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【インサイトナウ編集長対談】自社で実践しながらつくりあげた「デジタルセールスメソッド」だから自信をもって お客様に提供できる/INSIGHT NOW! 編集部

INSIGHT NOW! / 2023年5月8日 9時0分

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INSIGHT NOW! 編集部 / インサイトナウ株式会社

お相手
荻野 永策様
株式会社ALUHA 代表取締役社長

実績のジレンマ、下請けのジレンマからの脱却

猪口 株式会社ALUHA様は今年で20周年だそうですね。おめでとうございます。

荻野 24歳で独立して、今ちょうど20年経過し、21年目に突入しました。

猪口 24歳で独立されて、事業メニューを確立したうえで20年継続されるというのは、並大抵のことではありません。よほど強い熱意、決意がおありだったと思います。

荻野 語れるほどのものでもないのですが、私は兵庫出身で、金沢工業大学に入学し、情報工学、ソフトウェア加工学の研究をしていました。マーケティングのマの字も知らずに、システム開発やプログラミングの研究をしながら、大学院の修士課程へ進み、24歳で大学院を修了。当時は就職するつもりでいたのですが、20年前は就職氷河期で先がどうなるか分からないような厳しい状況でした。これから先、大手に就職しても終身雇用であるわけでもなく、年功序列で給料上がっていくわけでもないということも当時から分かっていましたから、そうであれば若いうちに起業しようと思いました。仮に失敗したとしても、若ければ正直何とでもなります。若ければ徹夜で仕事もできるしとも考えて、早めに決断しました。

猪口 本当に、ここまで来られるのは、順調なことばかりではなかったと察します。

荻野 初年度の売上は年間100万円ぐらいしかありませんでした。それも、お世話になった大学の教授の紹介で、自分の実力ではありませんでした。私は弊社の創業期を「実績のジレンマ」と呼んでいます。製品を作って売りに行っても、「実績は?」と言われてしまって売れないのです。永遠にその繰り返しでした。これから、金なし、コネなしで起業する若い人が出てくると思いますが、最初にぶち当たるこの「実績のジレンマ」を突破しないことには、売り上げを作れません。アイディアや商品作りだけは大学で学んだため、いろいろなことができたのですが、まったく売れません。「本当に大丈夫なの?」「何かあったらどうしてくれるの?」という問いかけに対して、そこを突破する話術もなければ、売り方も知らない。最初の1年はものすごく苦労して、そのジレンマにさんざん悩みました。やっぱり就職しておけばよかったと、かなり思い悩みました。

猪口 よく分かります。サラリーマン経験であっても、「こういうことをやっていました」と言えば、ある程度の信用にはなると思いますが、就職せずに独立されたわけですからね。何かジレンマを突破するきっかけはあったのですか。

荻野 その頃、携帯電話のテクノロジーの発達もあり、弊社は携帯のメール配信システムを作っていました。「これ面白いね」と徐々に採用が決まりはじめ、実績もできてきました。それでなんとか「実績のジレンマ」を乗り越えることができました。でも、なんとか乗り越えたと思ったら、次に出てきたのが「下請け脱却のジレンマ」です。売上が立ってもほとんどお金が残らない。下請けなので、納期と金額に追い詰められていきました。ある下請け案件で、売上金額は膨大な金額になったものの、粗利が少なく、手元に全然お金が残らないということがありました。つくづく下請けの仕事が嫌になってしまいました。

だからといって直請け案件がすぐに増えるわけではないので、下請けからどう脱却するかさんざん悩んだ時に、自分のWEBサイトで、自分の代わりに営業してくれる分身を作ろうと思いつきました。これが2008年のことです。「自分の代わりに営業するWEB」というコンセプトを考えて、そこで自分の商品を売りながら、目先の売上は、メール配信システムの開発や販売などの下請けの仕事で作りました。そして、WEBの成果が出てきたら、徐々に下請けの仕事を減らしていきました。

