北朝鮮に打撃 マレーシア断交
Japan In-depth / 2021年3月21日 19時0分
■ 身柄引き渡し決定までの経緯
逮捕後の2019年7月には、米司法省が5件のマネーロンダリング容疑と関連して、ムン氏の身柄引渡しをマレーシアの内務省に正式要請したが、ムン氏側が異議を申し立て、裁判が始まった。約4ヶ月後の2019年12月13日、マレーシアの高等裁判所は判決を下し、犯罪人引渡し協定によるムン氏の米国への引き渡しを承認した。
だが、ムン氏側は裁判の過程で一貫して容疑を否認し、マネーロンダリングのために偽造文書を発行したことはないと主張したうえで、これまでシンガポールの会社を通じてパーム油と大豆油を北朝鮮に供給するためにのみ関与しただけで、国連と米国が禁止する贅沢品は送っていないとして頑強に反論した。そして判決を不服としてマレーシア最高裁判所に上告した。
この上告に対してマレーシア最高裁判所は2021年3月9日、ムン・チョルミョン氏の上告を棄却し、米国への身柄の引渡しを決定したのである。
▲写真 マレーシアで暗殺された金正男氏(写真は2001年5月 日本国内で拘束された際のもの) 出典:Yamaguchi Haruyoshi/Sygma via Getty Images
■ 金正恩への深刻な打撃
マレーシアは、北朝鮮と1973年に外交関係を樹立し、非常に友好な関係を維持してきた。
北朝鮮はノービザで行き来できる数少ない国として、政治経済の様々な拠点として、マレーシアを活用していた。だからムン・チョルミョンが永住権を取得し、長い間家族とともに暮らせたのである。
北朝鮮幹部で、外国の永住権を取得し、そこで家族と共に居住する幹部は、世界で何人もいない。この事実一つをとっても、ムン氏が金正恩にとっていかに重要で特殊な存在であるかがわかる。彼の米国への引き渡しが、金正恩に大きな人的損害を与えることは間違いない。
しかしそれよりも深刻なのは、北朝鮮にとって制裁破りの重要拠点であるマレーシアでの活動情報があからさまになることである。その中には2017年2月13日のクアラルンプール国際空港での金正男毒殺事件情報が含まれるかもしれない。この事件が起こった時、ムン・チョルミョンもマレーシアに居住し、北朝鮮側要人と深い関係を持って贅沢品の調達やマネーロンダリングを行っていたからだ。
もしもムン氏が、FBIの調査過程で、金正男暗殺情報などを証言すれば、金正恩政権は、マネーロンダリング情報の漏洩などとは比べ物にならない致命的打撃を受けることになるだろう。
トップ写真:北朝鮮・金正恩総書記(2018年9月18日 撮影) 出典:Pyeongyang Press Corps/Pool/Getty Images
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