ANAの新ブランド、AirJapanの機内が快適すぎてヤバかった
ASCII.jp / 2024年2月14日 7時30分
2月9日、生まれたてほやほやの「AirJapan(エアージャパン)」の初便が成田国際空港からタイ・バンコクのスワンナプーム国際空港へ向けて出発しました。AirJapanはANAグールプの新しい中距離国際ブランドで、今回はその初便へ搭乗取材の機会を得たため、早速レポートしていきたいと思います。(10万円で東南アジア旅レポートの続編は後日、掲載予定です)。
AirJapanは、ANAグループのメインブランド「ANA」とLCCブランド「Peach Aviation」に続く第三のブランドとして誕生しました。中距離国際線の運航を担当し、一般的なジャンルとしてはLCCに分類されますが、運航する「エアージャパン」はFSC(フルサービスキャリア)とLCCの両サービスのメリットを兼ね備えた「ハイブリッドエアライン」と位置づけています。
運航会社のエアージャパンは、ANAの国際線チャーター便を担当する子会社として1990年に設立され、成田空港を拠点にアジア路線を運航しており、機体のデザインやCAさんの制服などはANA便と同じですので、エアージャパン運航と気づかずに乗っていた人も多いかもしれません。
今回、新たに「AirJapan」というブランドでの運航がスタートしたわけですが、引き続きANAブランドの運航も担い、エアージャパンに所属するCAさんなどのクルーも、AirJapanとANA両方の業務をすることになります。搭乗するブランドによって制服を着分けるなど、このあたりも「ハイブリッド」なエアラインと言えます。
飛行機の尾翼には「r」と「J」をイメージしたロゴ CAさんは藍色と曙を合わせた制服です
使用する機材はANAが運航していたボーイング787-8型機を改修して使用。外装は白をベースにブランドカラーの藍色と曙色が使われ、尾翼にはAirJapanの「r」と「J」をイメージしたロゴがある専用のデザインに塗装されています。原稿執筆時点では1機のみ(JA803A)ですが、4月に2号機を導入予定で、今後6〜7機に増える予定とのことです。
(次ページ:記念すべき初フライトはバンコク行き)
記念すべき初フライトはバンコク行き 約7時間のフライトに旅立ちます
記念すべき初便となるNQ1便は成田空港を17時55分に出発し、バンコクのスワンナプーム空港には23時15分に到着するルートです。復路のNQ2便はバンコクを0時15分に出発し、成田空港へは日本時間の8時10分に到着。NQ1便は火曜日以外、NQ2便は水曜日以外の週6便というスケジュールになっています(3月31日以降は週7便となりフライト時刻も若干の変更あり)。筆者がプレスツアーとして参加した2月9日の初便では、使用する51番ゲート付近で記念式典が開催され、初便を祝うにふさわしい華やかさでした。
結論から言うと、全席エコノミークラスでも快適 近年でトップクラスの座り心地でした
機内へ搭乗してみると、まず気がつくのが室内の広さです。もちろん改修で機体が大きくなっているわけではありませんが、広々とした空間が広がっている感じがします。というのも、改修前のANA使用のボーイング787-8型機は、ビジネスクラスとプレミアムエコノミー、エコノミーの3クラスで、クラスを仕切るための壁などがありクラスごとにエリア分けされていました。
これがAirJapanの仕様では、全席エコノミークラスとなっているためクラスを仕切るための壁がなく、さらに中央部前方L2-R2ドア付近にあったバーコーナーと、中央後方L3-R3ドア付近のギャレーも撤去されています。そのため非常に見通しが良いのです。今回往路・復路ともに後方の30列以降の座席でしたが、フライト中ずっと前方まで見渡せるため、開放感があり、狭苦しさを感じず非常に快適でした。
(次ページ:シートは一般的なLCCより約7センチ余裕あり)
さらに快適さを感じたのがシートです。低価格ブランドの座席というとシートピッチが狭く、座面や背もたれも堅いため、飛行機を降りると体がカチコチというというイメージ。積極的に乗りたいとはお世辞にも言えないケースがほとんどです。
