特集2016年12月17日更新

どうなる北方領土?プーチン大統領訪日特集

「日ソ共同宣言」からちょうど60年、ロシアのプーチン大統領が12月15~16日に訪日しました。焦点は平和条約の締結、そして北方領土問題。今回の訪日の模様とそれに関する一連の話題をまとめてみました。

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ロシア反体制派ナワリヌイ氏死亡 プーチン氏に「忖度して殺害」の可能性も

ニッポン放送 NEWS ONLINE / 2024年2月19日 11時35分

慶應義塾大学教授の廣瀬陽子氏が2月19日、ニッポン放送「飯田浩司のOK!Cozyup!」に出演。ロシア反体制派指導者のアレクセイ・ナワリヌイ氏の死亡について解説した。 [全文を読む]

12月15~16日にプーチン大統領訪日。会談内容は

北方4島での共同経済活動

交渉を開始することで合意

安倍晋三首相とロシアのプーチン大統領は16日、2日間にわたる首脳会談を終え、60以上にわたる経済協力事業を進めることで合意した。一方で、日本が最重要課題に位置付ける領土問題に関連して一致したのは、4島における共同経済活動に向けた交渉の開始のみ。

日ロ間のみに創設される「特別な制度」の下で行うことに

首相は会談後の記者会見で、共同経済活動に関し「特別な制度について交渉を開始することで合意した」と説明。領土問題については「解決にはまだまだ困難な道が続く」と認めた。プーチン氏は「共同経済活動を実現することで平和条約締結に向けた信頼が醸成される」と述べた。 

北方領土の帰属問題

領土問題自体は実質的な進展なし

4島の帰属問題では実質的な進展はなかったとみられる。活動の制度設計は今後の協議に委ねられるが、実現した場合でも、領土問題解決につながるかは不透明だ。
一方で、日本が最重要課題に位置付ける領土問題に関連して一致したのは、4島における共同経済活動に向けた交渉の開始のみ。
まずは両国の信頼を醸成し、その上で領土問題の解決と平和条約の締結につなげようとするもので、ようやく出発点に立った格好だ。

安倍首相「まだまだ困難な道は続く」

今回の会談の成果については「領土問題の解決にはまだまだ困難な道は続く。今回まずはしっかりした大きな一歩を踏み出すことができた」と位置づけた。

プーチン大統領「歴史のピンポンはやめよう」

ロシアのプーチン大統領は16日、首相公邸での記者会見で、日米安保条約を念頭に「(北方領土について)議論する際は、ロシアの懸念を日本に考慮してほしい」と述べた。
大統領は領土問題に関し、「歴史のピンポン(卓球のようなきりのないやりとり)をやめる必要がある」と述べ、最終的な問題解決に向けて努力する必要性を訴えた。

日本人が訪問する際は規制緩和の可能性も

来日中のロシアのプーチン大統領は16日、日本との領土問題で議論されている島々を日本国民が訪問する際、規制を緩和する可能性を示唆した。

島民「がっかり」「期待はずれだ」

16日に終わった日ロ首脳会談で、北方領土返還に関する内容は明らかにされず、今度こそという思いで見守った元島民は「がっかりだ」「2島もだめなのか」と口々に落胆の声を漏らした。
「期待はずれだ」。歯舞群島・多楽島で生まれた武隈聡さん(73)=北海道根室市=は、共同記者会見の内容に「今回こそと信じていたが、歯舞、色丹すらだめとは本当にがっかりだ」と悔しがり、「この先の経済協力が最初の一歩なら解決はいつになるのか」と語気を強めた。

平和条約

共同経済活動が「締結に向けた重要な一歩」

16日午後の共同会見で公表した声明には、共同経済活動と平和条約締結を結びつける表現を盛り込んだ。安倍首相は「互いにそれぞれの正義を何度主張しあっても解決できない」としたうえで、「新しいアプローチ、未来志向のアプローチこそが最終的な結果に結びつく道と確信している。平和条約締結に向けた重要な一歩だ」と語った。
プーチン大統領は共同会見で経済協力について多くの時間を割きつつも、平和条約についても言及。「共同経済活動のための特別な制度というメカニズムのもと、最終的な平和条約締結に近づけるようにもっていくことが大事だ」と語った。