猪口 その頃に、御社のいわゆるBtoBマーケティングの事業メニューのコンセプトが生まれたわけですね。

荻野  はい。もともと弊社はBtoBのWEB制作やシステム開発をしていたので、弊社自身がBtoBビジネスです。「自分の代わりに営業するWEB」を自社サイトで実践しながら、そのノウハウを5年6年くらいで体系化しました。これがきっかけとなって、BtoBのWEBマーケティング支援から、BtoBのデジタルマーケティング支援、そしてBtoBマーケティングの支援へと、徐々にステージも上がりました。それに伴い、コンセプトも「自分の代わりに営業するWEB」から「自分の代わりに営業するデジタル」と進化し、それが「デジタルセールスメソッド」として体系化されています。

猪口 自社の営業の仕組みづくりと商品づくりが同時にできていったということですか。マーケティング会社というのは、意外に自社のマーケティングはおろそかになってしまいがちですが、早い時期から両軸で考えられたのですね。

荻野 模索しながら、自分でノウハウを貯めて、たくさんの失敗も経験してきました。自分のノウハウが商品になるので、マーケティング的に言えば、「売れる商品作り」と「営業活動」を同時並行でやってきたわけです。弊社のような小さい会社では、商品開発は開発部門、営業は営業部門というわけにはいきませんので、同時にやるほうがリソースをうまく使えます。そのような判断で、オウンドメディアを自分で始めて、コンテンツマーケティングもBtoBに特化してやり始めるなど、いろいろなことをコツコツ蓄積して今に至ります。

猪口 御社の創業理念である「営業しない会社の実現」ですね。

荻野 そうです。「デジタルレイバー」という言い方もしますが、自分の分身をデジタル上に作り、自分の代わりにデジタルが営業してくれれば、営業部の存在しない会社が実現できます。それをまず自分の会社でやって具体性を持たせて、それに再現性をつけてお客様に提案していきたいということです。まだ「営業しない会社」の道半ばではありますが、これからどんどんデジタル化したいと思っています。

そして、そんな時に発生したのが新型コロナです。コロナの影響でBtoBの営業部門が対面営業できなくなり、WEBやデジタルを使って営業する必要が出てきたのです。「営業DX」という言葉がコロナ禍で盛んに言われるようになって、一気に直受けの相談が増えました。

猪口 見事にジレンマを脱却されましたね。メソッドの体系化はご経験の中で作られたのでしょうか。

荻野 弊社の創業期にとってもお世話になったマーケティングの師匠のような方がいて、その先生が書いた本を読んだりもしましたが、やっぱり自分でやらないと分かりません。自分でやってみて、実際に数値でKPIを取って、こういうことをやったらこうなると方程式化していく。そうやって理論理屈を体系化していき、自分の中でフレームワークにしていきました。

自社で実践しているからこそ説得力が増す

猪口 今、BtoBマーケティングが盛んです。理論や体系はいっぱしに話せても、成功事例として自分が関わった他社さんの事例しかお持ちでない人もいます。荻野さんの場合は、ご自身の会社で実践しながら体系化されているので、説得力があります。

荻野 弊社のお客様にも、「荻野さんの会社でやっているのだから、うちらもやってみよう」とよく言っていただきます。

猪口 僕は「こうやったら儲かりますよ」と言うコンサルに、「自分でやったらどうですか」と言っていますよ(笑)。

荻野 その通りだと思いますね。絶対に儲かる方法が本当にあるなら、誰にも言いませんよね。私は、マーケティングや営業には絶対の方程式はないと思っています。だけど、勝てるパターンがある。営業には売るためのシナリオがあって、それが勝ちパターンと言われるわけですが、そういったものをどうやって見つけていくか。マーケティングは、絶対に売れるかといったらそんなこともなくて、最終的には売れる可能性をどうやって上げられるかだけの話です。マーケターの仕事とは、売れる可能性をどうやったら高められるか、エビデンスをどうやって見つけられるかであり、そこをうまくデータ分析して、整理することです。

猪口 今可能性を上げるとおっしゃったのは、営業であれば、お客様とのタッチポイントをどうやって作り、それをどうやって上げていくかだと思うのですが、その辺のポイントとして荻野はどうお考えですか。

