特集2017年2月5日更新

熱狂的ファンも 「しまむら」好調の秘密は

苦境のユニクロを尻目に、同じファストファッション業界の「しまむら」が好調です。かつては「安い、ダサい」イメージもありましたが今や安さだけでなく機能・ファッション性の高さで大人気に。「しまラー」と呼ばれる熱狂的なファンまで生み出しています。しまむらの強さのヒミツに迫ります。

ファストファッション業界の「勝ち組」に

経常利益が2014年に大きく落ち込みましたが、2015年に回復。2016年も過去最高益を見込んでいます。

ファストリの失速とは反対に、「しまむら」の業績は好調です。16年2月期決算は、売上高は6.7%増の5,460億円、営業利益は8.4%増の399億円で増収増益です。続く16年3~8月期決算は、売上高は5.8%増の2,810億円、営業利益は40.6%増の251億円で増収増益です。17年2月期決算では過去最高益を見込んでいます。

好調の要因その1:多くのヒット商品

機能性に優れていると同時に、ファッション性も高い商品がヒットしました。

しまむらが大々的に売り出した機能性パンツの快進撃が続いている。昨年秋冬の「裏地あったかパンツ」の102万本のヒットを受け、今年の春夏商戦では従来より機能性を高めた「素肌涼やかデニム&パンツ」を展開。同社によれば、この2016年3月~8月に「デニム&パンツ」は94万本を売り切った。

好調の要因その2:斬新なコラボ商品展開

人気アニメ「おそ松さん」、「モンスターハンター」と「ぐでたま」のコラボ、その他人気ゲームやアニメのコラボTシャツを次々と販売しました。単なるキャラ商品ではなく、ファッション性が高く、好評だったといいます。

ファッション性が高い「コラボ商品」が業績を牽引しました。16年3~8月期では、「ハリスツイード×ディズニー」「ガールズ&パンツァー」「PHANTASY STAR ONLINE 2」「おそ松さん」「LOGOS DAYS×スヌーピー」「秘密結社 鷹の爪」「モンスターハンター×ぐでたま」「セガ」などとのコラボ商品を販売しています。コラボ商品は一例で、他にもファッション性のある商品を販売し、業績に大きく貢献しました。

好調の要因その3:希少性を出す販売戦略

企画だけでなく、販売戦略にも秘密がありました。

こうしたコラボ商品はあえて数量を抑えて販売したり、店舗を限定して販売したり、大々的な宣伝を行わずに販売したりしています。そうすることで希少性を演出し、消費者が店頭でコラボ商品を見つけた際の大きな驚きとなっています。そして、口コミの拡散を狙っています。
コラボ商品を見つけた人はSNSなどで拡散させます。事実、SNSでの反響の大きさから、「セガ」のコラボTシャツは追加販売されたほどです。巧みな販売戦略を行っているといえます。

「多品種少量」が基本だが…

「しまむら」はコラボ商品に限らず、多品種少量を基本としています。同業他社と比べて圧倒的に多い、1店舗に4~5万アイテムを展開しています。たとえば、あるアウターがあったとして、同じサイズ、同じ色のアウターは1店舗に1点しか置かないことになります。

その結果、売り切れるとその商品の補充をせず、常に新商品を投入し、売り場が常に新鮮な状態であるようにしているのです。ただ、あったかパンツやデニム&パンツなど「コア商品」にも注力するという手法に切り替えつつあるようです。

同社はこれまで低価格衣料を武器に業績を伸ばしてきたが、2013年度、2014年度と2期連続で減益に沈んだことから方針を転換。これまでの、多品種少量生産による売り切れご免型から、売れ筋をコア商品と位置づけ、注力するビジネスモデルに転換しつつある。

人気商品の“値上げ”で「安くてダサい」イメージを払拭

2013年~14年の減益を救った「裏地あったかパンツ」。従来の「しまむら」商品の相場より2000円も高い商品がヒットしたことで、それまでのイメージからの脱却しようとしています。

 回復の要因はヒット商品の出現と、オペレーションの見直しにあった。15年の秋冬シーズンに売り出した「裏地あったかパンツ」は、見た目は普通のパンツだが、裏地に起毛素材を使い重ね履きしないでも温かいというのが売りだ。これが、3900円という値付けで100万本以上売れた。通常の「しまむら価格」はパンツ類なら1900円なのだ。
 初めは、14年シーズンに2900円で発売しており、15年は3割=1000円値上げした。2900円でも高すぎるという声が社内にあったが、野中正人社長がこれを一蹴。高額の大型ヒット商品になった。

ロードサイド店中心から、都市部への出店も

これまで郊外中心だった立地も、都市部のスーパーやショッピングセンターへ出店が増えています。これは、今までの「安さ第一」から機能性とファッション性に優れた(比較的)高額の商品のヒットも後押ししているのかもしれません。

総合スーパー側から好条件の出店要請が舞い込むようになっており、着実に出店事例を積み重ねている。実際に上期に出店したしまむら10店のうち、4店舗がこうした業態への出店だった。今月10月13日にも船橋市の商業施設「ビビット南船橋」1Fに千葉県内最大級のしまむら店舗をオープンする予定だ。
しまむらは今期、グループ全体で約70店の出店を計画しているが、数年以内に年間100店舗までに引き上げる見込みだ。その際に、比率が高まるのが総合スーパーやショッピングセンターだ。「空いた区画は貪欲に取っていきたい、まさに全方位外交だ」(野中社長)。