ところがAirJapanは、シートピッチが約32インチ(約81センチ)。LCCの一般的なシートピッチは約29インチ(約74cm)なので、AirJapanのシートは7センチほど余裕があることになります。さらに言うと、ANAが中距離国際線向けに運航しているボーイング787-8型機(240席仕様)はエコノミーのシートピッチが約31インチ(約79センチ)なので、それよりも広いことになります。
また座面や背もたれも適度なクッション性があって◎。ヘッドレストもあり、しっかりと頭が固定できるので寝やすいのもポイントです。体格による相性もあると思いますが、復路は夜行便ということもあり、6時間のフライト中ほとんど寝ていたのですが、お尻が全然痛くなっていません。筆者はFSCのエコノミーシートでも、数時間座っているとお尻が痛くなって、お尻の位置をずらしてもぞもぞと動きがち。それがAirJapanのシートではほとんど無かったわけです。
はっきり言ってエコノミークラスのシートとしては、近年で筆者が体験した中ではトップクラスの座り心地でした。ANAブランドもこの座席にしてくれればいいのにと思ったくらいです。ちなみにバーカウンターとギャレーが撤去されたため、10列目と30列目は前方に何もない超足下広々シートになっています。座席指定料が高め(バンコク線では航空券購入時4000円、購入後の追加4500円)ですが、人気のシートとなりそうです。
(次ページ:充電用のUSBはAとCの2ポート)
充電用のUSBはAとCの2ポート 機内Wi-Fiで映画視聴ができる
一方でシートモニターはありません。逆に言えば、座席下にシートモニター用の機材が無いから、足もとが広々としているといった利点があります。
シートモニターが無いと、フライト中に暇を持て余すかと思いきや、機内Wi-Fiに接続すると、映画などの機内エンタメサービスが見られるようになっています。そのため正面シート上部(前の人の座席の背面位置)には、スマートフォンやタブレットを置ける小さなテーブルが用意されています。
テーブルの左位置には給電用のUSBも配備されていました。テーブルのすぐそばにポートがあるので、短めのケーブルでも十分届くのはありがたいです。また、ポートはType-AとType-C両方あり、Type-Cは27Wの出力に対応しています。両ポートの同時使用も可能でしたので、スマートフォンを3台、タブレット1台のほかデジカメを持ち込んでいる筆者のような、ガジェットマニアにもありがたい仕様です。ただし通常のコンセントはありませんのでご注意を。
インターネット接続は有料で提供予定 機内Wi-Fiは無料のエンタメ用か、有料のネット用を選ぶ仕様
機内Wi-Fiでのインターネット接続も有料(30分プラン/6.95ドル、3時間プラン/16.95ドル、フルフライトプラン/21.95ドル)で利用可能です。ただし、「機内エンターテイメントサービス用のWi-Fiアクセスポイント」と「インターネット接続用のWi-Fiアクセスポイント」の2種類があり、排他仕様となっていました。
そのため、機内エンターテイメントサービス用のWi-Fiアクセスポイントにアクセスして動画を見ていると、インターネットに接続できませんし、インターネット接続中は、機内エンターテイメントサービスが利用できません。せっかくフルフライトプランを購入しても、機内エンターテイメントサービス用のWi-Fiにつなげてしまうと、メールやメッセージなどの通知が受け取れないわけです。筆者のようにスマートフォンやタブレットを複数台持ち込んでいれば使い分けできますが、普通の人にはちょっと分かりにくいと思うので改善を期待したいポイントです(原稿執筆時は、機内インターネット接続サービスに関して、当面の間、利用停止のアナウンスがでています)。
(次ページ:機内食は親子丼や稲庭うどん、お寿司もある)
機内食は自分のスマホからWi-Fi経由で注文 親子丼や稲庭うどん、お寿司もある!
