年金、あと5年でいくら増やせますか?〈ねんきん定期便〉に書かれた「月16万円」では老後が不安…定年直前59歳男性の切実な願い【CFPの助言】
THE GOLD ONLINE(ゴールドオンライン) / 2024年4月26日 11時15分
(※写真はイメージです/PIXTA)
「年金だけでは生活費がまかなえない」と、定年後も再雇用で働く人が増えています。しかし、再雇用は多くの場合、給与が大幅に下がってしまいます。中小企業に勤める59歳のAさんも、定年後の暮らしに不安を抱え「年金をもっと増やすことはできないのか?」と株式会社よこはまライフプランニング代表取締役の井内義典CFPのもとに相談に訪れました。筆者はAさんにどのような助言を行ったのか、みていきます。
年金受給額を増やしたい…老後が不安なAさんの切実な願望
高校卒業以来、とある中小企業に勤める59歳のAさんは、2歳上の妻Bさんと暮らしています。
Aさんはもうすぐ60歳で定年を迎えるため、「老後の資金計画を立てたい」とFPである筆者のもとへ相談に訪れました。
Aさんの現在の年収は650万円(月給45万円、賞与・年110万円)で、定年後の年収は400万円(月給30万円、賞与・年40万円)になる予定だそうです。
「65歳まではとりあえず働こうと思っています。65歳から70歳までのあいだも給与は年収240万円(賞与なし)まで下がるものの、希望すればアルバイト勤務が可能です。体力が持つかわかりませんが、現時点では働ける限り働こうと思っています」とAさんはいいます。
また、Aさんが持参した「ねんきん定期便」によると、65歳からの年金の受給見込額は老齢基礎年金と老齢厚生年金をあわせて月額16万円ちょっとです。
「60歳から給与が下がるだけでなく、自分の年金が月16万円程度。働けなくなったときのことを考えると老後が不安です。年金って、あと5年でいくら増やせますかね?」Aさんは切実に筆者に訴えました。
なお、Aさんの自宅は40歳のときに購入した戸建てで、30年の住宅ローンを組んだため、残り10年はローン返済期間があります。退職金は約1,000万円で、これで住宅ローンを繰り上げ返済しようか考えているようでした。
給与が減っても絶望しないで…国からもらえる「給付金」
60歳で定年を迎えたあと、65歳まで同じ会社で勤務し続ける場合、Aさんには「高年齢雇用継続給付」が支給されることになりそうです。
「高年齢雇用継続給付」とは雇用保険制度のひとつで、60歳より後の賃金が60歳までの賃金と比べて75%未満となった場合に支給されます。60歳以降の毎月の賃金によって給付金額が決まりますが、Aさんの場合、月2万円以上は支給される見込みです。
60歳以降給与が大幅に下がったとしても、雇用保険からその一部が補填されれば、給付金を生活費に充てたり貯蓄に回したりするができることになります。筆者から説明を受け、「これで少しは家計が助かるな」とAさんはほっと胸をなでおろしました。
なお、この高年齢雇用継続給付金については基本的に会社経由での手続きとなります。「会社から案内があるはずですので、支給時にその額を確認してみましょう」と伝ました。
60歳以降も働けば、まだまだ年金は増やせる
Aさんがもっとも気にしている将来の年金額についても、現時点では月16万円ちょっとの見込みですが、 60歳から65歳まで年収400万円で5年間勤務すれば、老齢厚生年金(報酬比例部分)が年額10万円超(月額約8,500円)増えることになります。そうなると、65歳からの年金は月17万円程度です。
これはつまり、年金を増やすチャンスは今後もあるということです。月8,500円というと「少ないな」と感じるかもしれませんが、これが生涯続くとなると、増やさないままよりは安心できます。
また、65歳以降も70歳まで働けば、給与は年収240万円と減ってしまいますが、年金はさらに月5,000円超増え、月17万5,000円になります。
「年金の繰下げ受給」を選べば、さらに増額可能
60歳以降も働く意思があるAさん。65歳まで働けば「高年齢雇用継続給付」が受けられ、65歳以降も給与収入があるようでしたら、65歳からすぐに年金に頼らずとも生活していけるかもしれません。
そうなると、「年金の繰下げ受給」も検討に値します。年金の繰下げ受給とは、65歳から受給できる年金の受給開始を遅らせる代わりに、その分増額した年金を受け取れる制度です。
「ねんきん定期便」にも繰下げ制度について記載がありますが、1ヵ月繰り下げるごとに0.7%ずつ増額されます。
具体的にみていくと、もし、Aさんが65歳から5年(60ヵ月)待って70歳から繰下げ受給をした場合、65歳時点での額に対し42%(0.7%×60ヵ月)プラスとなるため、月17万円×42%で年金は月額24万円超となります。さらに、65歳から70歳までの加入によって増える月5,000円超を足せば、70歳以降の年金の月額は25万円近くになるでしょう。
「へえ……月に24万円〜25万円もあれば、なんとか生活できそうです。働くことと繰下げ制度を組み合わせると、こんなに年金額が変わるんですね」
Aさんは感心したようにつぶやきました。
住宅ローンの繰上げ返済にはデメリットも
住宅ローンの繰上げ返済を検討しているAさんですが、繰上げ返済は金利の節約が可能な一方で手元の資金が不足し、急な出費に備えられなくなる可能性もあります。これらのメリットとデメリットも検討したうえで決める必要があるでしょう。
また、老後の収支計画を立てる際にはAさんだけでなく、妻Bさんの年金収入や就労予定も含めて検討する必要があります。
住宅ローンの繰上げ返済のことはもう少し考えてみることとして、「まずは働けるだけ働いてみよう」と決意したAさんです。
年金制度が複雑であることもあり、Aさんのように、年金や老後の資金計画について悩んでいる人からの相談が増えています。
「ねんきん定期便」などを参照して不明点を確認しながら、老後に備えておくことをおすすめします。今回みてきたような年金の増やし方をあらかじめ知っておけば、選択肢が広がるでしょう。
井内 義典
株式会社よこはまライフプランニング代表取締役
特定社会保険労務士/CFPⓇ認定者
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