「朝鮮王朝時代と何が違うのか」多額の借金に苦しむ北朝鮮の農民
デイリーNKジャパン / 2024年5月2日 12時6分
北朝鮮の平安南道(ピョンアンナムド)北部にある穀倉地帯「十二三千里平野」では、飢餓が広がっている。毎年春は、前年の収穫の蓄えが底をつく春窮期が訪れるが、食べ物もなければ買うカネもない「絶糧世帯」が急増している。中央はこれと言った対策を取らず、地方に丸投げにしている。米政府系のラジオ・フリー・アジア(RFA)が報じた。
平安南道(ピョンアンナムド)の情報筋によると、安州市の祥瑞里(サンソリ)の農場では、農民に対してトウモロコシが配られた。そうは言っても、無料での配給ではない。
「絶糧世帯には2ヶ月分の食糧としてトウモロコシが供給されたが、これは年末の決算分配から天引きされる」(情報筋)
年末の決算分配、つまり秋の収穫の結果に応じて配られる農産物を「前貸し」したものに過ぎない。これを「換穀取引」という。今までのトンジュ(金主、ヤミ金業者)から借りて秋に2倍にして返すものよりはマシだが、借金まみれになることには変わりない。
(参考記事:年利300%の借金に苦しむ北朝鮮の農民)
一般的に北朝鮮の協同農場は5から11の作業班からなり、ひとつの作業班には80人から100人が所属している。今回、トウモロコシを受け取ったのは、各作業班で20人から30人になる。つまり、最も多いケースでは4割近くが絶糧世帯に陥っているということになる。こんなことは今までになかったとのことだ。
別の情報筋は、粛川(スクチョン)郡の検興里(コムンリ)協同農場でも、絶糧世帯に「換穀」の形で2ヶ月分のトウモロコシが配られたと伝えた。今まで、この時期にトウモロコシを受け取るのは、田起こしで活躍する牛を管理している人に限られていた。
「農場に出てこれない絶糧世帯を農場が責任を取れとの中央の内部指示があったから」(情報筋)
機械化の遅れている北朝鮮農業において、働き手の確保は収穫量に影響を与える。そこで「とりあえず食べさせて働かせろ」との指示が出たのだろう。
検興里協同農場など畑より田んぼを多く所有する農場は、備蓄が多く問題なく供給が行えたが、安州市の雲興里(ウヌンリ)のように、湖に接している干潟からなる農場は、備蓄穀物が少なく、絶糧世帯に何も配れなかった。
この農場主導の「換穀」の評判について情報筋は、「トンジュから長利米を借りるしかなかった農民が、当局から換穀を受け取って喜んでいる」とする一方で、「春窮期に当局が農民に穀物を渡し、秋になったら回収するやり方は、朝鮮王朝時代と何が違うのか」と疑問を呈する人もいる。
外部リンク
この記事に関連するニュース
-
行き詰まる「金正恩の米屋」…怒れる商人と取締官が衝突
デイリーNKジャパン / 2024年5月15日 11時11分
-
「給料はセメント20キロ」食糧難が続く北朝鮮で今起きていること
デイリーNKジャパン / 2024年5月10日 8時9分
-
「市場にコメが出回らない」上昇を続ける北朝鮮の穀物価格
デイリーNKジャパン / 2024年5月8日 5時11分
-
「賃上げ20倍でも意味がない」不満の声あげる北朝鮮の労働者たち
デイリーNKジャパン / 2024年5月5日 6時49分
-
1日半の労働で1カ月分の収入を手にする新興富裕層
デイリーNKジャパン / 2024年4月28日 10時58分
ランキング
-
1プーチン氏、中露共闘で対ウクライナ「戦勝」狙う 中国は「戦後」の影響力確保か
産経ニュース / 2024年5月16日 21時28分
-
2バイデン氏、録音公開拒否 機密文書事件の事情聴取
共同通信 / 2024年5月16日 23時52分
-
3バイデン・トランプ両氏、指名前に異例の1対1討論…罵声飛び交った20年は「史上最悪」討論とも
読売新聞 / 2024年5月16日 19時21分
-
4ロシア兵力「突破に不十分」 NATO司令官「戦線維持可能」
共同通信 / 2024年5月17日 6時45分
-
5ロシア、戦術核を含む軍事演習を初めて公表...プーチン大統領がウクライナに核を使う日は来るのか?
ニューズウィーク日本版 / 2024年5月16日 20時46分
記事ミッション中・・・
記事にリアクションする
記事ミッション中・・・
記事にリアクションする
エラーが発生しました
ページを再読み込みして
ください