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エルピーダメモリ 坂本幸雄元社長が76歳で死去…元祖“日の丸半導体”経営者の栄枯盛衰(有森隆)

日刊ゲンダイDIGITAL / 2024年5月1日 9時26分

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エルピーダメモリの坂本幸雄元社長(C)共同通信社

【企業深層研究】エルピーダメモリ(上)

 今年3月、史上初めて4万円の大台を突破した日経平均株価は年初から7000円も急騰した。AI(人工知能)ブームを追い風に、半導体関連銘柄に買いが集中した。

 株式市場が“半導体バブル”に沸き立っている最中、「半導体のプロ経営者」(日本経済新聞)と評されエルピーダメモリ社長だった坂本幸雄氏が2月14日、心筋梗塞のため亡くなった。76歳だった。

“日の丸半導体”のはしり時代の経営者だった坂本氏の栄枯盛衰をたどってみよう。

 群馬県前橋市出身。1970年、日本体育大学体育学部を卒業したが、高校野球の監督になるという夢が破れ、義兄の紹介で半導体メーカーの日本テキサス・インスツルメンツ(TI)社に入社した。

 徹夜もヘッチャラというタフな働きぶりが認められ、副社長にまでなった同氏は、半導体事業の再建請負人に転身する。神戸製鋼所の半導体本部長、台湾の半導体メーカーの日本法人、日本ファウンドリー(のちのUMC JAPAN)社長を務めた。

 手腕を買われ、2002年、DRAM(半導体を使用した記憶素子)で世界3位のエルピーダメモリの社長に招請された。09年、改正産業活力再生特別措置法(産活法)の適用第1号に認定され、300億円の公的資金が注入された。

 だが、サムスン電子、SKハイニックスなど韓国勢とのシェア争いに敗れた。市況悪化も重なり、12年2月、会社更生法を申請した。負債総額は4480億円に上った。

 エルピーダの倒産は、いま振り返ってみても不可解なことばかりなのだ。会社更生法を申請した12年2月時点でも、有力取引先から注文が入っており、つなぎ資金さえ調達できれば再建は可能だったはずだ。

 坂本氏は「日本政策投資銀行が100億円の融資を拒否したため会社更生法を申請した」と説明している。

 法的処理の過程で、坂本氏は「“計画倒産”を仕組んだのではないか」との悪評を浴びた。自ら管財人に就いて、米半導体大手マイクロン・テクノロジーにエルピーダメモリを売却したからである。13年7月、マイクロンによる買収が完了。エルピーダはマイクロンメモリジャパンに、実に見事に変身した。

 連鎖倒産した中小企業の経営者が自殺し、エルピーダの株券は紙くずになった。当然、株主は激怒。「経営破綻が予見できたのに、その直前に資金調達計画を発表。会社が存続するかのようにみせかけたのは不当だ」と主張し、坂本氏ら旧経営陣を相手取り1億1500万円の損害賠償請求訴訟を起こした。

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