専門家は「時間はない」と指摘

国際政治が専門の拓殖大学の川上高司教授は、「まさに入口に立ったというところ。時間はかかるだろう」と指摘。一方で、「それほど時間はない。安倍首相とプーチン大統領がいるうちに解決する必要があるし、(トランプ次期大統領の)米国とロシアが接近する前に話をどんどん進める必要がある」と語った。

経済協力プラン

福島原発廃炉・地下資源探査事業などの協力で合意

日本とロシアは、プーチン大統領の訪日に際し、8項目の経済協力プランの具体化として、東電<9501.T>福島第1原発廃炉に向けた協力や、石油・ガス等の地下資源探査事業の協力など数十項目について、覚書を交わした。日本政府が16日に発表した。

日本側の経済協力は総額3000億円規模

日本側が提案した8項目の経済・民生協力プランに基づき、政府間で12件、民間レベルでは60件を超える協力案件で合意。民間を含めた日本側の協力は総額3000億円規模に上る。

民間企業の提携協力

68件の資本業務提携・協力関係で合意

日本とロシアの民間企業は、プーチン・ロシア大統領の訪日に合わせ、資本業務提携・協力関係で合意したことを明らかにした。日本経団連が16日、68件の項目を公表した。
これらの項目のなかには、「三井物産<8031.T>とガスプロムとの戦略的協力に関する協定書」、丸紅<8002.T>とノバテックによる「新規LNGプロジェクト開発、LNG・石油製品取引等に関する協力覚書」などが含まれている。

安全保障協力

外務・防衛担当閣僚協議「2プラス2」再開で一致

ロシア側によると、安全保障協力では外務・防衛担当閣僚協議(2プラス2)の再開で一致した。2プラス2は、13年11月に初めて開催したが、ロシアのクリミア編入で中断していた。首相は記者団に「国際的な課題についてロシアが建設的な役割を果たすことの重要性を確認した」と説明。北朝鮮やシリア情勢などについても意見を交わした。

ただ、次回会合は決まらず

2プラス2の次回会合については「具体的なことは決まっていない」(野上官房副長官)という。

16日夕方、帰国

日ロ首脳会談のために来日したロシアのプーチン大統領は一連の日程を終え、16日午後7時ごろ、特別機で羽田空港から帰国の途に就いた。

訪日中のトピックス

「遅刻魔」プーチン大統領、本領発揮

予定より約2時間半遅れで到着

15日の日ロ首脳会談で、ロシアのプーチン大統領の特別機は当初予定より約2時間40分遅れて山口宇部空港に着陸した。大統領は今月2日にサンクトペテルブルクで行われた岸田文雄外相との会談にも約2時間遅れで臨んでおり、日本側が振り回される展開が続いている。

プーチン大統領は「遅刻魔」として有名

プーチン大統領は世界の要人との会談に遅れる「遅刻魔」として有名。英紙ガーディアンによれば、大統領は2013年のフランシスコ・ローマ法王との初会談に約50分遅刻。12年にはモスクワを訪れたケリー米国務長官を3時間待たせた。03年にはエリザベス英女王との会見に遅れたことがある。13年に大統領と離婚したリュドミラ元夫人は「私は決して遅れないが、彼はいつも遅れ、平均で1時間半だった」と語っていた。

「意図的な戦術」との見方も

大統領の遅刻には、相手をいら立たせ、会談の主導権を握りたいという思惑ものぞく。「プーチン氏が時間通りに来ることは少ない」(日本政府関係者)との認識から、日本側もある程度こうした事態を想定していたとみられるが、北方領土問題を含む平和条約締結交渉の前進を目指し「じっくり交渉したい」とする安倍晋三首相が出はなをくじかれたのは間違いない。

実際に説明された遅刻理由は「シリア問題への対応」

ペスコフ大統領報道官は15日、記者団に「シリア問題への対応」などで遅れたと説明。日本政府関係者には「遅延で会談が短くなることもなく、しっかりとした議論を行っていると考えている」と釈明したという。

日本側の反応は…

安倍晋三首相との会談で優位に立つための意図的な戦術との見方に対しては「そういうことは全くないと思う」との認識を示した。

2日目も遅れる…

一方のプーチン大統領がホテルを出発したのは予定より50分遅れの10時30分。昼前に山口宇部空港に到着した。ところが今度は、大統領特別機がエンジントラブルを起こして飛行不能に。プーチンは帯同していた予備の特別機に11時40分に乗り込んだものの、離陸準備に手間取り、ようやく正午ごろ東京に向かって出発した。

