チャーチルとド・ゴール 今さら聞けないブレグジット その3
Japan In-depth / 2019年7月24日 11時0分
これまた皮肉な話ということになるのだが、冷戦が終結したのを期に、フランス社会党が「社会主義国家建設」からヨーロッパ統合へと方針を転換したことで、単一通貨ユーロの導入など、統合が一挙に加速されるのだが、その流れもまた、一朝一夕にできたわけではない。
一度時計の針を戻して、前回紹介させていただいた、1951年のシューマン宣言以降の動きを、少し見て行くことにしよう。
1953年、前回紹介した石炭鉄鋼共同体(ECSC)加盟6カ国は、石炭と鉄鋼に鉄くずを加えた、資源の共同市場を創設。
1957年、加盟国間における労働者の移動の自由などを保証したローマ条約が批准され、翌58年、欧州経済共同体(EEC)が発足する。
英国にとっては、愉快な話ではなかった。チャーチルの演説をもじって言えば、「ヨーロッパの西半分を横切る経済ブロックが出現した」わけである。
当然ながら、この段階で仲間入りを目指す選択肢もあったのだが、フランスの指導者であったド・ゴールが、アングロサクソン憎しの感情に傾斜していた。とどのつまり、英子君加入には断固反対であったのだ。
▲写真 シャルル・ド・ゴール元大統領 出典:帝国戦争博物館
その理由は単一ではないと思われるが、1944年6月6日のノルマンディー上陸作戦において、連合軍総司令官アイゼンハワー大将が、「英語を連合軍の唯一の公用語とする」 と布告したことが、どうしても許せなかったのだと見る向きが多い。英語が国際語としての地位を確立したのはこの時である、というのが定説になっているのだが、そもそもフランス解放のための戦いではないのか、というド・ゴールの主張は省みられなかった。
やはり前回紹介したジャン・モネは、はじめから英国との協調を目指しており、「ヨーロッパの経済地図から英仏海峡を消し去る」という構想を持っていたのだが、なにしろ「上司」がこの態度なので、とりあえずドイツと協調してヨーロッパ統合を推進する他はなかった。
こうなると英国としては、別の経済ブロックを立ち上げて対抗する他はない。かくして1960年、スウェーデン、オーストリア、ノルウェー、スイス、デンマーク、ポルトガルを糾合し、英国を加えた計7カ国で欧州自由貿易連合(EFTA)が旗揚げされる。後にフィンランドとアイスランドも加盟した。
ヨーロッパの資本主義陣営が、ふたつの経済ブロックに分断されたわけで、ある年代以上の読者は、加盟国数から「シックスとセブンの対立」と称されたことを、ご記憶ではないだろうか。しかし、結果から言えば競争にも勝負にもならなかった。
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