【ネタバレ解説】「SHOGUN 将軍」真田広之のこだわりに圧倒される10の裏話 なぜ本作が描く日本は“本物”なのか?
映画.com / 2024年4月19日 15時0分
【4】衣装は全て手作り 真田が「日本の生地でなければならない」と指定
戦国時代は変革期にあり、比較的自由な表現が許された時期。コスチュームデザイナーのカルロス・ロザリオにとって、それは前後の時代では不可能だったかもしれない、よりクリエイティブな要素をデザインに取り込むチャンスとなった。「作品のなかの全ての衣装は手作りだ。最初から、全てを自分たちの手で作ることにこだわった」と、ロザリオは振り返る。
もちろん、和服の構造を正しく理解し、日本から多くの衣装を借りて研究を重ねたのは言うまでもない。また、日本の衣装チームがロザリオに、貴重な生地をたくさん送り届けてくれたという。「真田広之さんと初めて会った時に、『カルロス、正しい生地を使ってくれ。日本の生地でなければならない』と言われた」(ロザリオ)。
また、真田演じる虎永の鎧は、史実に忠実であると同時に、快適であるように工夫され、映画でよく見られる全金属ではなく、革を基本ベースにデザインされた。ロザリオは「ヒロ(真田)がいままで纏った鎧のなかで、最も軽い鎧だったと言ってくれた。そのおかげでアクションシーンも思う存分実現できたようで、すばらしい賛辞だと思った」と、誇らしげだ。また、虎永のために陣羽織数枚を制作。最も手の込んだ陣羽織は、100枚以上の孔雀の羽根を、手作業で1枚ずつ生地に貼り付けて制作されたという。
【5】伝統的な技法を尊重しながらも、新たに生み出された和鬘
1600年代の日本社会において、髪型は地位や階層を示す重要な役割を果たした。登場人物のヘアスタイルを決めるために、ヘアデザイナーのサナ・セッパネンは歴史的絵画を研究し、歴史の専門家と相談しながら、日本の時代劇や和鬘(かつら)のプロフェッショナルたちと密接に協力した。
和鬘は、俳優の頭の形に合わせた金属製の型に、手で髪を結びつけて制作される。伝統的な技法によるすばらしい芸術作品だが、1度スタイルを決めると変更が難しい。本作の登場人物たちは、アクションシーンをこなし、悪天候や水難に遭遇することもあり、場面によっては適度に髪が乱れて見えなければならなかった。
そこでセッパネンは、著名なハリウッドとブロードウェイの鬘アーティストであるロバート・ピケンスの協力を得て、軽量プラスティックを使った新しい鬘をデザイン。基盤となるレースに髪が手で結びつけられ、 プラスチックの型に巻かれた。これにより、男性の髷を解いたり、女性の髪型や髪飾りを自由に変えたりできるようになった。伝統的な技法を尊重しながらも、より快適な着用を実現した経緯は、本作にふさわしいエピソードだと言える。
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