[久峨喜美子]【日本でのLGBTへの理解、何故低い?】~我が国独自の“自由”と“性”概念に起因~
Japan In-depth / 2015年7月3日 23時0分
つい先日からFacebookやTwitter上で、プロファイルピクチャーをレインボーカラーに代えるユーザーが増えているのは皆さんもお気付きのことと思う。この祝福ムードは6月26日、米連邦最高裁が同性婚を憲法上の権利だと判断したことを受け、全米に限らずヨーロッパにも広がっている。同性婚を認めている国々の各都市では、陸橋や高層ビルをレインボーカラーに変える等、すっかりお祭り騒ぎだ。
全米での同性婚の合法化は、LGBT、所謂性的少数者の権利保護の促進という観点から賞賛されている。しかし日本では残念ながら同性婚は合法化されていないため、同性婚を認めている国が提供しているような異性婚と同様の法的地位を認めるシビルユニオン等の法的措置が存在しない。
日本国憲法第24条でも明記されている通り、日本では憲法上異性間の婚姻しか想定されていない。2月に掲載された山田氏による記事でも明らかにされている通り、渋谷区や世田谷区等での婚姻に関する画期的な条例案提出の流れはうかがえるものの、日本でのLGBTへの社会的な関心は未だに欧米に比べて低いと言っていいだろう。
こうした日本社会における性的少数者への理解の低さはどこから来るのだろうか?婚姻関係は、なぜ「両性」の合意においてのみ基づいていないといけないのだろう?なぜ「同性」はその中に含まれてはならず、或はなぜ人々は自ずから性別を選択してはいけない、という価値観が根付いているのだろうか?
こうした性に関する社会的閉塞性は、二つの事実に起因する。
一つは、日本が保持し続けている欧米とは異なる「自由」概念だ。明治政府が法制度を含めた「西欧文化」を取り込もうと努力した時代、日本には「自由」という概念がまだ存在していなかった。当時の啓蒙思想家、箕作麟祥によって翻訳された「自由」概念は、外的な抑圧や制限のない広い意味での自由:Freedomとは微妙に異なり、もともと存在した抑圧や制限からの「解放」という意味での自由:Libertyに近く、その微妙にニュアンスの異なる自由概念が社会規範として広まった。こうした広義の「自由」概念の欠如は、第2次大戦後の新憲法である日本国憲法24条「婚姻の自由」に明記されていない「同性」婚に関する理解と議論にも少なからず影響している。
もう一つは、おそらく欧米とは異なる性概念。他国と同様、日本においても男色をはじめ同性愛が当たり前とされていた時代もあったのは皆さんもご存知のことと思うが、明治期の富国強兵政策とキリスト教に強く影響を受けた性科学思想の普及と共に、同性愛が「変態」と同様に理解されるようになってしまう。こうした同性愛に対する差別的な社会規範は、残念ながら現代における彼らの権利保護への根強い障壁となっている。
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