秋田犬「ゆめ」とシベリア猫「ミール」も話題に

「ゆめ」は2012年に秋田県知事からプーチン氏に贈られた雌の秋田犬

ゆめは生後3か月の12年7月、東日本大震災の復興支援へのお礼として秋田県の佐竹敬久知事からプーチン氏に贈られた。14年にロシア南部ソチで行われた日露首脳会談では、安倍首相を出迎えるなど、「大統領の愛犬」として存在感を示している。

シベリア猫「ミール」の近況にも注目が集まることに

秋田県がロシアに贈った秋田犬「ゆめ」の元気な姿が話題になっているが、ロシアが秋田県に贈ったシベリア猫「ミール」はどうしているだろうか。県に尋ねたところ、近いうちにまた最新の動向を公開するそう。

今回の夕食会でも、ゆめの話題で盛り上がる

夕食会の途中、プーチン大統領が「日本政府(安倍政権)が力強く残るように乾杯したい」と提案したのに対し、首相は、前日14日に野党が提出した内閣不信任決議案が「圧倒的多数で否決された」と応じた。
すると、プーチン大統領はテーブルに置かれた犬のミニチュアを手にし、「もしまたそういうことがあれば、私は『ゆめ』を連れてきます」と述べ、笑いを誘った。

2頭目の秋田犬贈呈を計画していたが…

菅義偉官房長官は3日、今月来日するロシアのプーチン大統領に秋田犬を贈るためロシア政府と交渉していることを明らかにした。

ロシア側が断ったともよう

台湾・中央通訊社によると、日本政府が15日からのプーチン・ロシア大統領の来日に合わせて調整していたオスの秋田犬の贈呈が見送られることになった。ロシア側が断ったもようだ。

訪日前

プーチン大統領が語る、日ロ関係

ロシアのプーチン大統領は13日、モスクワのクレムリン(大統領府)で読売新聞・日本テレビとのインタビューに応じた。その中からいくつか抜粋する。

「我々は平和条約の締結をめざす」

100年以上にわたる両国関係の歴史全体を見ると、この60年、我々の関係にはさまざまなことがあった。悲劇的な局面もあった。国交を回復した1956年以来、残念ながら両国間の協力において、我々の今日の希望に沿った適切な関係を築くことができる基礎はまだない。我々は世界、極東地域におけるパートナーだが、平和条約がまだないため、両国関係を多面的に進展させることができない。
だから、当然、我々は平和条約の締結をめざす。我々は完全な関係正常化を求めている。ロシアと日本との間に平和条約がないことは、過去から引き継がれた時代錯誤だ。時代錯誤は解消されるべきだ。しかし、どのように解消するかは難しい問題だ。

「(4島問題は)共同宣言とは別の話だ」

「共同宣言」は平和条約締結後に歯舞、色丹の2島を「引き渡す」と明記する。
日本はこの2島に国後、択捉を加えた4島の帰属問題を解決し、平和条約を締結するとの立場だ。
プーチン氏は、4島の帰属問題の提起は「共同宣言の枠を超えている。全く別の話で別の問題提起だ」と述べ、受け入れられないとの考えを強調した。

「日本が我々を拒否した」

日本側が我々との接触を拒否した。これが第一だ。第二は、日本はロシアに対する制裁に加わった。制裁を受けたまま、経済関係をより高いレベルに進展させることができるのだろうか。私は今、日本は何ができたか、何をするべきだったかと評価したくない。それは私ではなく、日本の指導部のやるべきことだ。
しかし、日本が(米国との)同盟で負う義務の枠内で、露日の合意がどれぐらい実現できるのか見極めなければならない。日本はどの程度、独自に物事を決められるのか。我々は何を期待できるのか。最終的にどのような結果にたどり着けるのか。

「(8項目の経済協力プランは)雰囲気作りだ」

――大統領はこの8項目の経済協力プランについて、平和条約締結のための唯一の正しい道だと述べた。この8項目の経済協力プランは今、その平和条約締結の条件としては、最も重要だと考えているのか。