荻野 当たり前のことでありながら、BtoBマーケティングの現場で関わっていると意外と皆忘れがちなのが、お客様の課題をデータベース化することです。タッチポイントを継続的に作っていくことは、中長期的に時間がかかることです。BtoBでは、知り合ってすぐに買ってくれることはあまりありません。値段が高くなればなるほど、相手が大企業になればなるほど時間がかかるものです。時間がかかる中で継続的に接点を作ろうと思うと、継続的に情報提供できるネタが必要です。このネタの作り方には二つの目線があります。ものづくりと一緒で、プロダクトアウトという自分目線のネタなのか、お客様が知りたいことを目線にしてネタを作るのかという二つの目線です。コンテンツマーケティングは、マーケティングと言っているわけですから、お客様が知りたいことを把握して、それに合わせて役立つ情報を出すのが本質です。

一方、プロダクトマーケティングになると、「うちの商品にはこんな強みがあって、こんなすごいことができますよ」と自社目線で言うわけです。この両方が必要なのですが、継続的にタッチポイントを作っていくのであれば、「お客様の知りたいことは何なのか」を、情報の発信側が把握する必要があります。

そこで必要になるのが「課題データベース」です。当社では2015年から作っていて、デジタル施策やリアルのセミナーなど、さまざまなところで蓄積したお客様の課題、悩み、解決したいポイント、不安点をデータベースに溜めています。それを見ながら時間軸でも観察して、昔はこういった課題が多かったのにコロナ禍になって突然こういう課題が増えてきたなど、ニーズの変化を追いかけることができます。また、それに合わせてコンサルメニューを考えたり、コラムを書いたり、コンテンツマーケティングを行ったりすることで、できるだけエビデンスを持たせて、相手にとって価値のある情報を作っていく。そしてそれを、メールでもWEBサイトでも何でもいいので情報発信していく。そこがポイントになると考えています。

猪口 ニーズばかりでも他社とあまり変わらないものになるでしょうし、自分のプロダクトだけだと独りよがりな話になります。バランスなのでしょうね。例えばコラムを依頼されて、キーワードだけを並べて、それを盛り込んでほしいと言われると、どこが書いても一緒のものになってしまいます。キーワードとしてどのような強みを出すかが大事になりますよね。

荻野 おそらくコンテンツを作ることが目的になっているのでしょうね。手段なのか目的なのかが問題です。コンテンツマーケティングをやると言うと、コンテンツの量を作れればいいと思う方もいます。量は必要なので全否定はしませんが、何でも作ればいいという話ではありません。ターゲットとしているペルソナモデルを作っているのであれば、ペルソナの人間が役に立つと思えるコンテンツになっているかどうかが重要です。

WEBで問い合わせや資料請求があったお客様のほうが契約率も段違いに高い

猪口 先ほど、コロナ禍で、デジタルセールスのニーズが高まったというお話しでした。事業者側も、コロナで暇になって何もしなかった会社と、荻野さんのように自分なりの方策を考えてアプローチしていった会社とで大きく差がついてきたのでしょうね。

荻野 そうだと思いますね。二極化が進み、時が経てば経つほど差がついてくると思います。ある調査で知ったのですが、BtoBで新しい商材やサービスを買う時、最初に参考にする情報源が、昔は営業担当者の説明だったのが、最近はWEBサイトで調べてから検討することが増えてきたそうです。要するに、最初の取引のきっかけが企業のWEBサイトになっているという状況です。そういう意味では、自分の商材がWEBで売れるわけがないと決めつけている人たちは、機会損失を起こしている可能性があります。

コロナ禍になり、デジタルマーケティング推進部、DX推進室、営業改革部といった部門がいろいろな会社でできました。デジタルを使った営業、デジタルセールス、WEB営業、DX、デジタルマーケティングなど、いろいろな言い方がありますが、お客様が言うことはほとんど一緒で、「デジタル上に営業担当を作りたい」ということです。

猪口 なるほど。これは反省点と言いますか、コンサルは、お客様のことを知らない限り有効な手立てができないというのが持論なのですが、今のお話のようにWEBで接点を取って、新規のお客様を増やす場合、やりにくさのようなものはありませんか。

荻野 数を確保するという面ではやりにくさはありますが、質という面では非常にやりやすいです。弊社の場合、リアルの展示会やセミナーで知り合ったお客様よりも、WEBで問い合わせや資料請求をしてくれてくれたお客様のほうが契約率は段違いに高いです。自分のWEBサイトでいかにコンバージョンをとって、その後、個別相談、見積もりに持っていくかという流れ、先ほど言ったような勝ちパターンがある程度できあがっているからです。そこに持っていきさえすれば高確率で決まるので、そこに持っていくにはどうしたらいいのかを考えればよいです。

