日本の「半導体業界復活」に絶対的に必要な3つ 補助金付は企業を弱体化させるだけだ
東洋経済オンライン / 2024年4月28日 10時10分
半導体事業支援のため、巨額の補助金が支出されている。しかし、これによって日本の半導体産業が復活するのかどうか、きわめて疑問だ。必要なのは補助ではない。経済学の教科書に書いてあるとおり、「技術・投資・人材」だ。昨今の経済現象を鮮やかに斬り、矛盾を指摘し、人々が信じて疑わない「通説」を粉砕する──。野口悠紀雄氏による連載第119回。
ラピダスに最大9200億円の支援
経済産業省は、国内の半導体事業への補助を増やしてきた。台湾の半導体受託製造会社TSMCの熊本第1・第2工場招致のため、1兆2000億円を支出した。
2024年4月2日、経産省は、最先端半導体の製造を目指すラピダスに、2024年度で最大5900億円を支援すると発表した。ラピダスへの支援額の累計は最大9200億円となり、対TSMCに次ぐ規模となる。
現在、国内で製造できる半導体は40nm台にとどまっているが、ラピダスは、2020年代後半に2nmの次世代半導体の量産を計画している。
半導体の製造には、チップの回路を作る「前工程」と、チップを基板に実装し、パッケージ化して製品にする「後工程」がある。これまでは回路を微細にすることで性能を高めてきたが、微細化の限界が近づいていると言われる。そこで、微細化に代わる手法として、後工程の研究開発が注目されている。
ラピダスは、半導体チップをメモリーなどと組み合わせて立体的に組み立てる最先端の手法の開発をめざす。2027年度の量産開始までに技術を確立させ、千歳市に建設中の工場で製品化する。工場建設には5兆円を投じる計画で、まずは、研究開発費も含めて2兆円の資金が必要だとしている。
ところが、民間企業は、ラピダスへの出資に及び腰だ。同社は2022年8月に設立され、トヨタ自動車、ソフトバンク、ソニーグループなどが出資するが、総額は73億円にとどまっている。
「最先端の半導体はうちには必要ない」「技術的なハードルが高く、本当に実現できるか見通せない」(2023年11月23日付朝日新聞、「政治案件」の半導体支援、民間から冷たい視線 責任負うのはだれ?)と、経産省が主導した国策事業に苦い過去があることを考えれば、民間企業の及び腰も当然だ。
半導体産業については、「日の丸半導体復権」をかけて、電機メーカーの半導体メモリー事業を統合した「エルピーダメモリ」が1999年に発足した。しかし経営に行き詰まり、公的資金活用による300億円の出資を受けた。それでも事態は好転せず、2012年2月に会社更生法の適用を申請し、製造業として史上最大の負債総額4480億円で破綻した。
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