プーチン ご存じの通り、これは条件ではない。これは、必要な雰囲気作りだ。我々は中国と、中国の友人たちと、国境問題について40年交渉してきた。40年だ。露中関係でも国境問題があった。しかし、我々は今、露中関係を戦略的パートナーシップに位置づけている。しかも特権的な戦略的パートナーシップだ。ロシアには中国との間でかつて、これほどの信頼関係はなかった。

「日本はどこまで踏み出せるのか」

中国との貿易額が最も大きく、通商関係もどんどん自由化している。ところが、日本は我々に対して経済制裁を科した。あなた方は、この違いが分かるのか、分からないのか。
日本はなぜ、ウクライナやシリアの問題を露日関係に結びつけるのか。日本には同盟関係上の何らかの義務がある。我々はそのことを尊重するのはやぶさかではないが、我々は日本がどのくらい自由で、日本がどこまで踏み出す用意があるのか理解しなければならない。日本がどこまで踏み出すかを明らかにすることが必要だ。これは二義的な問題ではない。平和条約署名という最終合意のために、なにを両国間の基礎とするかによって、結果は違ってくる。これが、現在の露日関係と露中関係の違いだ。なにも比較しようとしているのではない。

北方領土問題には消極的なプーチン大統領

「日ソ共同宣言」の2島返還についての言及箇所

9 日本国及びソヴィエト社会主義共和国連邦は、両国間に正常な外交関係が回復された後、平和条約の締結に関する交渉を継続することに同意する。
ソヴィエト社会主義共和国連邦は、日本国の要望にこたえかつ日本国の利益を考慮して、歯舞群島及び色丹島を日本国に引き渡すことに同意する。ただし、これらの諸島は、日本国とソヴィエト社会主義共和国連邦との間の平和条約が締結された後に現実に引き渡されるものとする。

「日ソ共同宣言」とは?

1956(同31)年10月19日、ソ連モスクワで日本の鳩山一郎首相とソ連ブルガーニン首相が日ソ共同宣言に署名しました。共同宣言の主な内容は「日ソ戦争状態の終了」、「外交・領事関係の回復」、そして「平和条約締結交渉の継続」と「平和条約締結後の歯舞群島・色丹島の日本への返還」です。

日本に譲歩を求めるプーチン大統領

安倍首相と15、16日に会談するプーチン氏は「チャンスはある。パートナー(日本)の柔軟性にかかっている」と述べ、平和条約の締結とその前提となる領土問題では日本側の譲歩が必要との考えを示した。
「共同宣言」は平和条約締結後に歯舞、色丹の2島を「引き渡す」と明記する。
日本はこの2島に国後、択捉を加えた4島の帰属問題を解決し、平和条約を締結するとの立場だ。
プーチン氏は、4島の帰属問題の提起は「共同宣言の枠を超えている。全く別の話で別の問題提起だ」と述べ、受け入れられないとの考えを強調した。

2島引き渡しも認めつつも「条件は明記されていない」

ただ、最近のプーチン氏は同宣言について、「2島引き渡しの時期や条件、その後の主権は記されていない」と重ねて発言。「2島」返還ですらも細部は決まっていないと主張し、交渉のハードルを引き上げてきた経緯がある。訪日前のインタビューでも、北方四島の帰属問題は「共同宣言の枠を超えた全く別の話だ」と一蹴してみせた。

平和条約締結の条件に「北方領土の共同経済活動」を上げるプーチン大統領

その信頼を基礎として、平和条約締結への準備について合意すべきだ。それは、例えば、南クリル諸島(北方領土)における大規模な共同経済活動の結果として達成することができるかもしれない。
また純粋に、人道的な問題を解決することによって達成できるかもしれない。例えば、南クリル諸島の元島民がビザなしで昔の居住地を訪ね、墓参りをし、故郷を訪れることなどだ。
それは我々が検討し、一つ一つ解決する大きな問題のパッケージだ。2000年に交渉が再開された後、我々は平和条約の締結に向けた交渉を拒否したことはない。

ロシア当局も「北方領土問題は解決しない」

ロシアの政府当局者らは13日、プーチン大統領の訪日で北方領土問題が解決することはないとした上で、商業案件に焦点を当てるよう提案した。

北方領土問題に関しては強気な発言繰り返してきたロシア歴代指導者

安倍晋三首相とロシアのプーチン大統領による15、16両日の日ロ首脳会談では北方領土問題を含む平和条約締結交渉が主要議題となる。日本側は問題解決に向けた進展を目指すが、ソ連(当時)やロシアの指導者は領土問題で強硬発言を繰り返してきた。「一寸たりとも渡さない」(メドベージェフ首相)と強気な姿勢のロシアから譲歩を引き出すのは容易ではない。

