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ドコモ新社長は“経済圏”拡大より、ネットワーク品質とショップ網の再構築を最優先すべきだ

ASCII.jp / 2024年5月1日 7時0分

前田義晃氏(2018年、NTTドコモ「d払い」発表時)撮影:編集部

  一部メディアが、NTTドコモの前田義晃副社長を社長にする人事を内定したと報道した(※ドコモは「当社が発表したものではございません」とコメント)。

 これまでNTTドコモはNTT出身、あるいはNTT出身だが長らくNTTドコモに在籍していた人材が社長に昇格するのが定例であったが、前田氏はリクルート出身。実現すれば転職組がNTTドコモの社長になるのは初のケースとなる。

 前田氏は2000年にNTTドコモに転じ、当時、一石を風靡していたiモードビジネスに携わっていた。その後も、共通ポイント「dポイント」など、NTTドコモと他のパートナーとの協業を幅広く手がけてきた。

 NTTグループとして、前田氏をNTTドコモの社長に昇格させる狙いとしては、他社に大きく出遅れている「経済圏」の拡大だろう。

 楽天が「第4のキャリア」として新規参入してきた前から、すでに国内キャリアは通信だけでなく「経済圏の拡大」競争に突入している。

ドコモは“金融”中心の経済圏拡大が急務

 ソフトバンクはヤフーを中心にスマホ決済サービス「PayPay」で一気に国内シェアを獲得。さらにLINEを買収することで、LINE、ヤフー、PayPayという3つのサービスで、国内の顧客接点の多さで圧倒的に強いポジションを築きつつある(ただ、LINEの個人情報流出問題で、ID統合などは暗礁に乗り上げているが)。

 KDDIはコンビニ大手「ローソン」に出資し、ネットだけでなくリアルの世界にまで「経済圏」を拡大しようと目論む。

 NTTドコモが特に他陣営に後塵を拝しているのが金融だ。

 楽天グループはポイントを中心にカード、銀行、証券、ECといった強固な経済圏を築いている。

 ソフトバンクもPayPayにPayPay銀行やPayPay証券を盛り込むなど「金融スーパーアプリ化」が進んでる。

 KDDIはケータイが全盛のころから三菱UFJ銀行と共に「auじぶん銀行」を設立。いまではauフィナンシャルホールディングスにauカブコム証券を筆頭とした資産運用や保険代理業、貸金業などを有している。

 NTTドコモでは、2020年に起こったドコモ口座の不正利用問題により、金融事業から距離を置いていたが、2023年10月にマネックス証券の子会社化、今年3月にはオリックス・クレジットを同じく子会社化を発表している。

 マネックス証券子会社化の記者会見では前田氏も登壇するなど、同氏にとって金融を中心にしたドコモ経済圏の拡大が急務なのは間違いない。

ドコモユーザーからすれば「サービスよりもまずは通信品質をなんとかして」が本音

 一般紙などは今回の人事に対して「前田氏が社長に就任し、携帯電話会社からサービス会社へのシフトを加速させるだろう」と報じているが、ドコモユーザーからすれば「サービスよりもまずは通信品質を何とかしてほしい」というのが本音だろう。

 ここ数年、NTTドコモは基地局の一部を売り払い、「インフラシェアリング」として他社と基地局を共有する道をあえて選んだ。

 また、全国にドコモショップ網を維持するのも経営の重荷だと判断し、3割近いドコモショップを閉鎖し、オンラインショップ強化に舵を切った。

 結果として、NTTドコモのネットワーク品質が低下し、都心だけでなく、地方などでも「NTTドコモがつながらない」という状況を招いた。

 年配のユーザーなどは「近所にドコモショップがある安心感」からNTTドコモを使い続けていたはずなのに、そうしたユーザーの期待を裏切ることになってしまった。

 確かに「ネットワークとショップ網への投資を抑えて利益を上げる」というのはNTTの成功体験なのだろう。NTTであれば競争相手はほとんど機能していないため、ネットワークに追加投資をせず、ショップを閉鎖しても、ユーザーが逃げてほかに行くということはない。

 しかし、NTTドコモのいるモバイルの世界は、KDDIとソフトバンク、さらに楽天モバイルという強敵がユーザーを奪おうと、投資を惜しむことなくネットワーク品質を強化し、全国のショップで他社からユーザーを獲得しようと血眼になって営業を展開している。

 「固定電話の勝ちパターン」をモバイルの世界に持ち込んでも、一切通用しないことに気がつかなかったのだ。

「NTTグループの中でもやんちゃなドコモ」を復活させるくらいの改革を期待したい

 前田新社長としては、経済圏の拡大よりもまずはネットワーク品質とショップ網の再構築を最優先すべきだろう。

 これまでiモード初期からNTTドコモに在籍していた前田氏が社長に就任するという話が本当なら、社内の雰囲気がポジティブになる可能性が出てきたといえるだろう。

 ここ数年、親会社であるNTTの意向に配慮せざるを得ない空気がNTTドコモ社内にはあった。これが前田新社長体制になれば、少なからず、NTTドコモのプロパー社員などは仕事がやりやすくなるのではないか。

 もちろん、前田社長自身が親会社であるNTTの意向を汲み取る必要がいままで以上に出てくるだろうが、かつての「NTTグループの中でもやんちゃなドコモ」を復活させるぐらいの改革を前田新社長には期待したいところだ。

 

筆者紹介――石川 温(いしかわ つつむ)

 スマホ/ケータイジャーナリスト。「日経TRENDY」の編集記者を経て、2003年にジャーナリストとして独立。ケータイ業界の動向を報じる記事を雑誌、ウェブなどに発表。『仕事の能率を上げる最強最速のスマホ&パソコン活用術』(朝日新聞)『未来IT図解 これからの5Gビジネス』(MdN)など、著書多数。

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