型テーブルや電源コンセントが設置され、パソコン利用や携帯電話の充電に便利だ。また、観光客に便利な荷物置き場、無料で利用できるWi-Fi設備のほか、微粒子イオンで空気を浄化する「ナノイー」発生装置など、いたれりつくせりの設備が自慢だ。
さらに、「プレミアムカー」には専属のアテンダントが乗車して利用客のお出迎えや見送り、観光案内などのサービスも提供。