セミナーや展示会が悪い施策というわけではありませんが、当社に関しては、私が受けられる限界値がやはりあるので、そこの量を超えないように見込み獲得からナーチャリングして、クロージングをイメージしながらやっていかないといけません。そうであればWEBサイトだけで十分で、下手に他のものを入れるとノイズになってしまいます。

「タイムイズマネー」迷うぐらいだったら早いほうがいい

猪口 荻野さんのご経験から、20代30代の若手で起業を考える方に何かアドバイスはありますか。

荻野 今の会社に不満があって、転職するか、起業するか、居続けるか悩む人がいたとしたら、転職と居続けるに関しては経験がないので何も言えませんが、起業に関しては一つだけ言えることがあります。昔からの格言にもありますが、「タイムイズマネー」です。もし起業するか迷っているのであれば、迷うぐらいだったら早いほうがいい。このことを判断材料の一つに入れてほしいですね。やるなら早くやったほうが早く軌道に乗るし、若いうちにやるほうが、失敗しても精神的なダメージが比較的少なくて済むし、後になって復活が早い。

また、創業者は、コネクションゼロをイチにする、売り上げゼロをイチにする、顧客ゼロをイチにするなど、ゼロイチ業務の能力を身につけないといけません。ですからあえて何もない状態で戦いに出るのもアリです。ただしひどい苦労はしますけど(笑)。

猪口 若い人がいいのは、何といっても思考が柔軟ですよね。今、リスキリングが話題になっています。若い方でも、会社がフォローしているケースもありますし、自分で勉強する方もいます。何か身につけたい、何か勉強したいと思う方も増えています。

荻野 独自のノウハウを組み立てることができたら強いと思います。インサイトナウやさまざまなメディアにたくさんの記事がありますから、そういったものを使って情報収集をする。例えばSEO対策であれば、いろいろなプロセスが見つかりますから、それをつまみ食いして、自分式に書き換えて、実践してみる。うまくいけば、ある程度再現性を持たせられる可能性があります。リスキリングも、頭でっかちにならずに自分なりのノウハウや体験を形にして、再現性を持たせて、会社での自分の業務で使う、将来独立した時の武器に使う。そんなふうに記事を活用してもらえると、私ら書いている側からすると一番嬉しいですね。

猪口 実際に荻野さんもそうされてきましたよね。

荻野 コンテンツには先人たちが残した知恵があります。疑問に思うようなことを書いている人も中にはいるかもしれませんが、そこを見極めるのもインターネットの面白さです。そこを見極めて、使えると思ったら、頭でっかちにならずに素直にやってみる。うまくいったら自分流のプロセスとして落とし込んで、結果が出る可能性が高いプロセスをフレームワーク化、マニュアル化していく。そういったスキルを身につけてもらえたらいいですね。

猪口 オリジナルといっても本当にちょっとしたことでいいわけです。これだけ情報が出ていて、自分と同じような意見もたくさんあります。本当にちょっとだけでいいから、自分なりにまとめるといいですよね。

荻野 そうやって小さい成功体験を積み上げていく。こうすればうまくいく可能性が高いという独自の考え方、独自の何かは形として見えないものですが、それを作ってもらえたら、会社の中では重要な人材になるだろうし、起業した時にも大きな武器になると思います。

猪口 何より仕事が楽しくなりますよね。

荻野 やりがいも出てきます。それをオンラインで、出社せずに自宅でできるようになれば最高でしょうね。

猪口 20周年は本当に素晴らしいですし、このままいくと40年50年いきそうですね。その頃には2代目もいらっしゃるでしょうね。荻野さんのますますのご活躍を楽しみにしています。



荻野 永策
株式会社ALUHA 代表取締役社長

BtoBに特化したマーケティングコンサルティング、営業戦略立案支援、営業DX支援、マーケティングDX支援を行なっている株式会社ALUHAの代表。

コーポレートサイト:https://www.aluha.co.jp/

サービスサイト:https://btobmarketing.aluha.net/

コンサルティング実績:https://btobmarketing.aluha.net/case/customer/

セミナー・講演実績:https://btobmarketing.aluha.net/case/btob-marketin...

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