情報BOX:国家樹立や入植活動、イスラエル・パレスチナ間の消えぬ火種
ロイター / 2023年10月11日 15時53分
10月10日、イスラエルとパレスチナ自治区ガザを実効支配するイスラム組織ハマスの大規模戦闘勃発で中東情勢が再び緊迫している。写真は10日、イスラエルの攻撃を受けたガザ地区から上る黒煙(2023年 ロイター/Mohammed Salem)
[10日 ロイター] - イスラエルとパレスチナ自治区ガザを実効支配するイスラム組織ハマスの大規模戦闘勃発で中東情勢が再び緊迫している。イスラエルとパレスチナは70年もの間、周辺国も巻き込み衝突を繰り返してきた。地域全体を不安定にさせる火種はなお残る。
<衝突の根本原因は>
イスラエルはナチスドイツによるユダヤ人迫害を経て1948年に建国。パレスチナ人はイスラエルの誕生をナクバ(大惨事)と嘆き、国家樹立を阻まれたとしている。
建国直後の第1次中東戦争でパレスチナ人約70万人が難民となってヨルダンやレバノン、シリアなどに離散したが、イスラエルはパレスチナ人を居住地から追い出したという見方を否定し、建国翌日に周辺のアラブ5カ国から攻撃を受けたと指摘。49年の休戦協定で戦闘は停止したが、正式な和平は成立していない。
周囲のアラブ諸国と長年敵対関係にあったイスラエルは安全保障を追い求めてきた。これに対し、パレスチナ側は独立した国家の樹立を一貫して主張し、これが対立の原因となってきた。
<過去の大規模戦争>
イスラエルは67年の第3次中東戦争でヨルダン川西岸、東エルサレム、ゴラン高原などを占領下に置いた。73年の第4次中東戦争はエジプトとシリアがユダヤ教の神聖な日「ヨム・キプール」に合わせてイスラエルを奇襲して始まった。イスラエルは3週間で両軍を押し返した。
イスラエルは82年にレバノンに侵攻。包囲されたパレスチナ解放機構(PLO)はレバノンから撤退した。2006年にレバノンのイスラム教シーア派民兵組織ヒズボラがイスラエル人兵士を拘束し、イスラエルが報復したことから戦争が再び勃発した。
05年にイスラエルはパレスチナ自治区ガザから撤退。しかし、ガザではイスラエルによる空爆とパレスチナ人によるロケット弾発射の応酬激化が繰り返し起きている。 パレスチナ住民の反イスラエル闘争(インティファーダ)も1987─93年、2000─05年の2度起きている。
<和平交渉>
1993年にイスラエルのラビン首相とPLOのアラファト議長がイスラエルとパレスチナの互いの生存権を認める「オスロ合意」に署名、パレスチナ自治政府の設立につながった。
ただ、2000年に米キャンプデービッドで開かれたクリントン米大統領、イスラエルのバラク首相、アラファト議長の交渉は決裂し、正式な和平協定は結ばれなかった。
02年にアラブ側が、占領地からのイスラエル撤退やパレスチナ国家樹立などを条件にアラブ諸国によるイスラエルとの関係正常化を提案。
ただ、14年にイスラエルとパレスチナがワシントンで開いた協議が不調に終わってからは、和平交渉が停滞している。
<和平努力の現状は>
バイデン米政権はイスラエルとサウジアラビアとの関係正常化を含む中東問題の「一括解決」を目指している。一部のアラブ諸国は既にイスラエルと国交正常化合意を結んでおり、今回のハマスとの戦闘はサウジも含め、アラブ諸国にとって外交的に厄介なものだ。
<イスラエルとパレスチナ間の主な懸案は>
パレスチナを独立国家として認め、イスラエルと共存する「2国家解決」やイスラエルが占領地につくった入植地、エルサレムの地位、難民の扱いを巡り双方が主張を譲らない状況が続いてきた。
ハマスは2国家解決を拒否し、イスラエルを破壊すると宣言している。イスラエルはパレスチナ国家の非武装化を要求している。
イスラエルによる占領地での入植活動は大半の国が違法と見なしている。イスラエルは宗教などの理由を挙げて正当性を主張し、入植地を拡大してきた。
パレスチナ人はイスラム教とユダヤ教双方の聖地がある東エルサレムを首都とする国家樹立を求めている。イスラエルはエルサレムが同国の「不可分で永遠の首都」としている。
パレスチナ人は長年、難民の帰還を認めるよう要求してきた。イスラエルはパレスチナ難民の国内再定住は認めない立場を示している。
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