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〈5件に1件〉が税務調査の対象に…!「何にお金を使っていましたか?」の回答から“すべてを暴く”調査官の〈すごいテクニック〉【税理士が解説】

THE GOLD ONLINE(ゴールドオンライン) / 2024年3月7日 11時15分

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(※写真はイメージです/PIXTA)

年間約10万件の相続税の申告件数のうち、税務調査が入る件数は「5件に1件」。意外と身近なものであり、それゆえ、相続税の申告の際には「税務調査を受けることを意識しながら準備を進めていく必要がある」と、税理士の北井雄大氏は言います。北井氏の著書『相続はディナーのように “相続ソムリエ”がゼロからやさしく教えてくれる優雅な生前対策の始め方』(日刊現代)より、詳しく見ていきましょう。

【登場人物】

相続ソムリエ:悩める家族に相続のアドバイスを贈る、相続のプロフェッショナル  

潤一郎(80歳):春樹の父親

小百合(76歳):潤一郎の妻

春樹(52歳):潤一郎・小百合の長男。妹が1人いる

綾子(50歳):春樹の妻

桜(23歳):春樹・綾子の娘。潤一郎・小百合の孫

税務調査は5件に1件の割合で行われている

春樹:一般家庭に税務調査が入ることってあるんですか?

相続ソムリエ:もちろん。相続税の申告の際には、税務調査を受けることを意識しながら準備を進めていく必要があります

まずは相続税の課税対象となる案件数から見ていきましょう。2015年の相続税法の改正によって基礎控除額が6割に縮小されたため、相続税の課税対象となるケースが増えました。改正前は、相続が発生した件数に対して申告が必要なケースは4.5%程度でしたが、改正後は8.5%程度に上昇しました。

綾子:対象者が、だいたい2倍になってるのね。

相続ソムリエ:はい。そして、対象者増加に合わせて税務調査の件数も増えているんですよ。

潤一郎:増えているって、いったいどのくらい増えているんだ?

相続ソムリエ:改正前、相続税の税務調査件数は年間1万1,000件程度でしたが、改正後は2万2,000件程度に増えました

桜:これまた2倍!

相続ソムリエ:相続税の申告件数は年間約10万件ですから、5件に1件、約20%が税務調査の対象になっているんです。

春樹:思ったより多いぞ。

小百合:税務調査って、意外と身近なことなのねぇ。

税務署は「銀行口座の動き」を職権で調べることができる

綾子:調査は、どのように進んでいくんでしょうか?

相続ソムリエ:税務調査の期間は一般的に1~2日間です。

当日は朝10時から調査が始まります。最初の1時間程度は、被相続人がどんな人だったかのヒアリングが行われます。その後は、通帳の記録や申告書を見ながら、「これはどういう意味ですか」といった質問がなされます。

午後3時半頃になると、「今のところ調査結果はこうなっています」と伝えられます。そして「現状の問題点はここです」などと指摘があり、30分程度かけて、指摘を受けた問題点について話し合います。そこで解決すれば、1日で調査を終えることもできますし、問題が残れば確認に時間を要することもあります。

小百合:すごいわねえ。短くても丸1日かかるのね。

潤一郎:税務調査が入るような事態にならないよう、ソムリエさんのご協力を仰ぎながら準備をするとして……単なる好奇心からお聞きするのですが、国税庁はどうやってお金の動きを把握しているんでしょうか?

相続ソムリエ:国税庁には国税総合管理(KSK)と呼ばれるシステムがあります。KSKは、全国の国税局と税務署をネットワークで結び、申告・納税のデータや各種情報を入力することで、国税関連の情報を一元的に管理するものです。

小百合:ハイテクねえ。

相続ソムリエ:被相続人をAさんとすると、国税庁はKSKによって、Aさんがそれまでどんな確定申告をしてきたか、専従者給与(身内への給与)として妻のBさんにどれだけの給与を支払ってきたか、その結果、Aさん、Bさんにはどれくらいの資産が積み上がっているかを把握しています。

綾子:すべて知られているのね。後ろ暗いことはないけど、ドキドキするわ。

春樹:Aさんが亡くなったとき、国税庁はどんなふうに動くんですか?

相続ソムリエ:まずは「おそらく3億円ほどの現金を持っているはず」「現金がなければ不動産に変わっているはず」などと推定します。

ところが、相続税の申告があったタイミングで財産の内容を見ると、1億円しか申告されていなかったとしましょう。すると「2億円はどこへいったのか」となり、子どもに贈与したのか、配偶者に渡したのか……などと想像します。それを確認するため、税務署は相続人である配偶者や子どもの預金口座を調べます。

桜:すごい、探偵みたい! なんでもわかるんですね。

相続ソムリエ:税務署は、銀行口座の動きを職権で調べることができます。銀行に記録された過去10年間の預金の出し入れを調べ、2億円の行方がわからなければ、「どこかに隠し持っているのだろう」と推定するでしょう。「自宅の金庫にあるのでは?」と考えるかもしれませんね。

このように、税務署が「怪しい」と思った申告が税務調査の対象となります

潤一郎:素晴らしい仕事ぶりだ。悪いことはできないな。

小百合:そういう案件だと、やはり相続人が悪意を持って財産を隠すことが多いんでしょうか?

相続ソムリエ:もちろん擁護はできませんが、悪意というより、子や孫に少しでも多く資産を残してあげたい一心で……ということが多いですね。あるいは、認知症の親の代わりに通帳やカードを預かっていた子どもが、無断で自分の口座に預金を移していたというケースもあります。

桜:なるほど。それは預金口座を調べるとすぐにわかりますよね。

「遠回しな質問」で外堀を埋めてくる調査官

小百合:税務調査では、どんな質問をされるんですか?

相続ソムリエ:当たり前ですが、「2億円をどこに隠しているんですか」といったストレートな質問はされません。「ご主人はどういうものにお金を使っていましたか」などと遠回しに聞いてきます。

そのときに相続人が「ギャンブルは一切しません」とか「ほとんど趣味もないので、散財もしない人でした」などと答えると、調査が進んだ段階で「我々の計算ではAさんの資産は3億円近いはずですが、1億円しか申告されていません。2億円はどこにいったのですか」と追及されるのです。既に散財やギャンブルの言い訳は封じ込まれているので、逃げ道がなくなっています。

桜:すごいテクニック! どれだけ隠そうとしても、きっとばれちゃうわね。

相続ソムリエ:すごいですよね。最初は被相続人について「生前はどんな方でしたか?」といった質問でやわらかくスタートしますが、ちょっとした雑談に見えても無駄な質問はほとんどありません。質問の背景にはちゃんと意図があるのです。

また、調査官の1人が質問をして、もう1人がメモを取るなどといった役割分担があります。実はこのとき、相続人の表情の変化も漏れなく記録されているんですよ。

綾子:高度な心理戦が繰り広げられているんですね。

北井 雄大 税理士

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