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真田広之、プロデューサーは「将軍に近いかもしれない」 還暦過ぎてたどり着いた“初体験”に喜び

クランクイン! / 2024年3月3日 8時0分

真田広之

 真田広之が主演/プロデュースを兼任、そしてディズニーが持つ製作会社の一つ「FX」が制作した壮大な戦国ドラマシリーズ『SHOGUN 将軍』がディズニー公式動画配信サービスDisney+(ディズニープラス)「スター」で独占配信中。窮地に陥った武将・吉井虎永(真田)が、英国人航海士ジョン・ブラックソーン(コズモ・ジャーヴィス)と出会い、将軍の座をかけた戦いに身を投じていく。『アベンジャーズ』『ジョン・ウィック』といった人気シリーズに出演し、日本を代表する名優として世界で活躍してきた真田は、プロデュースという“初体験”で何を感じ、何をもたらしたのか。制作秘話をたっぷりと語ってくれた。

■「畳の縁を踏まないように」日本人としての微調整も

――真田さんは出演者/プロデューサーとして、本作にどのくらいの期間関わられていたのでしょう。

真田:最初は俳優として虎永の役をオファーいただきましたが、それが7~8年前でした。監督が決まり、キャスティングが進み――という段階で一度ストップしてしまったんです。その後、エグゼクティブ・プロデューサーのジャスティン・マークスやレイチェル・コンドウが加わってくれて再び動き出す際に「プロデュースも兼ねてくれないか」というお話をいただきました。

――出番がない日もプロデューサーとして現場に常駐され、小道具や美術、エキストラなどの動きに至るまで細かくチェックされていたと伺いました。

真田:ただ、僕の場合はクリエイティブのことを考えていること自体がエネルギー源にもなっています。確かに、撮影がお休みの土曜日にリハーサルが入ることもあれば、その間にも台本作りは行われていますからメールをチェックしたりオンラインミーティングを行ったりは常にしていて、丸々の休みは恐らく1日もありませんでした。でも「楽しい」という感覚が勝っていましたね。

撮影期間はコロナ禍でもあったため、スケジュール変更を余儀なくされることもありました。そんな中「自分が倒れたら撮影がストップしてしまう」と気は張っていましたし、常にダブルマスクとゴーグルを装着して何とか乗り切ったところはあります。よく撮り切れたなとも感じますし、その分思い入れも強くあります。

――監修を行う上で、どのようなリサーチをして臨まれたのでしょう。

真田:幸いに戦国時代は映像化される機会が多く、虎永のモチーフとなった徳川家康も過去に1度演じていて、石田三成も2度ほど演じる機会があったものですから、自分のバックグラウンドとしてすでにこの時代を学ぶ機会に恵まれていました。その上で今回は原作小説をリスペクトしつつ、80年代のオリジナルシリーズとも違う今回の独自性を生み出したい、とジャスティンとアイデアを出し合いながら脚本を作っていきました。

1980年の『将軍 SHOGUN』ではジョン・ブラックソーンの目を通して「日本を西洋人が垣間見ていく」という形が取られていましたが、今回はそれに加えて「日本のレンズを通して各キャラクターを深めること」を重視しました。日本人の目にイギリス人の航海士やポルトガルの宣教師がどう映っているのか、当時の世界との関わりがどうであったかをもっと多面的に見せることができれば、海外の方にも分かりやすく普遍的な作品になるのではないかと考え、視点を増やしたところが本作の特徴です。

そして、今回プロデューサーとして関われたことで日本人のクルーを呼ぶことができました。時代劇のプロたちが日本各地から集結してくれて、衣装・小道具・所作指導に至るまで各パートにスペシャリストを配置できたのが大きなポイントだと感じています。

――その上で、真田さんが現場で微調整を加えていったのですね。

真田:例えば、床の間の飾りつけで刀が上下逆になっていたり、エキストラの配置を行うのは助監督たちですが敷居の上に立たせたり、畳の縁を踏んだり座布団が設置されていたりということもあったものですから「そこは踏んではいけないんだ」と伝えて…といったようなことを日々行っていました。

ただ、カメラのアングルや照明の関係で「どうしてもそこに立たせないといけない」といったことは出てきます。そういう時は「その位置が大事なら膝から下を切って映さないようにすればOK」といった彼らが求めるものと日本人が許せる範囲の折衷案を考えて、時間内に双方が納得する答えを見つけ出していきました。そうした手練手管は、海外のクルーとの現場でここ20年ほど自分が行ってきたことでもあるため、これまでの学びを全て注入できた作品でもありました。あとは一人でも多くの方に見ていただき、評価していただくのをワクワクドキドキしながら待つばかりです。ついにこの日が来た、という気持ちです。

――真田さんは本作のイベントやインタビューなどで「『ラスト サムライ』から20年かかってようやくキャスティング、スタッフィングにまで関われるようになった」と発言していらっしゃいましたね。

■ようやく得た「プロデューサー」というタイトル

真田:ここ数年ずっと、いち俳優として言える・直せる範囲の限界を感じていました。だからこそ今回「プロデューサー」というタイトルの大きさを痛感しましたね。タイトルのあり/なしでここまで発言権が違うのだと。

