「お金がない」と嘆く人に知ってほしい…〈物を買う〉概念を根底から覆す“世界一貧しい大統領”の「幸福哲学」
THE GOLD ONLINE(ゴールドオンライン) / 2024年2月10日 10時15分
(※写真はイメージです/PIXTA)
生きていくうえで欠かせない「お金」だからこそ、果てない物欲に身を任せていては、一生満足できず、将来への不安も尽きることはないでしょう。そんな状況への打開策として、作家の有川真由美さんが提案するのは「必要最低限のお金があれば生きていけると考えること」。有川氏の著書『お金の不安がなくなる小さな習慣』より、お金との向き合い方について詳しく見ていきましょう。
「毎日使うもの」こそ、良いものを選ぶ
「賢く、ゆたかなお金の遣い方をしている人は、「毎日使うもの」にお金をかけています。なにかを買うとき、まず考えたいのが「使用頻度」。年に1回しか使わないものに大金をはたいても、喜びは年に1回。ですが、毎日使うものが、お気に入りの良品であれば、365日喜びや心地よさを感じて、生活の質もぐんと上がります。
支払うお金の価値を、つぎのような公式に当てはめてみるといいでしょう。
「支払うお金の価値=喜び(貢献度)の大きさ×頻度(or時間)」
たとえば、ほとんど使わないパーティ用のバッグに何万円もかけるのは、もったいない気分になるもの。毎日、仕事で使うバッグに良質なものを選ぶと「もっているだけで気分が上がる」「ちゃんとして見える」「機能的で快適」「丈夫で長持ち」など、使うたびに多くの喜びを味わえるので、少々高くても価値があるのです。
私は、毎日使うパソコンやテーブル、財布などは、自分にとってちょうどいい“良品”を選んでいるので、長い間使い、満足度は120%以上。「いつも、いい仕事をしてくれて、ありがとう!」という気分になります。歯ブラシやシャンプーなども気に入ったものをリピート。何度も買いたくなる良品に出合うことは、自分の好みや心地いいものを知り、商品選びにあれこれ迷う手間が省けて、生きやすさにつながります。
支払うお金を、使用頻度で考えることで、あまり使わないものをたくさんもつより、お気に入りの良品を少なく持ち、使い倒そうという習慣をつくってくれます。
ただし、頻度は少なくても防災道具や入院費用など命を助けてくれる支出や、親孝行や旅行など形に残らなくても記憶に残る支出もあるので、そこは出し惜しみせずに。
メリハリのあるお金の遣い方が大事
かつて私が居候していた家の主人は80代の女性。普段は質素な暮らしでしたが、ふと海外の秘境に出かけたり、お寺に寄付をしたり、いつか入る老人ホームの入居費用を前払いしたりと、ポンと大金を出す人でした。彼女がよく言っていたのは……。
「お金の遣い方は、水道の蛇口と同じ。水の容量は限られているから、普段は蛇口をしっかり閉めておいて、いざ出したいときにジャッと開けばいいのよ」
つまり、水が流れるようにだらだらとお金を遣っていては、いざ出したいときにお金が残っていない。普段は「ちょっと節約」して、こだわりたい点で「ちょっと奮発」する、メリハリのあるお金の遣い方が大事なのだと教えてくれたのです。
たしかに、ずっと節約ばかりでは心が疲弊して、イライラで家族がぶつかったり、ストレスの反動で衝動買いしたりして本末転倒。一方、いつも財布のひもをゆるめて散財してばかりでは、お金の不安がついてまわるでしょう。
「お金がない」と嘆いている人の多くは、大きな出費があるのではなく、小さな出費をちょこちょこ重ねているから、いつの間にかなくなってしまうのです。
「ここはお金をかけたい」と思う点は人それぞれ。「写真館で家族写真を撮りたい」「毎年、夏の音楽フェスに行きたい」「本にはお金をかけたい」などいろいろあるでしょう。そんな「ここぞ」のために、ムリのない程度の節約をするのです。
「節約」とは、安いものを買ったり、なんでもケチったりすることではありません。自分にとって必要なこと、不必要なことをわかって、ムダな出費をしないことです。
節約と奮発のメリハリをつける習慣は、単調な毎日に活力も与えてくれます。