さらなる成長へ新たな「値下げシステム」も導入か

在庫を少しでも減らすように、売れ行きの鈍った商品を自動で判断し、値下げするというシステムの導入が報じられているそうです。

売れ行きが不振の商品の値下げをITシステムが判断し、売れる価格に値引きし、販売期限までに売り切ることで収益を最大化させるようです。
衣料品は季節や天候の影響を強く受けるため一般的には販売期限があり、一定期間で売り切る必要があります。季節や天候の影響で急激に販売が落ち込むことがあります。そのため、売れ行きが思わしくない商品は早い段階で値引きを行い、売れる価格に設定して販売を促進する必要があります。

消費者の意識にも変化が?

「しまラーはオシャレ!」がステイタス化

価格の割に機能性が高く、またファッション性も追求しているとあって、「しまむら」を着こなす「しまラー」はファッションセンスがある、とみなす風潮も出てきているようです。

そして2位が近年人気急上昇中の『しまむら』。『しまむら』を愛用してお洒落に着こなす人を指す“しまラー”という言葉も流行しましたよね。安価な服をお洒落に着こなせるということが、センスやルックスの良さの証とみなされ、ステイタス化している部分もあるようです。

ファストファッション=「ダサい」は3%以下

11,546件の回答者を集めた「『ファストファッション』に関するインターネット調査」による意識調査によると、ファストファッションのイメージは「庶民的」「無難」が多数派で、「ダサい」「高級感」「大人向き」が少数派の意見となっています。

ファストファッションブランドの服のイメージは、「庶民的」「無難」が3~4割、「ベーシック」「機能的である」「若者向き」が1割台です。一方、「ダサい」「高級感がある」「大人向き」「派手」「機能的でない」は、3%以下と少なくなっています。「庶民的」「トレンド・流行を取り入れた」「ベーシック」は、女性が男性を10ポイント以上上回ります。「機能的である」は、女性50代以上で比率が他の層より高くなっています。

最頻購入ブランドの購入理由は「価格が割安である」が7割近く。圧倒的な「購入しやすさ」に対してのマイナス要因となるネガティブイメージが少なくなってきているように感じます。

オシャレに手軽さを求める傾向も

近年若者の間でみられるおしゃれに対する意識・価値観の変化に関する調査によると、24才以下女性で「積極的におしゃれしたい」意識が大幅に低下しているとの結果が出ました。これは、ファストファッションの浸透が関係しているのではないか?と分析されています。

直近5年で「積極的におしゃれをしたい」は低下傾向。2011年には24才以下の女性の約半数が「積極的におしゃれをしたい」と回答していましたが、2015年では3割以下にまで下降しています。おしゃれへの関心が最も高い層の意識が「積極的におしゃれ」から「ある程度はおしゃれ」にシフトしていることがわかります。
現在は、ユニクロ、GU、しまむら、H&Mといったファストファッションが浸透し、低価格で高品質なものが手軽に手に入る環境です。積極的におしゃれをしようと思わなくても、ある程度はおしゃれにできてしまう環境も「積極的におしゃれをしたい」意識の低下に影響していると思われます。

「ファストファッションしか買わない」という人も

中にはファストファッションオンリーという人も。
・会社がスーツで、休日がファストだから、それ以外は必要ない。買わない。(男性47歳)
・最近はファストファッションブランドの服しか買ってないので、使い分けはしてない。(男性56歳)
・ファストファッションの服を着られない場面はほとんどない。(女性19歳)

しまむらをはじめとする業界が機能性・ファッション性の向上に努めた結果、上記のアンケートで分かる通り、ファストファッションへのネガティブなイメージが減少。結果、ファストファッションに対する「抵抗感」もなくなっているようです。

しまむらでコーディネート

激安だけど「安っぽく見せない」着こなし術

女の子たちの毎日をちょっとおしゃれにするメディア「closet」がしまむらの着こなし術を紹介しています。

大人が激安アイテムを使うときに気になるのは、やっぱり安っぽく見えてしまうことなのではないでしょうか?
そこで今回は、しまむらの激安アイテムを使って“高見え大人カジュアル”を作る方法をご紹介。

基本は「1.デニムはかっちりアウターで格上げ」「2.トレンドアイテムを一点投入」「3.ブラウンを取り入れる」の3つ。詳しくは本文を!

女子力アップするしまむらトップス

今季のしまむらは、男性ウケ抜群のトップスが数多く揃っているようです。
ワードローブに追加して、とびっきり可愛いモテコーデに仕上げてみませんか?

「くすみピンクのスウェット」「フェザーニットのロングカーディガン」「ゆるニット」を推薦していますが、しまむらの在庫は切れるのが早いのでお早めに。

抑えておきたい、しまむらアウター

アイテム数が豊富なのがしまむらの魅力の1つですが、いざお買い物に行くとどれが役立つのか迷ってしまいますよね……。
そこで今回は、しまむらの2大ヒットアウターをご紹介。

というわけで、絶好調のしまむら。販売戦略のさらなる転換や、ファッション性・機能性もまだ「伸びしろ」がありそうなので、さらなる飛躍が見込めそうです。