60ミリ迫撃砲の有用性 前編
Japan In-depth / 2021年9月5日 15時30分
第二次大戦後は中口径の81ミリ(東側では82ミリ)、大口径の120ミリが主流となっている。これらは歩兵用といっても装甲車などに搭載された自走迫撃砲も増えている(筆者の過去の連載を参照のこと)。また120ミリ迫撃砲に関してはフランスや南アフリカなどのように砲兵が運用する国もある。
筆者は長年陸自でもそのようにすべきだと提案してきた。そして陸自も近年120ミリ迫撃砲を普通科(歩兵)から特科(砲兵)に移管している。
下車歩兵、あるいは自分の足で移動する純然たる歩兵にとっては81ミリ迫撃砲にしても本体だけで概ね40キロ、砲弾は一発当たり4キロもあり、中々剣呑な重量である。徒歩で移動する場合、大抵本体は砲身、二脚、底盤に分解して運ばれる。運用は5~6名で行われる。それだけ人手がかかる装備である。
このため大戦中から一人で分解することなく、砲を携行でき、2~3名で運用できる30~60ミリ前後の迫撃砲も歩兵に重用されてきた。この種の迫撃砲では日本陸軍の89式擲弾筒が一番有名だろう。
これは自動火器が少なく、火力が低い日本の歩兵部隊には極めて有用な兵器だった。連合軍ではニーモーターと呼ばれていた。確かに膝に載せて撃ちたくなるような外観をしてはいる。が、膝に載せて使用するわけでない。このニックネームのせいで、鹵獲した89式擲弾筒を膝や腿に載せて撃って、その反動を受けて大けがをした兵士もいたという。
戦後も英国やイスラエル、南アフリカ、トルコなど多くの国で60ミリ迫撃砲は多用されてきた。例えば英国の51ミリL9A1、スイスのヴェルファー87、イスラエルのC-567などC-シリーズ、南アフリカの60ミリM4コマンドウ・モーター、ポーランドのLM-60Dなどがその代表格だ。
これらは特に特殊部隊やコマンドウ、空挺部隊などエリート部隊でその有用性が認められてきた。これらの部隊は基本的に軽歩兵であり、小規模な部隊で、徒歩で行動することも多い。このため中口径の迫撃砲の携行が難しい。これらの小口径迫撃砲は一般に中口径迫撃砲の様に水準器や複雑な照準や姿勢制御のシステムを有していない(だから軽量小型なのだが)。このため精度はさほど高くない。
例えば南アのコマンドウ・モーターはストラップに目盛りが入れられている。あるいは簡単なガイド板がありそれを利用する。またまったくの目見当で発射し、射撃を行いつつ、弾着修正をおこうことが多い。それでも小部隊で曲射が可能な大きな火力を持つメリットの方が大きい。近年では40ミリグレネードランチャーに取って代われつつあるが、40ミリグレードよりも大きな弾頭と長射程が魅力なためか、使用し続けている軍隊は多い。
この記事に関連するニュース
-
フラッグ隊で自衛隊理解広める 陸上自衛隊多賀城駐屯地 丹野恵里さん(24) 令和人国記
産経ニュース / 2024年5月19日 9時0分
-
英軍の新戦車 ついに“ツルツル砲”での発射実験を行う 世界で唯一こだわったライフル砲から転換へ
乗りものニュース / 2024年5月5日 11時42分
-
「空飛ぶ戦車」=「最強!」とはならず 「空挺戦車」がいまいちパッとしなかったワケ “軽さ”は別に活かされた
乗りものニュース / 2024年4月29日 6時12分
-
陸自装甲車両調達の最新情報 24年度防衛予算
Japan In-depth / 2024年4月28日 18時0分
-
どうみても“戦車”っぽい「戦車じゃない車両」米空挺部隊でテスト開始 早ければ2025年夏に配備開始か
乗りものニュース / 2024年4月23日 18時42分
ランキング
-
1撮影者「こんな火事見たことない」下呂温泉の温泉街で木造二階建ての飲食店が燃える 周辺旅館の宿泊客ら避難
東海テレビ / 2024年5月19日 6時25分
-
2スタバと一線を画す「ルノアール」。“特異なビジネスモデル”を確立も、業績が悪化するワケ
日刊SPA! / 2024年5月18日 8時53分
-
3【速報・コメント全文】上川外相が撤回「女性が生まずして何が女性でしょうか」発言 「真意と違う形で受け止められる可能性があるという指摘を真摯に受け止めた」(静岡県)
Daiichi-TV(静岡第一テレビ) / 2024年5月19日 10時28分
-
4交差点でバイクと自転車が衝突 20代の男女2人死亡 出合い頭か 兵庫・伊丹市の県道
ABCニュース / 2024年5月19日 12時59分
-
5相当なスピードか 乗用車が電柱や街路樹なぎ倒し建物に突っ込み炎上 男性2人搬送 札幌市
STVニュース北海道 / 2024年5月19日 12時10分
複数ページをまたぐ記事です
記事の最終ページでミッション達成してください