1. トップ
  2. 新着ニュース
  3. 経済
  4. ビジネス

海賊版サイトに過去最大級の賠償額 それでもユーザーは「負荷」の低いものを選び続ける 出版社の解決策は?

ITmedia ビジネスオンライン / 2024年4月26日 14時45分

 つまり海賊版サイトを閲覧する手間やリスクと、公式サービスを利用する価格の比較と考えることができる。これで価格の負荷がリスクの負荷を下回れば、海賊版サイトは使われなくなるといえる。

 電子書籍でも同様のことがいえる。初回の各種情報提供さえ完了すれば、あとは海賊版サイトのリスクと価格の比較に落とし込むことができる。

 先の訴訟の度重なる報道や、官公庁による啓蒙(けいもう)活動によって、海賊版サイトの使用がハイリスクであることが浸透すれば(違法のため当然ではあるのだが)、「金銭を支払う負荷」を「リスクを取る負荷」が上回り、結果として公式のチャネルが選ばれるようになるはずだ。

 ただ、先行事例のNetflixを始めとしたオンラインストリーミングサービスにおいて昨今風向きが変わっている。海賊版サイトの利用が再び増え始めたとの調査結果が出たのだ。

 原因として考えられるのが、ストリーミングサービスによる値上げと、強制的な広告視聴の導入・増加である。先の図にのっとると、価格帯が上がれば当然負荷は上がり、そして動画視聴に広告視聴が必須となれば更にユーザー負荷は増す。

 ストリーミングサービスを利用する上での負荷が増大することで、海賊版サイトの方が低負荷と感じる層が増え始めたとも考えられる。特に価格については、例えば同じ1000円であっても値下げした1000円と値上げした1000円では負荷の感じ方が異なるため、コントロールが難しい要素でもある。

●出版社に出来ることは?

 オンラインストリーミングサービスにおいては、事業者がサービス維持・収益拡大に向けて行った値上げと広告導入が、ユーザー離れと海賊版サイトの利用を促進している可能性がある。

 では電子漫画が同じ轍(てつ)を踏まないためには何が必要だろうか。価格だけ見れば、漫画の単行本は1990年代と比較して40~50%程度値上がりしており、負荷の増大は免れない。提供側もそれを考慮し、また新たな顧客獲得・消費につなげるべく、下記のような「電子版ならでは」の取り組みを行っている。

・自社漫画アプリでの1話売り(雑誌掲載時の1話単位で販売)

・自社漫画アプリでの複数雑誌定期購読

・電子書籍プラットフォームでのポイント増量キャンペーン

・過去作品の再編集(ストーリー上の区切りで再構成)

・過去作品のカラー版の作成・販売

 特にポイント増量キャンペーンは近年の人気作品も含めて30~50%分のポイントといった高還元率になることも多く、定期的にSNSなどでも話題に上っている。また現状の取り組みを見るに、(1)ライトユーザーへの低価格での提供、(2)雑誌派への複数雑誌定期購読の提供、(3)単行本派へのポイントキャンペーン・付加価値提供および買い直し需要の喚起、と一通りの施策は打っているように見える。

この記事に関連するニュース

トピックスRSS

ランキング

複数ページをまたぐ記事です

記事の最終ページでミッション達成してください