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憲剛の最新本を立ち読み!「史上最高の中村憲剛」(18/20)

ゲキサカ / 2016年5月2日 7時30分

 43分、レナトに代わって伊藤がピッチに入ってくる。

「ヒ・ロ・キ! 伊藤宏樹!」のコールが響きわたるなか、ディフェンスラインに加わった伊藤の姿を見て、フロンターレの選手たちは集中力をさらに高めた。

 なりふり構わず放り込まれたボールを、憲剛が足を投げ出してブロックし、ジェシが跳ね返し、稲本潤一が大きくクリアする。

 試合はアディショナルタイムに突入した。

 F・マリノスのコーナーキック。ゴールキーパーの榎本哲也までもがフロンターレのゴール前に上がり、捨て身の攻撃に出たが、フロンターレが凌ぐ。

 F・マリノスの猛攻はさらに続く。齋藤学の左からのクロスにマルキーニョスが頭で合わせたが、ボールは右ポストに弾き返される。
 
 15秒後、再び左サイドから、齋藤が今度はドリブル突破からスルーパスを通したが、栗原のシュートはゴールキーパーの西部洋平がセーブ。続けざまに放たれた齋藤のシュートも西部がブロックし、こぼれ球を稲本が大きく蹴り出した。

 アディショナルタイムに入って4分40秒が経ったとき、稲本が俊輔を倒し、フリーキックを与えてしまう。俊輔のキックはゴール右隅に向かったが、西部が弾き出す。

 ラストワンプレーとなるコーナーキック。俊輔が蹴ったボールをフロンターレが大きくクリアした瞬間に、長いホイッスルが鳴った。

 俊輔はその場に崩れ落ち、しばらく立ち上がることができなかった。

 憲剛は伊藤と抱き合ったあと、ピッチに膝をつき、両手を上げてガッツポーズを繰り返した。

 最終順位を3位に上げたフロンターレは、翌年のACLの出場権を獲得したのである。

 試合後、ヒーローインタビューに呼ばれたのは、中村と大久保のふたりだった。

 女性リポーターが2013シーズンの得点王決定を告げると、中村は大久保に抱きついて祝福した。チームメイトへの感謝を口にした大久保だったが、移籍1年目で26ゴールを挙げたというだけでなく、2013年は彼にとって節目となるシーズンだった。

「今年はお父様が亡くなったということで、だからこそ得点王を取りたいという……」

 リポーターからの問いかけに、大久保がタオルで目元を押さえる。溢れる涙を隠せない。

 2010年の南アフリカ・ワールドカップのあと、燃え尽き症候群に陥った大久保は、日本代表で再びプレーするというモチベーションを失っていた。

 しかし、日本代表で活躍する息子の姿を再び見ることを願っていた父が5月に他界し、それ以来、大久保は日本代表への想いを再燃させるようになっていた。

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