米国の追加支援でウクライナ軍はどう変わるか パトリオットにF16戦闘機、砲弾枯渇状態に恵みの雨、
東洋経済オンライン / 2024年4月24日 18時0分
2023年8月、ウクライナのゼレンスキー大統領が防空システム「パトリオット」が配備された部隊を視察している場面(写真・Pool/Ukrainian Presidentia/Planet Pix via ZUMA Press Wire/共同通信イメージズ)
2024年初めからのアメリカからの軍事支援がストップし、砲弾も防空システムも足らず、苦境にあるウクライナ軍にようやく待ちに待った「恵みの雨」が降ってくる。
2023年秋以降、アメリカ下院で審議が迷走していた約608億ドル(約9兆4000億円)に上る対ウクライナ軍事支援のための緊急予算案が2024年4月20日、採決の結果、ようやく下院を通過したからだ。
数週間以内に軍事支援が届き始めるのは確実だ。東部戦線で主導権を奪うなど最近のロシア軍の攻勢を受け、日本では「国力に勝るロシアが勝利するのではないか」との見方がじわりと広がりつつある。しかし、今回の支援再開決定を踏まえ、ウクライナ戦争が今後どのような展開をするのか、全体像を考察してみた。
「プーチンの傲慢な見方を打ち砕く」
今回の軍事支援再開決定が持つ意味を採決前に明確に指摘したのは、アメリカのウィリアム・バーンズ中央情報局(CIA)長官だ。ゼレンスキー政権との秘密交渉を担当し、バイデン政権内で最もウクライナ情勢に精通している閣僚であるバーンズ氏はこう語った。
「軍事支援再開がもたらす、軍事的、心理的弾みがあれば、2024年末までウクライナ軍は戦線を守り切り、自分たちに時が味方しているとのプーチンの傲慢な見方を打ち砕くことができる」
つまり、アメリカの軍事支援が再開すれば、早期のウクライナ敗戦はありえないとの見解を示したものだ。
この発言の中でバーンズ氏は、仮に予算が今回成立しなければ「2024年末までにウクライナが戦争に負ける可能性が高い」とも述べ、この部分が国際的には大きな波紋を呼んだ。
しかし、今回の下院通過を踏まえれば、アメリカの支援再開によって、少なくとも年末までウクライナ側には十分ロシア軍に対抗できる力があると、バーンズ長官が断言したことのほうが意味あると筆者は考える。
本稿執筆時点で再開されるアメリカからの軍事支援の具体的内容や供与時期は不明だ。しかし、今後のロシア、ウクライナ両国の軍事力の比較を部門別で大まかに占ってみよう。
まず、砲弾だ。現状でロシア軍は5対1、場所によっては10対1の比率でウクライナ軍を保有数で圧倒すると言われている。このウクライナ軍の劣勢はアメリカからの砲弾供給再開で相当埋まるだろう。
最近、榴弾砲などの火砲とは別に、両軍にとって重要な戦力になっているのが攻撃用ドローンだ。ドローンは「砲弾」には含まれていない。ドローンの保有台数でみると、キーウの軍事筋はウクライナがロシア軍の倍を保有していると明らかにした。
ウクライナ防衛網の穴を埋める
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