次期FRB議長はハト派のブレイナード氏か「影の大統領」イエレン氏カギ握る
Japan In-depth / 2021年8月13日 17時0分
岩田太郎(在米ジャーナリスト)
【まとめ】
・米連邦準備制度理事会(FRB)パウエル議長、来年2月で任期満了。
・ブレイナードFRB理事、次期FRB議長の最有力候補として急浮上。
・バイデン大統領に影響力あるイエレン財務長官の助言に注目集まる。
ドナルド・トランプ前大統領によって指名された米連邦準備制度理事会(FRB)のジェローム・パウエル議長の任期が2022年2月で終了するのに伴い、FRB議長の指名権を持つジョー・バイデン大統領が、コロナ禍による経済ショックへの対応で手腕を高く評価されるパウエル氏を留任させるのか、それとも与党民主党の経済・金融政策観をより忠実に反映させる進歩派の人物を新たに指名するのか、市場の熱い注目を浴びている。
バイデン大統領は、この10月に任期切れとなる銀行監督担当副議長であるランダル・クオールズ氏(トランプ氏に指名されたタカ派)の後任、さらに現在空席の理事1名分と併せ、FRB指導部や将来の金融政策を「ハト派色」に染めるチャンスを手にする。議長指名は9月に行われる可能性が高いが、バイデン政権内で強い影響力を行使する前FRB議長のジャネット・イエレン財務長官の動きと合わせ、今後の米経済を占う重要な人事となりそうだ。
■ 文句なしの実績
まず、パウエル議長の続投論は、金融業界の中心地であるウォール街を中心に極めて根強い。コロナ禍の中で、「やれることはすべてやる」という強い指導力の下、大胆な緩和的政策をもって米金融市場が落ち込むことを防いだばかりか、米株式が史上最高値を更新する「よきパターン」を作り出したからだ。
米金融大手JPモルガンのチーフエコノミストであるマイク・フェローリ氏は、「パウエル議長のコロナ禍対応はアグレッシブかつ創造的で、しかも本気度が高かった。パウエル氏のリーダーシップは、党派を超えてエコノミストや議員から絶賛された」と総括する。
パウエル議長はさらに、米議会によりFRBに課せられた雇用最大化・物価安定という使命を、大枠でクリアしている。もっとも、現在高まる物価上昇率に関して、「予防的に資産購入(テーパリング)縮小や利上げなどの引き締め策実行を前倒しすべきだ」との一部の投資家の声に対してパウエル議長は、「インフレ上昇は一過的なものであり、緩和策は続行する」との立場であり、その面では市場対話が上手く機能していない感がある。
それでも総合的に見れば、パウエル議長への評価は依然として高く、「パウエル氏なら」という続投待望論が、民主党のブラッド・シャーマン下院議員などからも出ているのだ。
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