[大原ケイ]【安倍首相スピーチに見える未来予想図】~経済格差の拡大と行政への不信~
Japan In-depth / 2015年5月5日 7時0分
安倍首相の訪米は“resounding success(目覚ましい大成功)”だったと言えよう。オバマ大統領にとって。
さすがはノーベル平和賞を受賞するほどのその手腕である。諸外国には外交音痴、国内共和党のタカ派には腰抜けと思わせ、昨年の中間選挙で大敗、民主党の議席を多く減らしてlame duck(実質的権力を失った時期)となってからのオバマ大統領は、イラク戦争終結、イランの核兵器抑制、キューバとの国交回復、と外交面で確実に成果を上げている。そして今回の安倍首相訪米はTPP(環太平洋戦略的経済連携協定)に王手をかけたAsia Pivot(アジア基軸)政策の集大成だ。
オバマ大統領も下手に日本に対しベタベタして見せたら中国や韓国がうるさいとわかっている。今回の訪米でも、国賓として迎えながらも、実際に膝つきあわせたのは、28日ホワイトハウスでの首脳会談と、室内での(いつもはサウスローンに張られた大きな野外テントで400名収容)晩餐会で(その半分の200名がキャパシティー)こぢんまりと済ませた。
翌日の米議会での安倍首相のスピーチも、デリバリーは別として素晴らしい内容だった。オバマ政権にとって。事前に念を入れたチェック体制で安倍の暴言を回避しただけでない。中国系ロビイストに操られたマイク・ホンダ下院議員がかき集めた「戦争責任を謝罪せよ」という公式書簡(とてもアジアの歴史を把握しているとは思えない議員たちが、ホンダ議員とどういう取引をしたのか、20数名の連名で署名していたぼやけた要請書)に負けないぐらいこれまたぼやけた「全戦没者に対する追悼の意」を表明させ、ジョー・バイデン副大統領がそれをバックアップする発言で「ちゃんと謝ってたじゃないか」とフォローする周到さだ。
安倍首相の訪米は「いちおう」アメリカのマスコミでもトップティア枠(新聞で言えば一面記事、テレビニュースで言えば、最初のコマーシャルに入る前の時間帯)の扱いで伝えられた。
だが、一般のアメリカ人の興味関心はそこにはない。時期を同じくして、首都ワシントンから東海岸沿いにわずか60キロほど北上したボルチモアの町で暴動が起き、強奪や放火が伝えられ、州兵が出動し、戒厳令とはいかないまでも門限が敷かれる騒ぎになったからだ。
昨年から全米のあちこちで似たような警察による暴力、つまるところは白人警官が丸腰の黒人を正当な理由なしに射殺・絞殺した事件が相次ぎ(実は今までも起きていたが、携帯電話の録画機能により、表沙汰になる証拠が残りやすくなった)、デモが起きている。そのデモに対し、警察が強硬な態度で、知事が武装した州兵を送り込んだりするのが原因で一部、暴動になった。
-
- 1
- 2
この記事に関連するニュース
-
【独占取材】岸田首相が本誌に語った「防衛力の強化」と「外国人労働力」の必要性
ニューズウィーク日本版 / 2024年5月10日 16時4分
-
岸田政権はまだまだ続く可能性が高い…政治的には詰んでいる岸田首相が「続投に自信満々」となっているワケ
プレジデントオンライン / 2024年5月8日 9時15分
-
パレスチナ支持の学生運動を激化させた2つの要因
ニューズウィーク日本版 / 2024年5月1日 12時0分
-
60年代学生運動『いちご白書』再び、ニューヨークのキャンパスが燃えている
ニューズウィーク日本版 / 2024年4月24日 11時30分
-
安倍元首相の不毛な宣言が日韓関係の改善を縛る 元徴用工問題、日本も人道的に歩み寄るべきだ
東洋経済オンライン / 2024年4月20日 9時30分
ランキング
-
1米大使、初の与那国島訪問=台湾情勢巡り中国けん制
時事通信 / 2024年5月17日 21時8分
-
2北朝鮮の孤児院で乳幼児7人が栄養失調で死亡 職員らが子どもに与える食糧を横領していたとして逮捕、食糧事情の悪さが浮き彫りに
NEWSポストセブン / 2024年5月18日 7時15分
-
3ニュース裏表 峯村健司 中国監視船内に2カ月拘留中の台湾軍人…軍事行動・スパイ活動の嫌疑「意図的に拘束」か 台湾有事〝最前線〟金門島ルポ・第2弾
zakzak by夕刊フジ / 2024年5月18日 10時0分
-
4ロシア軍前進も「状況安定化」 ウクライナ、東部態勢強化
共同通信 / 2024年5月17日 19時41分
-
5米テキサス州ヒューストンでハリケーン並み暴風雨、4人死亡
日テレNEWS NNN / 2024年5月18日 11時12分
複数ページをまたぐ記事です
記事の最終ページでミッション達成してください