ODA70周年を機に対中供与の大失態の反省を その3 日本の援助が軍事費財源に
Japan In-depth / 2024年3月28日 19時0分
トリプレット氏はその「他の使途」が純粋な国防費、軍事費でなくても、同じ効果を発揮できる用途があることを指摘した。たとえば中国当局は北朝鮮、パキスタン、ミャンマーなどへの軍事関連支援つづけてきたが、これに必要な資金は日本のODAで余裕ができた分をあてることができるという。
「中国から北朝鮮への援助は金正日政権の強化と存続、パキスタンへの援助は大量破壊兵器の拡散にそれぞれ寄与し、いずれも日本の安全保障上の利害を損なう。逆に中国の対外的な軍事関連威力の拡大につながる。中国政府にとって日米同盟に敵対する勢力への支援は自国自身の軍事支出に等しいわけだ」
そのうえに日本の対中ODAには要請主義という大原則があった。ODA資金を具体的にどのプロジェクトに投入するか、つまりどう使うかは援助を与える日本側が選んで決めるのではなく、中国側が決めて日本に要請するという方式だったのだ。
だから中国側の優先順位が採用され、経済開発と軍事力増強という国家の二つの大方針が重なる形でも日本からのODA資金を活用することができたのである。
ODA資金のこの微妙な使い方に関しては私自身、おもしろい体験をした。経済のための援助がいつのまにか軍事に回ってしまうというような実例だった。
私は北京から遠く離れた内陸部の貴州省での日本からのODA事業を見学したことがある。1999年10月だった。日本大使館のODA担当の杉本信行公使の案内で環境保護に焦点をしぼったプロジェクトをみた。
上下水道の改善、大気汚染の防止という地味な事業が日本からの援助資金で施行されていた。そのプロセスや成果を見学したのだ。ODA本体の巨大なインフラ施設の建築とは異なり、国民の生活の向上に密着した適切な援助プロジェクトだと感じた。
その見学旅行が終わった夜、貴州省の省都、貴陽市でささやかな招宴が開かれた。地元の中国側の貴州省代表たちとの乾杯や会食がしばらくつづいた後、すぐわきに座っていた省政府幹部が誇らしげにふっともらした。
「なにしろ私どもの地元には全国有数の戦闘機製造工場があり、そこの製品は10月1日の建国記念50周年の軍事パレードでは天安門の上空を堂々と飛んだのですからね」
おやっと思った。日本の援助は軍事には一切かかわらないことになっている。ことに今回の援助は環境保護にしぼられていた。だから上下水道改善や大気汚染解消というプロジェクトばかりみせられた。その見学旅行の総括がこの招宴だったのだ。
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