就活解禁の3/1を迎えて 真に学生を呼び込むために/増沢 隆太
INSIGHT NOW! / 2018年3月2日 7時7分
増沢 隆太 / 株式会社RMロンドンパートナーズ
1.どんどん早くなる就活
大学と財界の合意である経団連申合せにより、3/1広報解禁、6/1採用解禁というスケジュールが決められました。ちなみに安倍首相肝いりで就活早期化に待ったをかけた2016年のみ、8/1採用解禁という変則日程は、あまりの混乱と不評さから1年で終了し、現在の3/1・6/1でやっと定着を見ています。
しかしながら就活早期化には反対しながらインターンシップは促進するというダブルスタンダード推進によって、実際には「インターンとさえ名乗っておけば何でもアリ」という状態が現在の就職活動です。
結果として採用はチキンゲーム化し、他より少しでも先に良い学生を採りたいということで、早ければ3年次の夏くらいからインターンシップと称する囲い込みを行う企業もあります。結果として、3/1・6/1はそれぞれ実質前倒しとなり、3/1は「広報活動しながらも学生を選別するスタート日」、6/1は理論上「その日に選考してその日に内定を出す日」となりました。
「内定」という言葉を使わずにさらに先行する企業も少なくなく、3/1を迎える前に「内」内々定を得た学生も出ています、それも超上位校だけでなく。とはいえ、国公立大学中心に、大学側は3/1を墨守する傾向があり、結果としてどれだけ企業が焦って前倒ししても、すべての採用充足ができる訳ではなく、3/1はやはり実質的には就活解禁と呼べるのが現在の状況でしょう。
2.学生はどう動く?
私は今年度、3つの大学で通年のキャリア講座を担当し、また並行して単発のキャリアセミナーなどをいろいろな大学で行っています。現在進行形ですが他にも、就活情報会社のイベントや説明会の基調講演なども10ヵ所以上で行っており、学生の動きは全体的に緩やかだと感じています。
いち早く準備や対応を進めている上位校の一握りの学生以外、上位であれ中堅であれ偏差値序列にはあまり関係なく、採用環境の良さから安心感を持っているのではないでしょうか。
これは「売り手市場」であることを認識しているというより、(それもあるにしても)むしろ2018卒就活の先輩、現学部4年/修士2年から「楽だった」とか「一人で内定いくつも獲った」などの成功談を聞いているからではないかと感じます。
確かに企業の採用意欲はかつてないほど高く、人手不足状況は現在も続いています。ただし、バブル採用と異なるのは、「良い人材」に対する採用意欲が高いという点です。学生なら誰でもという企業ばかりという訳ではないことを認識していない学生は少なくありません。
一方全体的に自己肯定感が低く、自信を持てない学生が全国的に多い世代です。いくら景気が良くとも、それは油断しているのではなく、単に自分から行動することが出来ずに結果として、動きが鈍っているという面もあるだろうと思います。
3.学生を呼び込む基本
3/1前から、「キャリアセミナー」や「OB報告会」などのように名を変え、各大学などで実施されている合同企業説明会。私が講演に呼ばれた場合は必ず知名度の低い、B2B系企業を具体例に挙げ、実際に説明ブース訪問を促します。重要な点は、学生に訪問先選択を任せず、積極的に介入して無理にでも訪問を促すことだと思います。
企業のどこを見て、何をコミュニケーションすべきかというところまでガイドすることで、合同説明会の成果も確実に上がります。自然の流れに任せたりせず、学生の自由意思や希望ではなく、何らかのガイドをしなければ、テレビCMもない、知名度もない企業には人が集まりません。つまり呼び込むための仕掛けが欠かせないのです。
就活イベントなどではクオカードプレゼントやスタンプラリー式に回遊を促すことも多いのですが、そうしたニンジンで釣る方式より、少なくとも就職という人生の一大事に臨んでいる学生ですから、きちんとした情報提供こそが正統かつ効果的だといえます。
基調講演を個別説明前に行い、このような企業の見方や企業との接し方を教授するのは確実に効果が出ています。有名人など客寄せゲストを呼んでもブース回遊には効果は期待できません。むしろ学生への情報提供と説得力こそ即座に効果が出るといえます。
企業側は変に学生に迎合して、クサいものにフタするようなきれいごとのみの説明にせず、リアルな良いことも悪いことも情報開示することで信頼感が得られます。特にネガティブな情報を上手に伝えるコミュニケーション能力は、企業説明会では欠かせないでしょう。
自然ではなく、意図的なガイドと、説得力ある説明の両輪によって、知名度の低い企業も十分人材獲得の可能性はあります。焦って強引な囲い込みをしたところで、恐らく今の学生は逃げるでしょう。それも無断辞退のような最悪な形を取る学生もいるだろうと思います。地道に誠実に、説明を通じて学生のファン作りをしていくことは結局最も確実な採用実現になると思います。
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