アングル:不倫口止め事件裁判、トランプ氏選挙戦に追い風の理由
ロイター / 2024年4月17日 11時47分
4月16日、 トランプ前米大統領が1年余り前、不倫相手への口止め料の支払いに関する業務記録改ざんの疑いで起訴された出来事は、結果的に同氏の選挙戦に弾みをつける役割を果たした。写真は同日、ニューヨーク州最高裁に出廷したトランプ氏。代表撮影(2024年 ロイター)
Tim Reid
[16日 ロイター] - トランプ前米大統領が1年余り前、不倫相手への口止め料の支払いに関する業務記録改ざんの疑いで起訴された出来事は、結果的に同氏の選挙戦に弾みをつける役割を果たした。大統領選の共和党候補指名争いでライバルたちに対するリードを大きく広げ、そこで築いた圧倒的に優位な態勢は一度も揺らいでいない。
そして15日にニューヨーク州地裁で開かれたこの事件の初公判も、大統領選においてトランプ氏を勢いづかせることになる、というのが一部の専門家や政治ストラテジストの見方だ。
世論調査に基づくと、共和党員の約3分の1はトランプ氏に有罪判決が下されれば票を投じないもよう。ただ多くの法律専門家によると、不倫口止め疑惑に絡む事件の裁判は、トランプ氏が直面している合計4件の刑事訴訟の中で最も起訴の妥当性が弱いとみなされるという。
トランプ氏は今回の裁判を、選挙戦で支持者に発信するメッセージの中核部分を裏付ける材料として利用してきた。それはつまり「民主党の味方をして共和党員に差別的な扱いをする二重基準の司法制度の犠牲者が自分であり、バイデン大統領が選挙戦から自分を追い出そうとしている」という内容だ。
法廷に入る前にトランプ氏は「これは政治的な迫害だ」と改めて強調。同氏の陣営は、陪審員選任手続きが始まる中で支持者へ献金を要請するため「バイデンの私に対する裁判が始まった。あなた方はやつらに狙われている。私だけがやつらの前に立ちはだかる存在だ」とのメッセージを送った。
実際にはこの裁判は州レベルで行われており、バイデン政権は関与していない。司法省は、トランプ氏が連邦レベルで起訴されている私邸への機密文書持ち出し事件と2021年の議会襲撃事件についても、政治的な偏見なしに手続きを進めていると強調している。
一方、不倫口止め疑惑に絡む事件の裁判について、カリフォルニア大学ロサンゼルス校法科大学院のリック・ハセン教授は、トランプ氏が支持者に向けてどちらに転んでもアピールできる態勢を確保していると指摘する。「トランプ氏は有罪判決が出れば、ディープステート(闇の政府)や司法と自分が対決する構図を示す新たな証拠だと言い張り、無罪になれば勝利宣言するだろう」という。
トランプ氏が20年の大統領選結果を覆そうとしたことに批判的なハセン氏は、今回の裁判が「非常に些細な」問題のため、トランプ氏が抱える他の刑事裁判の重大性までもが薄められてしまう恐れがあると懸念している。
<起訴の根拠>
昨年3月に不倫口止め疑惑に絡む事件でトランプ氏が起訴された後、多くの共和党員は同氏を支持し、起訴は不当だとの見方を示した。当時のロイター/イプソス調査でも、共和党候補指名争いでトランプ氏に支持率で最も肉薄していたフロリダ州のデサンティス知事との差は、逆に14ポイントから26ポイントに拡大。起訴から1週間でトランプ氏の陣営が集めた選挙資金は1300万ドルを超えた。
共和党ストラテジストのジョン・フィーヘリー氏は「この裁判がトランプ氏の追い風になるのは間違いない。4つの刑事訴訟の中では(根拠が)最も脆弱で、あからさまな党派性が見て取れ、大半の共和党員はこれを無党派層と同じ視点でとらえている。無党派層は公正なプレーを好み、この起訴は公正なプレーではない」と述べた。
フィーヘリー氏はデサンティス氏を支持していたが、11月の大統領選ではトランプ氏に投票するという。
ニューヨーク州では業務記録改ざんは軽犯罪だが、検察側はトランプ氏が選挙妨害や脱税など別の犯罪を隠す目的で改ざんしたことで重罪に該当すると主張している。
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