それに、体の健康と同じで、欲しいものをなんでも買うより、普段は少しの自制心を働かせて腹八分目くらいにしておいたほうが、心の健康にいいのです。
「支払うお金」を、それを得るために「働いた時間」に換算する
「物を買うというのは、稼いだ金で買っているのではなく、労働をした時間で買っているのだ」と言ったのは「世界一貧しい大統領」と呼ばれたウルグアイのムヒカ元大統領でした。
2012年、地球サミットでのムヒカ元大統領のスピーチは大きな反響を呼びました。古代ローマの哲学者セネカの「貧乏な人とは、少ししか物を持っていない人ではなく、無限の欲があり、いくらあっても満足しない人のことだ」という言葉を用いて、経済発展のあり方や、ライフスタイルを見直すべきだと提言したのです。
人びとは、家や車のローンを払うためや、さまざまな物を買うために働き続けて、あっという間に一生が終わってしまう。本来は、愛、人間関係、子育て、友だち、必要最低限のものをもつことなど、幸福であることをもっとも大切にすべきだと。
私もそんな考え方に共鳴して、ムヒカ元大統領の妻、国会議員でもあるルシア・トポランスキーさんを取材。夫妻が収入のほとんどを慈善団体に寄付して、農業をしながら質素に暮らしている様子を見て、「むやみに欲しがらないことは品格であり、時間と心の自由を手に入れること」なのだと、すとんと腑に落ちたのです。
それから「支払うお金」を「働いた時間や労力」に換算する習慣がつきました。
私たちが1万円のものやサービスを買うとき、時給1,000円の人なら10時間、10万円のものには約12日半の労働時間を差し出していることになります。「この商品に、それだけの価値があるのか」と考えると、無駄遣いせず、ほんとうに価値のあること、人や自分を幸せにすることに遣いたいと思うようになるのです。
お金とは単なる交換の“道具”ではなく、“意味”があります。苦労して得たお金は大事に遣いたいし、「あぶく銭は身につかない」というように、浪費しがちです。支払うお金を、時間や労力に換算する習慣は、欲しがらない習慣にもなるのです。
「最低限、これだけあれば暮らせる」という金額を心の片隅にもっておく
ウルグアイのムヒカ元大統領とルシア夫人に教えてもらったことのひとつは、「必要最低限のお金」と、やりたいことができる健康状態、信頼できる人間関係があれば、じゅうぶん幸せに生きていけるということでした。「もっと欲しい。あれがなきゃ嫌」と欲しがってばかりでは、一生満足できず、将来のことも不安でいっぱい。
「必要最低限のお金」があれば生きていけると考えれば、不安は小さくなるのです。「お金のことが不安」と言っている人のほとんどは、先のことをぼんやり心配しているだけで、具体的な対策を立てていないものです。
「最低限、月〇〇円あれば暮らせる」と、現実的に必要最低限レベルの生活をシミュレーションしてみると、なんとかなるような気がしてくるはずです。
「必要最小限のお金」といっても人によって違いがあるもの。友人のなかには「最低、月50万円ないと暮らせない」という人もいれば、「年収100万円だけど、なんとかなっている」という人もいます。後者の友人は、親の残した家にひとりで住んでいて、あまりお金を遣わないライフスタイル。読書や家庭菜園、保存食づくりなど好きなことして、ゆたかに暮らしているのです。
「必要最低限のお金」のハードルが高い人ほど不安になるのは当然。ハードルが低い人ほど、生活の目途が立ちやすく、やりたいことをやれる展望も開けてくるでしょう。「いまはなにかと支出が多くても、いざとなれば毎月〇〇円で暮らせる」という金額をわかっているだけで、気持ちは軽くなります。
収入と支出の具体的な見通しを立てたり、最終手段を考えたりしておくことで、焦らず、いまに集中できるのです。
「必要最低限の金額」を心の片隅にもって「なんとかなる!」と進んでいきましょう。
有川 真由美 作家
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