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戦略的サプライヤマネジメントのすゝめーその1-/野町 直弘

INSIGHT NOW! / 2023年4月19日 10時0分

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野町 直弘 / 調達購買コンサルタント

調達購買部門の主要な役割・機能とは、何でしょうか。

私がこの質問に答えるとしたら「サプライヤとの関係性づくり」、「最高の調達基盤づくり」即答します。「最高の調達基盤」とは、「強固な相互信頼関係を長期継続できる仕入先群の集まり(基盤)」と定義しています。

調達購買の役割はQCDの最適化であり、中でも「コスト削減」と言われますが、コスト削減はあくまでも結果であり、優れたサプライヤとの取引ができれば、自然とコスト競争力はつくと私は考えます。

私は、約10年程前から、調達購買部門はイノベーション調達の実現を目指すべきであり、その要素として、カテゴリーマネジメント、ユーザーマネジメント、サプライヤマネジメントの連携、を目指すべきと、日頃から言ってきました。

ただ、その当時はサプライヤマネジメントという概念は普及しておらず、サプライヤマネジメント、ニアリーイコール、サプライヤ評価と考えられており、どのような評価指標にすればよいか、ということに多くの企業の関心はありました。

しかし、サプライヤ評価は、あくまでも手段であり、目的ではありません。目的はよいサプライヤとの連携や、評価が低いサプライヤに対して、改善を図り、QCDを向上させることです。

私は、サプライヤマネジメメントはSRM(サプライヤリレーションシップマネジメント)、SPM(サプライヤパフォーマンスマネジメント)、SIM(サプライヤインフォメーションマネジメント)、SRM2(サプライヤリスクマネジメント)の4つのマネジメントで構成されると、考えています。

SRMはサプライヤ戦略であり、サプライヤ戦略は、購入品目別に策定する必要があります。サプライヤ戦略は、SPMのサプライヤ評価やSIMで管理しているサプライヤ情報を元に策定します。それらの情報を元に、評価と関係性(姿勢)の2軸でポジショニングし、今後どの方向に向かわせるか、を検討する、これが、サプライヤ戦略です。

SRM2はサプライヤに関するリスクマネジメントですが、リスクマネジメントは、購入品目に依存するリスクと購買プロセスに内在するリスク(プロセス依存リスク)に分けられます。BCPや供給リスクは品目に依存するリスクで品目毎、サプライヤ毎にリスクマネジメントを進めなければなりません。供給リスクへの対応策は、1.在庫を持つ 2.マルチ化 3.有利に供給してもらえるような関係性づくり、の3点とその組合せとなりますが、昨今の半導体などの供給不足については、サプライヤ毎に状況が異なり、サプライヤのニーズに応じた施策を進める必要があります。

評価と関係性(姿勢)の2軸で戦略を策定し、具体的な施策へ落とし込んでいくことですが、姿勢(関係性が強く)が高いが評価が低いサプライヤに対しては、評価内容をフィードバック
し、評価を高め、継続的に評価状況をレビューしていく施策につなげます。一方で、評価は高いが、姿勢(関係性)が低いサプライヤに対しては関係性強化の為の施策をうっていかなければなりません。

こういう一連のマネジメントの仕組みによって、サプライヤ戦略を実現し、ひいてはQCDの改善を図っていくのが、サプライヤマネジメントです。

従来のサプライヤマネジメントは、このように進めるものですが、そこには課題もありました。どちらかというとバイヤー企業がサプライヤをマネイジするという上から目線の取組みで
あること、会社としての取組みになっている企業はあまり多くなく、調達購買部門やバイヤー個人としての取組みであったこと、などです。特にサプライヤ評価の情報は各事業や各工場別の評価であり、全社としての情報収集、活用ができている企業は少数だったと言えます。

最近、企業をを取り巻く環境が大きく変わってきたのです。まずは、一昨年の春くらいから始まった供給不足、サプライチェーン分断、地政学リスクの顕在化などです。

コロナ後の需要増で生産キャパ不足、ウクライナ問題などの地政学リスクの顕在化、コロナによるロックダウンによる物流、生産の途絶など、これらの事案によって、重要なサプライヤを
特定し、供給を切らさないような関係性の構築、場合によっては在庫を持つ、長期発注を行う、などの手立てが必要になってきたのです。

また、構造的には、特に日本企業に言えることですが、川上サプライヤが相対的に力を持つようになってきました。特に、ハイテク業界などでは、製品メーカーよりもEMSや部品メーカーが力を持つようになっています。こういう力関係の変化の中、サプライヤが売り先を選択するような時代になりつつあります。

次は、サプライヤの事業目的や価値観の変化です。カーボンニュートラルやSDG's、ESG投資、人権DDなどの取組みに代表された価値観の転換が進んでいます。同時に相対的に力を持ち始めた川上側のサプライヤが、自らの価値観にあった顧客を選別する時代になってきているのです。

今までは生産計画や技術情報の共有などは多くのバイヤー企業からサプライヤに対して行われていましたが、今後はパーパスやビジョンの共有まで広がり、パーパスを共有できない顧客への販売は行わない、といった状況もでてきています。

こういう環境変化によって、SIMやSPMで収集してきた情報の範囲が広がってきているのです。具体的には、先に述べたような、カーボンニュートラル、SDG's、人権DDへの取組み姿勢、BCP情報、紛争鉱物対応情報、関係性(姿勢)だけでなく、パーパスの共有度合、ECOVADISなどの外部情報などなど。また、調達購買部門やバイヤーとしての情報収集や評価ではなく、全社的観点でデータを効率的に収集・一元管理し、情報収集・分析・活用を進める必要がでてきているのです。

このような環境変化によって、従来のサプライヤマネジメントの取組みだけでなく、より進んだ「戦略的サプライヤマネジメント」が求められ始めたと言えます。

次回は「戦略的サプライヤマネジメント」が従来のサプライヤマネジメントとどこが違うのかを説明し、その取組みや導入の進め方について、理解を進めていきましょう。

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