1. トップ
  2. 新着ニュース
  3. 経済
  4. ビジネス

海賊版サイトに過去最大級の賠償額 それでもユーザーは「負荷」の低いものを選び続ける 出版社の解決策は?

ITmedia ビジネスオンライン / 2024年4月26日 14時45分

 おそらく、ユーザー負荷を軽減させる方向の、短期的に可能な取り組みは一通りやりきっているのではないか。

 長期の目線で考えると、日本の出版社横断での定期購読(web・アプリ)や、過去作品の提供プラットフォーム構築などが考えられる。もともと消費者目線では「本屋」という共通プラットフォームでそれぞれの嗜好に合う漫画を手に取っていたわけであり、出版社単位で(もしくは雑誌単位で)サービスが分かれていることは、それだけで負荷となる。

 もっとも、消費者からするとすでに利用している電子書籍プラットフォームと並行する形になるためハレーションが生じる。ただ、海外プラットフォーマーに売り上げの相当分が流れている状況は改善するべきだ。

●海賊版vs.業界全体の戦い

 消費者がコンテンツを楽しむために支払った対価が、日本の出版社および漫画家・クリエイターに届かなければ、持続的な成長は難しい。海賊版への対策、ユーザー負荷の軽減、漫画家およびクリエイターへの対価。今後の出版社にはこれらのバランスを保ちつつ、自社の利益も確保し市場を成長させるという難しい舵取りが求められる。

 本稿では今なお続く海賊版サイトの話題を導入とし、電子漫画における出版社とユーザーのあるべき関係性について考察した。漫画はいまやエンターテインメントの一つではなく、日本の文化でありアイデンティティーである。

 一方で、本稿に記載した障害や難点は多く残っている。また、映画や音楽と比較して、日常的にはオンラインサービスを利用し、非日常的な体験を求めてオフライン(ライブ・映画館)を楽しむといった拡張性が小さいという課題を持つ。

 漫画業界が継続的に成長し、文化を次世代に継承していくためには、本稿で見てきた課題の解決が求められる。そのためには、漫画家やクリエイター、出版社、ユーザーが協力し合い、業界全体で革新的な取り組みを行う必要があるといえる。

●著者プロフィール:滑 健作(なめら けんさく) 

 株式会社野村総合研究所にて情報通信産業・サービス産業・コンテンツ産業を対象とした事業戦略・マーケティング戦略立案および実行支援に従事。

 またプロスポーツ・漫画・アニメ・ゲーム・映画など各種エンタテイメント産業に関する講演実績を持つ。

この記事に関連するニュース

トピックスRSS

ランキング

記事ミッション中・・・

10秒滞在

記事にリアクションする

記事ミッション中・・・

10秒滞在

記事にリアクションする

デイリー: 参加する
ウィークリー: 参加する
マンスリー: 参加する
10秒滞在

記事にリアクションする

次の記事を探す

エラーが発生しました

ページを再読み込みして
ください