機内食やドリンクなどは、LCC飛行機のようなスタイルで、基本的には有料です。機内エンターテイメントサービス用のWi-Fiアクセスポイントにアクセスして、スマートフォンやタブレットからオーダーできます。ちなみに機内食は事前オーダーメニューも用意されており、予約時や日本出発の24時間前(バンコク発は33時間前)までにオーダー可能です。
事前購入メニューは和にこだわったメニューが多く、バンコク線では10種類以上もラインアップ。今回、往路では試食ということで「寿司ものがたり(価格2000円)」と「ふわとろ卵の炭火焼親子丼(価格1600円)」をいただきましたが、どちらも非常に美味しかったです。特に寿司は小ぶりのシャリで、機内でも食べやすくてオススメです。
機内販売のメニューには「北海道道産牛の牛すじカレー(価格1200円)」や「鯖の塩焼き定食(価格1200円)」などを用意。筆者は「稲庭吟祥堂本舗稲庭うどん(価格800円)」をオーダーしましたが、小腹を満たすには丁度良いサイズでした。
「往路は夕食時の出発だから機内食をオーダーして、復路は夜行便で寝て過ごすから機内食はいらない」といった、カスタマイズの自由さがLCCライクでいいですね。ちなみに機内で飲むためのアルコール飲料は持ち込みNGですが、ソフトドリンクやスナックなどは持ち込みオーケーです。キッチリ節約したい場合は、搭乗前の空港ショップで購入しておくのもアリです。
また、ブランケットは有料での提供になるので、防寒対策などは自分で準備しておいたほうが、余計な出費は避けられます。
スナックなどは持ち込み可能 機内販売の支払いはクレジットカードのみ
機内販売での支払いは、クレジットカードのみ(VISA, MastercardまたはAmerican Expressが利用可能、原稿執筆時はJCBの利用不可)。現金は使えないので注意が必要です。決済端末はクレジットカードのタッチ決済にも対応しています。(筆者はテスト的にiPhoneでのクレジットカードタッチ決済を試してもらったのですが、一応、利用そのものはできるようです。ただし、基本的に機内では物理カードでの決済をお願いしているとのことでした。)
(次ページ:まさに「ハイブリッドエアライン」)
韓国や東南アジア旅行にオススメ 1度は乗って欲しい飛行機です
といったわけで、低価格ブランドでありながらも快適な移動ができ、まさに「ハイブリッドエアライン」と言った体験をすることができました。現在バンコク線は10月26日搭乗ぶんまでのフライトを販売中です。成田発→バンコク行きの最安値は、7kgまでの機内持ち込みのみがついた「Simple」で2万1230円(基本料金1万7000円+税金ほか4230円)となっており、座席の快適性を考えると他社LCCと比べても高いコストパフォーマンスと言えます。
また、AirJapanブランドのフライトは、2月22日からは韓国・ソウルの仁川国際空港(基本料金8000円から)、4月26日からはシンガポールのチャンギ国際空港(基本料金1万7500円から)へと、バンコク便と同じく成田空港から就航します。AirJapanを含めいわゆるLCCは、片道からも低価格の航空券が買えるので、東南アジア周遊といった旅程を組むのにピッタリです。
オトクに旅ができるフライトがまたひとつ増えたのは、旅好きにとって朗報です。韓国や東南アジア旅行を考えているなら、AirJapanを候補に入れて計画を練るのもいいな、と強く感じたのでした。
この記事を書いた人──中山智(satoru nakayama)
世界60ヵ国・100都市以上の滞在経験があり、海外取材の合間に世界を旅しながら記事執筆を続けるノマド系テクニカルライター。雑誌・週刊アスキーの編集記者を経て独立。IT、特に通信業界やスマートフォンなどのモバイル系のテクノロジーを中心に取材・執筆活動を続けている。
- 「旅人ITライターさとる」(IT系メイン)
- 「さとる・たべる・あそぶ」(旅行・エンタメ系メイン)
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