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「財産の分け方」で〈税金のかかり方〉は変わるが…税対策よりも先に“確認すべきこと”【司法書士が解説】

THE GOLD ONLINE(ゴールドオンライン) / 2024年5月2日 10時45分

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画像:PIXTA

「相続は事前に話し合わないと、9割が揉める」……裁判沙汰にならないまでも、遺産を巡って不仲になる、遺産分割以外にも介護、お墓に関するトラブルなどが発生することを考えると、9割という数字は決して大袈裟なものではありません。司法書士兼行政書士である太田昌宏氏の著書『円満相続のための 家族会議の始め方』(メディアパル)より、一部抜粋して紹介する本連載。太田氏が、司法書士ならではの視点から、トラブルを未然に防ぎ、円満な相続を実現するための家族会議の方法を、できるだけ分かりやすい表現を用いて解説します。

「葬儀費用は生前に準備」がベター

私は、これまでの日常業務を通じて、将来の相続や介護に関する家族間の対話の必要性を感じてきました。そのため、相続に備えて事前に家族で話し合う場を「家族会議」という言葉で説明しています。本文中で使用される「会議」「家族会議」という用語は、このことを指しています。

家族会議で葬儀について話し合う際、葬儀費用を誰が負担するかも重要な問題です。

残された家族の誰かが負担する場合は別ですが、相続財産(現金、預貯金)の一部を葬儀費用として使うと決めた場合は、相続財産の処分にあたりますし、分配額が減少するので各相続人にはそのことに同意してもらう必要があります。

また、亡くなった人の預貯金口座は凍結されるため、支払いの際、すぐに引き出せない可能性があります。

そのほか、葬儀費用を事前に準備する方法はいくつかあるので、紹介します。それぞれのメリット・デメリットを考えて選択しましょう。

①現金で保管する(いわゆるタンス預金)

すぐに使えますが、盗難のリスクがあり、また相続財産の一部となるため相続税の申告が必要な場合は、申告漏れに注意しましょう。

②葬儀費用を配偶者などに預ける、あるいは贈与しておく

すぐに使えますが、預かるときは贈与にあたらないよう注意が必要です。預かった側は自分の財産と明確に分けて保管し、①と同様に申告漏れには注意が必要です。

③少額短期保険を利用する

かけ捨て型の保険で、かけ金は月々数千円程度、1年満期で更新制です。いざというときは100万円程度の保険が下ります。なお、年齢が上がるとかけ金は増えます。

④冠婚葬祭互助会で積み立てる

月々の積立金を葬儀費用にあてることができます。ただし、互助会が破綻するリスク、途中解約をすると積立金が全額戻らないリスクがあります。いずれの方法を選択するにしても、家族には決定した内容を伝えましょう。

相続財産の分け方で“税金のかかり方”が変わる

相続税対策の特集記事や、それらを取り扱った本がたくさん出ています。みなさん相続税のことを気にされていますが、その前に本当に税対策が必要かどうかを知ることが大切です。

相続財産を洗い出し、把握した情報をもとに、税の無料相談や税理士相談などを利用してかかる税金を試算します。

相続税がかかる場合の注意点は、財産の分け方によって税金のかかり方が変わること。具体的な財産の分配案をもとに配偶者控除や小規模宅地の特例などが適用された、現実的な数字を知る必要があります。

それがわかってから、はじめて対策を検討すればよいのではないでしょうか。

一般的な対策としては、暦年課税の枠(年間110万円)や、相続時精算課税制度を利用して、子だけでなく孫の世代への贈与などを活用することが考えられます。また、生命保険の利用なども考えられます。

有効な方法は、個別のケースにより異なり、費用対効果の問題もあります。具体的な対策方法については個別の事情をしっかり伝えて、税理士やファイナンシャルプランナーといった専門家に、アドバイスを得るのが良いでしょう。

Q.うちは、相続税がかかりますか?

2021年の財務省のデータによると、相続税が課税された件数は、その年の死者数の9.3%です。つまり、およそ10人にひとりが相続税の対象になっているわけです。そのうち約半分は、課税価格が5,000万~1億円の部分に集中しており、この層の平均納税額は、259万円です。

都市部であれば土地や建物に預貯金を加えると、この層に入ってくるのではないでしょうか。

いずれにしても、財産を洗い出し、相続税がかかるだけの財産があるのかを把握しましょう。

遺言書の最大のメリットは「法的拘束力があること」

「遺言書は作ったほうがよいですか?」と聞かれることがあります。経験上、私なら「迷うくらいなら作りましょう」と答えます。

相続が発生したのち、相続人の間で「生前、父はこの財産は○○に相続させたいと話していた」「この財産はおまえのものだと言われた」などの言った言わない論争がくり広げられるからです。口約束は証拠にならず、法的拘束力もありません。

「自分が考えたとおりに相続させたい」「相続で争いが起こる要素がある」「もめごとを予防したい」のであれば、遺言書を作るべきでしょう。

さて、通常の遺言には、自筆証書遺言と公正証書遺言の2種類があります。

自筆証書遺言は、遺言書の内容をすべて自筆するなど要件が決められています。ただし現在は、本文以外の財産目録などはパソコンで作ったものを使用できるようになりました。

自筆証書遺言は、自身で保管する方法と法務局で保管してもらう方法のふたつがあります。後者は手数料がかかりますが、紛失の心配がなく、家庭裁判所による検認手続きが不要となります。

公正証書遺言は、公証役場において作成する遺言書です。手続きに公証人が関与するほか証人も必要で、手続きも厳格です。遺言としての証拠能力が高いといえます。

なお、どちらの遺言も作り直しできます。

Q.遺言書の内容を家族に知らせるべき?

遺言書の内容は、生前に家族に開示する義務はありません。つまり、ご自身で伝えない限り、家族は内容を知ることができません。

私がこれまでに関わった公正証書遺言作成の場面では、家族がすでにその内容を知っていることもありました。内容について家族で話し合いがされており、その証拠を残す形だったのでしょう。しっかり話し合ったなら、公正証書遺言でより確実に残しておくこともできます。

太田 昌宏

司法書士・行政書士

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