ミドルクルーザー「スーパーメテオ650」にロイヤルエンフィールドの技術力と資金力とヤル気を感じる!!
バイクのニュース / 2024年4月20日 11時10分
イギリス発祥の「ロイヤルエンフィールド」は、現在はインドを拠点に製造を続ける老舗バイクブランドです。排気量648ccの空冷並列2気筒SOHC4バルブエンジンを搭載するミドルクルーザー「スーパーメテオ650」に試乗しました。
■エンジン以外のほとんどを新規開発
ロイヤルエンフィールドが2023年から発売を開始した「Super Meteor 650(スーパーメテオ650)」と初めて対面して、私(筆者:中村友彦)が驚きを感じたのは、「INT 650」や「コンチネンタルGT 650」から転用した並列2気筒エンジンを除く、ほとんどすべてのパーツを新規開発していることでした。もっとも、近年のクルーザーでそれは珍しくないようで、ホンダ「レブル」シリーズやカワサキ「エリミネーター400(欧米では451)」なども、「スーパーメテオ650」と同様の手法で開発されています。
ロイヤルエンフィールド「スーパーメテオ650」
とはいえ、かつての同社が販売していたクルーザーの「ライトニング535」や「サンダーバード350」は、既存の単気筒ロードバイクの基本設計をできるだけ流用していたのです。また、登場順は逆になりましたが、2021年から発売が始まったクルーザーの「メテオ350」も、2022年以降のクラシック系や「ブリット」との共通点が少なくありません。
そういった事実を考えると、「スーパーメテオ650」は相当に気合いが入ったモデルなのです。決して上から目線で言うつもりはないのですが、現在のロイヤルエンフィールドには、ロードバイクのエンジンを転用したクルーザーを製作するにあたって、ありとあらゆる部分を見直し、専用設計を行なう技術力と資金力とヤル気があるのでしょう。
■クルーザーの流儀に従った車体寸法とライディングポジション
専用に新規開発されたパーツの中で、私が最も興味を惹かれたのはフレームです。「INT 650」と「コンチネンタルGT 650」のフレームは、ステアリングヘッドパイプの後部を起点とする2本のパイプがそのままシートレールにつながる、見るからに剛性が高そうなダブルクレードルタイプでしたが、「スーパーメテオ650」は同社の単気筒車に通じる昔ながらの構成で、ダウンチューブが存在しないダイヤモンドタイプを採用しています。
クルーザーの流儀に従ったロイヤルエンフィールド「ス―パーメテオ650」の車体。ブランド史上初となる倒立式フロントフォークを採用し、個性的なデザインのキャストホイールはフロント19インチ/リア16インチを装備
もちろん、同社にとって初となる倒立式フロントフォークや、スポークのデザインが個性的なフロント19/リア16インチのキャストホイールなども、このモデルを語るうえでは欠かせない要素です。
また、クルーザーの流儀に従って寝かされたキャスター角と延長されたホイールベース(INT650の24度/1398mmに対して、スーパーメテオ650は27.5度/1500mm)、ゆったりしたライディングポジションを形成する、ワイドなアップハンドルやフォワードコントロール式ステップ、「INT 650」より座面を65mm低くしながら十分なウレタン厚を確保したシートも、「スーパーメテオ650」の特徴と言えるでしょう。
その一方で、クランク位相角を270度としたパラレルツインエンジンは、基本的に「INT 650」「コンチネンタルGT 650」からそのまま転用しているようですが、クルーザーらしい特性を求めて、吸排気系を専用設計しています。
誤解を恐れずに表現するなら、エンジンはシャシーほど手間はかかっていないわけです。とはいえ、そもそも「INT 650」「コンチネンタルGT 650」が搭載するパラレルツインは、クルーザーとしても十分に通用する資質を備えていたので、そのまま転用は自然な展開だと私は感じています。
そんな「スーパーメテオ650」の価格(消費税10%込み)は、「INT 650」+6万9900円の97万9000円からです。車体に投入された多種多様な専用設計パーツの数を考えると、この価格を高いと感じる人はほとんどいないでしょう。
■1軸式バランサーならではの鼓動感
初対面の段階で興味を惹かれたのは車体でしたが、実際に「スーパーメテオ650」を走らせて、私が最初に感心したのはエンジンでした。前述した通り、そもそも「INT 650」と「コンチネンタルGT 650」が搭載するパラレルツインは、クルーザーとしても十分に通用する資質を備えていたのですが、「スーパーメテオ650」の低中回転域のトルクと鼓動感は、「INT 650」と「コンチネンタルGT 650」の3割増し(?)の印象で、マッタリ巡航が最高に楽しいのです。
ロイヤルエンフィールド「スーパーメテオ650」に試乗する筆者(中村友彦)
と言っても、「鈍い」や「遅い」などという気配はまったく無くて、回せば回したなりの速さを発揮するのですが、吸排気系だけでここまで特性が変わるというのは、私にとっては予想外の展開でした。リッタークラスのクルーザーに匹敵……とまでは言いませんが、このバイクは650ccクラスらしからぬエンジンフィーリングを実現しているのです。
なお、エンジンの鼓動感に貢献する要素として、私が面白いと思ったのは偶力振動を緩和するバランサーの数と利かせ方です。
パラレルツインでクランク位相角を270度とした場合は、バランサーは2軸式が定番なのですが、「INT 650」と「コンチネンタルGT 650」、そして「スーパーメテオ650」のエンジンは、1軸式を選択しています。その結果として全域で適度な振動を感じるのですが、少なくとも私にとってそれは不快ではなく、むしろ適度な振動が鼓動感に大いに貢献しているように思えました。
続いては車体の話で、「INT 650」と「コンチネンタルGT 650」を比較対象とするなら、当然「スーパーメテオ650」のハンドリングは安定指向です。
安定指向ながら軽快なハンドリングでよく曲がる。適度な鼓動感を伴いながら予想以上の快走を楽しめる
ただし、エンジンと同じような表現になってしまいますが、「重い」とか「曲がらない」などという気配はまったくありません。それどろこかルックスや数値からは想像できないほど、軽やかでよく曲がります。もちろん、単純な旋回性では比較する2機種には及びませんが、ワインディングロードでは事前の予想をはるかに上回る快走が満喫できたのです。
さて、何だか褒めてばかりになってしまいましたが、真面目な話、このバイクに乗っている最中の私の脳内には、疑問や異論が浮かびませんでした。
そして試乗を終えた後、ふと頭に浮かんだのは空冷時代のハーレーダビッドソン「スポーツスター」です。もっとも、空冷時代の「スポーツスター」と「スーパーメテオ650」の共通点は前後輪のサイズくらいで、フレームもエンジン形式も何もかもが異なるのですが、車格と鼓動感の程よさ、操縦性と安定性の絶妙なバランス、所有欲を満たしてくれる質感などが、2台に通じる魅力のように思えたのです。
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