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移民労働者と技能実習生(下) ポスト・コロナの「働き方」について その2

Japan In-depth / 2023年4月18日 18時0分

 実は、ガソリンの備蓄は十分にあったのだが、タンクローリーの運転手が不足したことが、この騒ぎの原因だった。


 以前からかの国では、トラック運転手の多くが移民労働者であった。この仕事は拘束時間が長く、とりわけ長距離トラックだと夜を徹して運転しなければならなかったりする。


 仕事は5時で切り上げ、あとは家族と過ごすか、もしくは地元のパブで仲間と一杯、という時間をなによりも大切にする英国人にとって、これは自分たちの「働き方」にそぐわない、と考えられたようだ。


 一方、特別なスキルや資格を求められない運転の仕事は、移民労働者にとって「おいしい」職種であった。ここでも移民の定義の話になるが、EUに加盟していた間は、ローマ条約によって「労働者の移動の自由」が保証されており、仕事を得る上でのハードルはさほど高くもなかったのである。


 よく知られる通り、英国は2020年2月1日をもってEUから離脱したが、当初、その時点で英国内に居住していた人々には、EU圏内で暮らす英国人と同様の権利、具体的には居住権や職業選択の自由が保障された。


 しかしながら、時まさに新型コロナ禍が深刻になってきた時期である。国境は事実上封鎖され、移民労働者のみならず、留学生や、地方から出てきて大学の寮で暮らしている学生までが、


「帰る家のある者は、可及的速やかに帰るように」


 と促された。結果、英国にいても仕事がないからと帰国した南欧・東欧の労働者たちは、再び英国での仕事に戻ろうとしても、今度は英語力など、様々なハードルをクリアしない限り入国すら認められない、ということになってしまった。


 この事態を受けて当時の保守党ジョンソン政権は、ひとまずビザの発効要件を緩和する、との政策を打ち出したが、問題は未だ完全に解消されてはいない。


 どこの国でも歴史的に、移民労働者はしばしば理不尽な差別にさらされてきた。


 言葉や生活習慣の違いから来る、いわゆるカルチャー・ギャップも存在するし、なにより、


「安い賃金で長時間働く移民のせいで、自分たちの職が奪われる」


 という意識が、どちらかと言えば恵まれない立場であるはずの、欧米風に言えば労働者階級の人たちの多くに共有されていたのである。


 しかしながら、ここまで実例を見たように、今や先進国の産業は移民労働者なくして立ちゆかなくなった。この事実を受け止め、肌の色や言葉が違う人たちとも「同僚」として共存できるような日本人になって行かないといけない。


トップ写真:メロン農家の温室(北海道・富良野)


出典:iStock / Getty Images Plus


その1はこちら。


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