虎永にとっての「将軍」というタイトルと近いかもしれません。彼は最初からその座を望んでいたわけではないけれど、将軍になって初めて平和な世の中が作れるようになったところがあります。僕もまた、プロデューサーというタイトルを得たことで最後までこだわって貫けたため、どこかオーバーラップするものを感じています。

――この20年間、真田さんは『LOST』や『ウエストワールド』『ライフ』などなど、多くの出演作で“日本代表”として活躍されてきました。

真田:現場に出る時は自分が日本人の第一印象になることが多々あります。そうするとやはり恥ずかしいことはできません。後輩が海外進出する可能性を邪魔したくもないですしね。基本は日本にいた時と同じことを行っていますが、海外に出るとより“日本人らしさ”を求められます。日本にいる時以上に日本のことを学ばないと、聞かれた時に答えられないため、トレーラーにもさまざまなジャンルの分厚い本を並べて常に準備をしています。そうしたプレッシャーはありますが、日本にいたら「誰かがやってくれるだろう」と怠けてしまうところも海外では責任を持って答えないといけないことで、本当に日々勉強になっています。

――先ほど日本で活動するスペシャリストを現場に連れてこられた、というお話がありましたが、『SHOGUN 将軍』の現場でのコミュニケーションは通訳の方を介して行われたのでしょうか。

真田:そうですね。それぞれのパートに専属の通訳を置いてコミュニケーションを取ってもらい、俳優部においては監督とのやり取り専用の通訳の方がセットに常駐する体制を取りました。

ただ、通訳の方々は言語のニュアンスはちゃんと伝えてくれるのですが、監督が何を求めているのかを具体的にどういう言葉で伝えればいいのかというのは、なかなか難しいものです。俳優としての自分の経験も含めて「こういうことを求められているからこうするといいのでは」といったようなアドバイスを、サブ通訳のような役割で常に行っていました。

俳優同士だからこそ分かることも当然ありますし、「この人にはこういう伝え方をすれば分かってくれる」というのは人それぞれ違うので、撮影が始まって1ヵ月くらいでそうした部分をつかんで、必要な際にはフォローしていました。

――クリエイティブにおける調整は無数にあったかと思いますが、真田さんの中で「特にこれは大変だった」というエピソードはございますか?

真田:たとえプロデューサーとしての権限があったとしても具体的にスタッフ、キャストにどう理解してもらうのか、どういった発注をすればモノがそろうのかなど、時間と予算の戦いが一番気をもんだところではあります。ただ、この現場には文化をリスペクトしてくれる体制が整っていました。

例えば能のシーンは、日本から撮影地のカナダ、バンクーバーまで本職の能楽師をお呼びして、物語に沿ったオリジナルの能を作っていただきました。ただ、舞台をどうしようかという話になり現地のスタッフは「能楽堂を作ろうか」と言ってくれたのですが、独立した劇場にしてしまうと逆にリアリティーがない。そこで、自身の大河ドラマなどでの経験を生かして大坂城(大阪城)の中に特設のステージを作る案を出しました。それに基づいて図面を引いてもらったら「セットのこの部分にコンクリートの柱がある」という話になり、「じゃあこれを木に見えるように覆ってご神木のようにしたらいいんじゃないか」「一つひとつの木も遠近法でだんだん小さくなる」などと図面を細かくチェックしながら作り上げていきました。

そして次は、誰がどこに座るか。「若君はここしかない。石堂和成(平岳大)はこの演目のプロデューサーだからこちら側に座らせて、そうすると落葉の方(二階堂ふみ)と目が合いやすくなる」など、台本と照らし合わせて考えていくのは大変といえばそうですが、僕の感覚としては「面白い」に尽きます。アイデアを求められることも光栄ですし、それがうまくハマった時の喜びたるや、今まで経験したことのない種類のものでした。日本の俳優がいいパフォーマンスをしてくれた時もそうですし、随所に初体験の喜びがありました。

こうした関わり方はできれば長く続けていきたいですし、今後もやりたい人がいれば引っ張り上げて世界に紹介していきたいと思っています。還暦を過ぎて、新たなミッションがスタートした感覚を抱いています。

――本作を経て、今後のものづくりに対する新たなビジョンも生まれてきましたか?

真田:そうですね。いくつか漠然としたアイデアがあります。今回これだけ事前に準備ができていてもやっぱり足りなかった部分はありますし、毎作毎作でそれを補い、反省点を生かして次のステップに進めたらと考えています。

――作品単体の見応えもそうですが、舞台裏を伺うと観賞時の味わいがより増しますね…。素晴らしいお話をありがとうございます。

真田:物語のテーマ性も重要ですが、東西の壁を乗り越えて西洋と日本のスタッフ、キャストが一丸となって教え合い、学び合い、尊敬し合って一つのものを創り上げたことそのものが、一つの現代へのメッセージになっているかもしれません。国境や目の色、宗教の違いを越えていけるというモデルケースになれたらと思いますし、こちら側としてはそうした意義を感じていました。一人ひとりのこだわりや思い入れを画面からくみ取っていただき、何か感じ取っていただけたら、今のこの時代に作った意味があったと言えると思います。

(取材・文:SYO 写真:上野留加)

 『SHOGUN 将軍』はディズニープラスの「スター」にて独占配信中(初回は2話配信、その後毎週1話ずつ配信。最終話は4月23日)。

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