翻弄され続けてきた北方領土交渉の歴史

最初は1956年10月、鳩山一郎内閣の「日ソ共同宣言」だ。同宣言で旧ソ連との戦争状態の終結と外交関係の回復が決まり、平和条約締結後に、「歯舞、色丹の2島を日本に引き渡す」ことが盛り込まれた。しかし、米国の横槍が入る。元外務省国際情報局長・孫崎享氏の解説。
「米国のダレス国務長官が重光葵・外相に『日本が国後、択捉をソ連に帰属させる(=歯舞、色丹の2島で合意する)なら、米国は沖縄を返還できない』と警告した。世にいう“ダレスの恫喝”です。

領土問題を「時効」にするな

日本を取り巻く大国間の力関係、そして日ロの国内情勢をよく見るならば、領土問題を今すぐ最終解決できないことは、誰でも分かる。だからと言って島を放り出したり、ロシアと敵対したりしてはいけない。大事なのは、領土問題を「時効」に持ち込ませないこと、そして対ロ関係で日本のためになるものは活用することを肝に銘じつつ、前向きに付き合っていくことだ。

北方領土を「金で買い取る」なら数兆円?

政界には、「北方領土は沖縄県の全部の島を合わせた面積の2倍以上ある。沖縄の返還コストと比較すると少なくとも1兆~2兆円の経済協力は必要ではないか」という声もあるが、果たしてそんな金額で収まるかどうか。

ロシア通信局東京支局長「2島返還は100%あり得ない」

まず、はじめにハッキリ言っておきましょう。「北方2島の返還」という日本側の要求が実現する可能性については100%あり得ません。それと、細かなことですが、この問題に関してロシア側では「返還」という言葉は使いません。「引き渡し」です(笑)。
先ほど、ロシア人の大多数はミズーリ州の位置を知らないと言いましたが、南クリル(日本側が言う「北方領土」)に対する日本側の要求については全員が知っていると言ってもいい。それほどロシアでは関心が高く、南クリルの領有は“強いロシア”の象徴と考えられているのです。その領土を、たとえ日本側からの経済協力がどれほどオイシイものであったとしても、“強いロシア”を体現するプーチン大統領が手放すことは、どう考えてもあり得ません。

「8項目の経済協力プラン」とは

ア)プーチン大統領から経済分野をはじめ幅広い分野での協力への関心が示され,安倍総理から,我が国として日露経済交流の促進に向け作業を行っていることを紹介し,8つの項目(下記注)からなる協力プランを提示した。プーチン大統領から高い評価と賛意が表明された。
(注)(1)健康寿命の伸長,(2)快適・清潔で住みやすく,活動しやすい都市作り,(3)中小企業交流・協力の抜本的拡大,(4)エネルギー,(5)ロシアの産業多様化・生産性向上,(6)極東の産業振興・輸出基地化,(7)先端技術協力,(8)人的交流の抜本的拡大

プーチン大統領はこの協力プランは「条件ではなく雰囲気づくり」

対露制裁中にもかかわらず安倍首相がプーチン氏に提案した極東開発や医療、都市開発といった「8項目の経済協力プラン」については「(平和条約締結のための)条件ではない。雰囲気づくりだ」と位置付けた。同プランに基づき経済協力が進んでも、それがすぐに平和条約の締結に結びつくと期待してはならないとのシグナルだ。

「ラストチャンス」焦る元島民

終戦直後には4島で計約1万7300人いた住民は、今年3月末で3分の1の約6300人まで減少。平均年齢も81.3歳と高齢化が進む。脇さんは「(領土問題は)外交交渉だから難しい。これまでも期待だけで終わり、疑心暗鬼になることもある。だが、今回が駄目だとしたらいつなのか。ラストチャンスに近い」と焦りを募らせる。

ロシア側は終始マイペースな印象でしたね。領土問題はまだまだ解決に時間がかかりそうです。今回の会談で日ロの関係はどう変わっていくのでしょうか。

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