キャッシュレス還元祭りの後【2019年回顧・経済】
Japan In-depth / 2019年12月23日 11時0分
安倍宏行(Japan In-depth編集長・ジャーナリスト)
【まとめ】
・消費税増税前の駆け込み需要は大きくなかった。
・「キャッシュレス・消費者還元事業」はわかりにくく不公平感あり。
・来年は「マイナポイント付与」も。政府は景気腰折れに備えよ。
今年10月1日の消費税増税の影響はどうだったのか?時間が経ってみないとわからないが、いくつか検証されている。
■ 駆け込み需要
帝国データバンクの調査(調査期間 2019 年 10 月 17 日~31 日、調査対象は全国 2 万 3,731 社で、有効回答企業数は 1 万 113 社 回答率 42.6%)によると、.消費税増税前の駆け込み需要の状況について、企業に聞いたところ、「駆け込み需要があった」とする企業は 26.5%。他方、「なかった」とする企業は 66.7%となった。意外と駆け込み需要が少なかった印象だ。消費者は意外と今回の増税を冷静に受けて止めていたようだ。
▲出典:帝国データーバンク
一方、消費税率引き上げ後における需要の反動減は、10 月時点で「ある」と答えた企業は 19.4%だったが、「ない」と答えた企業は 55.3%だった。また、「駆け込み需要があった」と答えた企業 2,683 社の中では、「反動減はある」は 49.4%、「ない」は 31.9%となり、駆け込み需要があった企業でも約 3 社に1 社は、駆け込み需要による反動は生じていない、との調査結果となった。
▲出典:帝国データバンク
■ キャッシュレス・消費者還元事業
駆け込み需要がそれほど起きなかった理由の一つに、国の「キャッシュレス・消費者還元事業」が上げられるだろう。10月以降にクレジットカードやデビットカード、電子マネーやQRコード決済など、キャッシュレスで支払うと最大5%のポイント還元が受けられる事がわかっていたので、慌てて買い物する必要がない、という心理が働いたと思われる。
大きな「駆け込み需要」が起きなかったことから、需要平準化効果はあったといえようが、そもそもこの「キャッシュレス・消費者還元事業」は色々と問題がある。
まず、制度が複雑で消費者にわかりにくい。どの店でどの決済手段を使ったら何パーセントのポイント還元になるのか、わかっている人は極めて少ないのではないだろうか?普段からキャッシュレス決済を行っている筆者でさえ、レジで戸惑うことがたびたびだ。結局いつもどおり使い慣れている交通系電子マネーか、クレジットカードで払っているが、実際にどの決済にどれだけポイントが還元されているのか把握するには各キャッスレス決済サービスのサイトに行き、利用明細をチェックしなければわからない。つまり、実感しにくいのだ。
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