移民労働者と技能実習生(下) ポスト・コロナの「働き方」について その2
Japan In-depth / 2023年4月18日 18時0分
象徴的な例が米国で、19世紀に奴隷制度が廃止されて以降、安価な労働力として世界中から移民を受け容れた。とりわけハワイや西海岸では、多数の日本人が開拓農民として移住している。
農業ばかりではなく、有名な大陸横断鉄道の建設にも、多くの移民労働者が従事した。
「線路は続くよ どこまでも……」
という歌が「アメリカ民謡」として、日本では小学校でも教えられているが、オリジナルの歌い出しは、
「線路の仕事は きりがない……」
というもので、早朝からの重労働を強いられる人々の悲哀を唄ったものなのだ。
そうではあるのだけれど、米国における移民労働者は、かつては結構簡単に米国籍を与えられ、紆余曲折はあっても、次第に社会の一員と認知されていった。
ここでも日系人が典型で、第二次世界大戦において日米が敵味方になった際には、収容所送りの憂き目を見たりしたが、戦後は上院議員や陸軍大将を輩出している。
移民と外国人労働者はどこが違うのか、と問われたならば、これが答えになると私は思う。
裸一貫の移民でも、努力と才覚次第では政財界の重鎮にもなれるという、言い古された言葉ではあるが「アメリカン・ドリーム」が世界中から人を引き寄せてきた。
この点、わが国における技能実習生は、最長5年という、悪く言えば「使い捨て」の扱いで、たとえ本当に「本国では習得できない技能」が身についたとしても、その後の夢というか、日本人好みの表現では「坂の上の雲」さえも見えない。
話は戻るが、移民の定義について語るには、これだけでは不十分だ。
前回、2019年の統計によれば、世界で最も多くの移民を受け容れているのは米国で、2位はロシアだと述べた。
意外に思われた向きもあろうが、実は割合分かりやすい話で、ウクライナ、ジョージア、カザフスタンといった旧ソ連邦の国々から、ロシアへと生活の場を移した人たちは、移民にカウントされている。国情が変われば移民の定義や実態も変わるのだ。
もっとも最近では、中国人の農民が多数、シベリアの農地開発に従事しているようだが、彼らの場合は「農繁期だけの出稼ぎ」と見なされている可能性も高く、よく分からない。
話をヨーロッパに転じて、英国においては昨年春、深刻なガソリン不足に見舞われた。
日本に先駆けて、新型コロナ禍が収束に向かったことで、車で外出する機会も増えたのだが、多くのガソリンスタンドが品不足による休業もしくは開店休業状態に陥り、市民生活に大きな影響を与えたのである。
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